ただの日常
始まりは突然、空から降って来たピーナッツから。
世界中の人々はそのピーナッツを求めて争いを起こす。
たかがピーナッツ。されどピーナッツ。
なにが彼等のピーナッツ欲を駆り立てるのか……。
しかし、物語の渦中には必ずある男がいた。
彼はピーナッツを愛し、ピーナッツに愛され、ピーナッツを食べ尽くす男。
正にピーナッツ相思相愛論ーーー、
「いや、なにこれ?」
俺は手に取っていた『世界ピーナッツ論』という、名前的には、世界情勢を独自の観点から観て記している様な、頭良くなれます系の本に酷似してる本を棚に戻した。
読んだら逆に頭悪くなりそうだな、これ。
「あ〜、それ? 読んだら頭悪くなりそうでしょ?」
それ、俺も思った事だわ。
「そうだな。ってか持ってんなら読んだんだろ? つまり何が言いたいんだよこの本は?」
「いやぁ、読んでないよ〜、頭悪くなったら困るし」
「じゃあなんで買ったんだよ!?」
「うーん、なんかこういうよく分かんない本を本棚に入れといたらぁ……なんとなく私っぽくない?」
それは確かにって思った。
思えばこいつ、昔っから変わってるやつだもんな。
小学生の頃は、みんなで公園来たのはいいけど、一人砂浜でよく分からん絵を描いて、ニコニコしながら踏んづけてたり。
中学生の頃は「何かに監視されてる気がする!!」って突然声を出して、店の監視カメラ指差したり。
うん、変わってるな。
「ところでさ、なにかゲームしない?」
「突然だな。ま、遊びに来てるのは俺だもんな。いいぜ」
すると彼女は傍目で見て分かるほど喜びーーー主にボディーランゲージが凄いーーー、何やら割り箸の入った筒を取り出した。
え? それって……、
「「王様ゲーム」」
「ってなんで二人でやるんだよ!?」
見事にハモってからのツッコミ。俺だってたまにはツッコミ担当に回るんだぜ?
「良いから良いから、百聞は一見にしかず。だから取り敢えず引いてみよ?」
「なんか言葉のチョイスミスってね? いや待て待て、怪し過ぎんだろ!? まずお前から引いたらどうなの!?」
「……お前って言うの嫌い」
こいつの情緒は正常か?
ともかく、話が進まないのも事実。
「分かったよ、悪かったよ鏡花」
俺は筒から割り箸を一本抜き取った。
次いで、鏡花も一本抜き取る。
「せーの、「王様だ〜れだ!」」
掛け声は俺。そして、割り箸を見ると『ハズレ』の文字。
うん?
「あちゃ〜『ハズレ』だ!」
どうやら鏡花も『ハズレ』たらしい……。
いや、なにこれ?
「次何するかぁ」
「おーい!? 今までの流れは無駄だったの!?」
「ねぇ、何する〜、健太ぁ」
「俺の声はお前に届かないのか!?」
「あ、またお前って言った……」
「言葉の綾だろ! いや、ごめん鏡花」
なんて、モヤモヤする毎日を送ってる高校生活。
なんだかんだ楽しい。