旅立ち
300字SS、2作目!
ポケットに詰めた石ころたちが夜遅くには旅立ってしまうことを知っていた。旅になんて出ないでおうちの中にいなよ、と引き出しにしまい込んでもいつの間にかいなくなってしまう。旅立ちを見届けたくても、起きていられた試しはなかった。
進学した姉が家を出て一人部屋になった時、今夜こそは旅立ちを見届けようと思った。
眠い目をこすって彼らが動き出すのを待つ。一時、二時。カーテンの隙間から朝日が差し込む頃になっても彼らは動かない。やがて気を失うように眠ってしまったらしくて、母に怒られて目が醒めた。
彼らはまだいた。次の日も、また次の日も。
旅に出ることのなくなった彼らは、今も多分、実家の引き出しに眠っている。




