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「第三者を介入させる。小火ぼやを起こし、警察の足掛かりを作る」


「だったら普通に通報した方が良いでしょ」


「なんと通報するのだ。ただ写真があるだけぞ」


「冷凍庫にブツがあるわ」


「普通の人間はそれを人間の舌だと判別できまい。通報した者が何かしら疑われる。面倒だ。ならば小火騒ぎを消防に通報する方が疑われまい」


「それは小火騒ぎだって同じでしょうよ」


「我らがここで放火する理由がない。疑われぬ。それに通報するのは我らではない」


「はぁ?」


 そうこうしているうちに多門の手によってお店のドアが火で燻り始め、私は玉彦に背中を押されて強制的に大通りへと歩く羽目になった。

 小道を振り返れば結構な煙が上がり始めていて、慌ててバッグからスマホを取り出したら、だ。

 私よりも早く、スマホを耳に当てている人たちが大通りに数人いた。通報してくれている善意の方々である。

 足早にその場を離れると、繁華街の近くの消防署の方からサイレンが聞こえてきていた。

 放火は犯罪だ。江戸時代だったら死刑。


 そんな大罪を犯した多門と指示した玉彦から若干距離を取った私だったが、結局止められなかった私も同罪で、見て見ぬふりをした警察二人も同罪で。

 妙な後ろめたさの連帯感が発生した気がする私をよそに、玉彦と赤艸警視は火災現場の保全のことや指紋が検出された時の対応など話をしていて、多門と那須警部は到着した消防車二台を遠巻きに眺めていた。

 そしてすぐ無事に火が消し止められたタイミングで赤艸警視たちは駆け付けていたパトカーに近付き、話し込み始めた。

 さっきの玉彦との様子だと、パトカーの所轄署からすぐに手を離れ、小火事件は赤艸警視が所属する部署の預かりとなるのだろう。


 出来レースが過ぎる結果に玉彦を見れば何食わぬ顔で澄まし、多門を見ればお役目では良くあることだよと肩を竦めた。

 正武家のお役目で私が関わる事案は少なく、こうした荒業を必要とする可能性がある外のお役目はもっともっと少ない。

 けれど毎日お役目に従事する彼らにとっては日常茶飯事で、玉彦も澄彦さんもお役目の顛末記には警察が介入したことは記していても、こんな荒業を用いました、とは詳しく書いていない。

 なぜなら必要だからそういう手段を用いただけで、悪意があったわけではないし、多分これからも詳しく書くことはないのだろう。

 今回は誰も傷付かなかったとはいえ、けっして褒められることではないのは確かで、私は複雑な気持ちになった。

 玉彦や多門はそんな私の思いに気付いてはいるものの、あえてフォローの言葉は掛けない。

 私が何を言ったところでお役目のスタンスは変わらないし、変えるつもりもないから。


 胸につかえを抱えたまま、パトカーから戻って来た赤艸警視を加えて私たちは火災現場を離れた。


 お墓で奇妙な物を、そして空き店舗で犯行現場らしきものを見付けて、玉彦は次にどこへと向かうつもりなのかと思っていたら、火災現場から数百メートル離れた呑み屋街の中心近くまで私たちは歩いて来ていた。

 車を停めているパーキングとは逆方向で、何でも屋の事務所はまだ先である。


 先頭を歩いていた多門が足を止め、ついっとビルではない一戸建ての箱物を見上げた。

 シンプルな四角い建物の白い壁面は無駄にライトアップで輝き、所属しているキャストのパネルがランキング順に飾られていた。

 高彬さんは三番目。まだナンバーワンにはなっていないようだ。

 ぶっちゃけ一番と二番の人は若いけど、顔は高彬さんが絶対に勝ってると私は思う。

 でもそれだけじゃあ一番になれないところが奥が深い。



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