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玉彦と私は洸姫が自分たちを受け入れてくれるのかを心配していたけど、天彦とのことは全く心配していなかったのだ。
天彦がずっと洸姫を待っていたのは知っていたし、洸姫が天彦と仲良く出来なくても天彦があの手この手で懐柔して仲良くなれるよう努力するだろうと思っていた。
でも双子の再会は最悪の形だったようだ。
離れの事務所で須藤くんが洸姫を拭いて声を掛けている間、私と多門はソファーに座り、那奈と高田くんはこれからのお屋敷の手配に忙しくなっていた。
須藤くんと多門はともかく、娘の洸姫の転校手続きやら日用雑貨など用意しなければならないものが山ほどある。
多門から簡単に話を聞けばこれまで住んでいた家に全部置いて来たと言い、のほほんとそれを聞いていた那奈と高田くんからは悲鳴が上がった。
住民票の移動などの手続きも何もせず、着の身着のまま帰って来て、あとは正武家の事務所方がどうにかしてくれるだろ、と豹馬くんが言ったそうだ。流石面倒臭がりの豹馬くん、健在。
ちなみに彼らのそういった書類関係は全て玉彦と懇意にしている美作さんが政治的に動いてくれたので、そちらにも報告をして再びお願いしなくてはならない。
無茶苦茶個人的で理不尽な内容だったが、正武家関連という判を押せば殺人でなければ大体のことは暗黙の了解で諸所の関係各所警察でさえも通過するそうだ。
「でー? なんだってこんな事になってるのよ。当主次代も居たでしょうに」
私に水を向けられた多門はふいっと解りやすく顔を背け須藤くんを見やり、須藤くんは抱き付いたままの洸姫に視線を落とした。
あぁ……そっか……。
そうだよね。そうだよ。
四歳で親元を離れて八年。
小さい頃の記憶は曖昧で父様も母様も覚えていなくて、三人の父親と一人の母親、そして弟がこの子の家族だった。
いきなり自分の出生を聞かされても受け入れられなかったよね……。
でもどうして天彦が激高したのか意味不明。
無理に納得させようとして反発されたとしても、身内に甘いはずの天彦があんな暴挙を働くのが意味不明。
「とにかくお風呂に入れてあげて。私はあっちに戻るから」
「オレも戻るよ。須藤も行くぞ。娘様は那奈ちゃんに任せろよ」
多門の言葉に那奈が頷いて洸姫を促したけど、洸姫は頑として須藤くんから離れない。
イヤイヤと首を振る洸姫を須藤くんは引き離して背を向け、那奈によろしくと言って事務所を一番に出て行く。
多門もそれに続いて、私は再びぽたぽたと涙を落とす洸姫に少しだけ屈んで目線を合わせた。
「お風呂で温まってきて。身綺麗にしてからお話しましょう。それとね、こんなことした天彦に絶対詫びを入れさせるから。許さないか許すかお風呂に入って考えて。そしてもし許すとしてもただで許しちゃダメよ。無理難題を押し付けてやりなさい。許さないなら徹底的に無視を決め込むのよ。あの子、無視をされるのが一番堪えるから。心配しないで。もしそうなったら私も一緒に協力するからね。さぁ、いってらっしゃい。那奈も頼むわね」
再度頷いた那奈は洸姫の肩を抱いて、離れのお風呂へと向かう。
見送る私の足元に黒駒がふわりと尻尾を掠めさせて、多門ではなく洸姫の後を追う。
そこに父としての多門の思いが反映されていて、私はほろりと泣けた。最近涙脆くって困るわ。
頬を二度ほど叩いて気を引き締めて、高田くんに事務処理等々をお願いし、私は母屋へと足を向ける。
それにしても私が藍染に行っている時に帰宅とは本当にタイミングが悪い。
両親祖父兄が揃ってお帰りなさいと洸姫を迎える計画が破綻。
でもね、お役目とかもあるから計画通りにいかないかもって思ってたからこれは仕方ない。
けれど天彦の暴挙は想定外。
さてさて、一体何があったことやら。




