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3


 孫娘の疑わしい目を向けられた澄彦さんは然も楽し気に肩を揺らした。


「視えないし聞こえないけど、仕事は出来るよ? 見た通りお祖父ちゃん優秀だから!」


 全く説得力のない澄彦さんの言葉に洸姫は半目になり、胡乱な表情になる。育ての親によく似ている。

 そりゃあ視えない聞こえないと言い切る霊能力がゼロっぽい人間がそう言っても信じられないだろうなと思う。


 いにしえからお役目を家業としている正武家だが、長い歴史の中で唯の一人も視える人間はいない。

 お力という祓う能力には長けているのにだ。

 実体化しているものは視えるが弱小で実体化できないものは視えないのだ。

 視えなかったのにどうして祓うことを家業としたのか切っ掛けは謎である。


 このままだとただの胡散臭い仕事をしていると思われそうだったので、私は二人の会話に参加する。

 洸姫はまだ私たちよりも稀人たちとの方が気安い。

 どうして彼らが正武家に仕えているのか知る良い機会だ。


「ちょっといい?」


 口を挿んだ私に胡乱な表情のまま洸姫が顔を向けたので、苦笑いしか浮かばない。


「正武家には昔から稀人と呼ばれる選ばれた人間が仕えることになっていてね、正武家の人間が視えない分だけ彼らが補ってくれるの。視えない稀人もいるけれど、そういう場合は違う方面で力になってくれる。豹馬くんは視えるし、須藤くんは視辛いけど良く聞こえる耳を持ってる。多門の場合は平均的に視えて聞こえて鼻も良いのよ」


 私が説明すると洸姫は三人の稀人に本当? と問い掛け、彼らが揃って頷いたを見て複雑そうな顔をした。

 今まで共に普通の生活をしていたのに、そういう力を持っている片鱗を見せていなかったことが窺えた。


「じゃあパパたちはこれからそういう仕事するの?」


「そうだね」


 と、須藤くんが答えれば洸姫はますます顔を歪める。

 危険だから心配というよりは、胡散臭い仕事内容を心配しているようだ。

 胡散臭くないと知ってもらうためには実体験しかないのだけれどお勧めできない。


 さてどうしたものかと考えていれば、宴開始から一度も箸を止めずに飲み食いしていた多門がお腹を摩った後に洸姫の頭を撫でた。


「この前テレビで冬の実録猟奇殺人ミステリー一緒に観ただろ。あれの最後の事件、実はオレもいた」


 けろっとしてサラッと言った多門に洸姫は目を剥く。


「嘘っ! えーでもだからニヤニヤしてた!?」


「辻褄を合わせるためにこういうシナリオになったんだなって感心してたんだよ」


「シナリオ?」


「そーそー。警察が心霊現象とかオカルトで事件解決しましたなんて言えねーだろう」


「警察も父たちとグル? ずぶずぶ?」


「グルっつーか、持ちつ持たれつの関係。お前、口悪いな」


 眉を顰めた多門に玉彦がどの事案だと尋ねれば、高彬さんのと答えた。

 あぁ……高彬さんの事案で猟奇殺人ミステリーとして成立するのは一つしかない。

 正しくはミステリーではない。ミステリーなことなど一つもなかった。


「本当はどんな話だったの?」


 洸姫が興味を示し、多門に話をせがみ、多門は私をチラリと見た。


「この件は母様が一番詳しいんだよ」


 確かにね。確かにそうかも。


 事の発端は私が上げた悲鳴からだった。


 徐々に思い出される記憶を元に私は洸姫に語り始めた。




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