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v1.0.8 屋上、その後

 ふぅぅぅぅぅ……。


 七橋さんの背中を見送って、ほっと一息。

 とりあえずあまりキョドらずに話もできた……はず。


 お願いされた事については、正直それほど役に立てるような事だとも思えないのだけど、他ならぬ七橋さんからのご依頼だし、少しでもできそうな事はやってみよう。

 これで何かまた少しでも役立つ情報を提供できたら、七橋さんともう少しお近づきになれたりするかもしれないし。七橋さんと仲良くなれれば、他のクラスのみんなとも、もう少し距離を縮める事もできるかもしれない。


 ……いや、さすがにそれは期待し過ぎか。

 所詮俺は生徒F。背景に描かれる固有名すらつけてもらえないモブキャラでしかない。

 ヒロイン格の七橋さんの周囲に描いて貰おうなどと考えることすらおこがましい。

 それに何より、あのタグをぶら下げた不審人物が、七橋さんの周りをうろちょろする事を許されることなどあり得ない。


 ……はぁ。

 ほんと、せめてタグの事だけでもどうにかできないものだろうか。

 七橋さんは奇跡的にあのタグの事は受け入れた(?)上で話してくれてるけど、他のみんなもそうだとはとても思えない。

 せめて今日みたいに誰かと話ができた時のために、何か説得力のある言い訳でも考えておかないと……。


 さて。

 緊張のあまりやたらと早まってた鼓動も収まってきたところで、自分もそろそろ教室に戻ろう。

 ……と、その前に。

 あまり長い時間ARグラス外してると先生たちに目をつけられる、っていう噂もあるし。

 胸ポケットからARグラスを出して再装着する。


「ファッ!?」


 ARグラスが起動すると、ぶすっとした表情のミントがいきなり目の前にいて、思わず変な声が出た。


「……お昼休みにグラス外して何してたの?」

「べ、べつに」

「ふーん……」


 あからさまに疑いの眼差しを向けてくるミント。


 で、でも別に悪いことをしていたわけじゃないし、そんな目を向けられる筋合いはない。


「あれ、ダーリン屋上にいるんだ。珍しい」


 周囲をキョロキョロしながら言うミント。


 お、この反応って事は……。

 とりあえず俺が昼休みに屋上に行くって事は知らなかった、っていうことでいいんだろうか。それなら、朗報だ。これでミントには知られずに人とやり取りをする事はできる、ってことになるはずだし。


 もちろん、ミントが全て知った上で知らんぷりしている、っていう可能性もあるので油断はできない。結論を出すにはもう何度か試してみる必要はあるのだろうけど。


「なに? 屋上に呼び出されて告白でもされてたの? 隅に置けないなぁ」

「いや……」

「なんでもいいけど用事があって一緒にお昼食べないならそう言っておいてよね」


 少しむすっとした様子で、「ったくダーリンはさ……」とぶーぶー言ってるミントのことはほっておいて、俺は屋上を後にした。


 ちなみにその後、トイレで鏡を見たら、タグに書かれた名前はそのまま、ステータスアイコンが一段と暗い紫になり、アイコンの顔に眼帯がついて凶悪感が増していた。

 ……あ、うん、意外と怒ってたんですねミントさん……。

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