「空よ、大地よ」
世界観を感じ取ってくれれば幸い!
この世には無から分かれた光と闇があった。闇はいつも光に嫉妬していた。なぜなら彼の姿はいつも定かでなく、自分を見ることさえかなわないからだ。光が、彼女がいつも彼を無邪気に侵食することも気に食わなかった。ある時、彼女は話し相手がほしいと思った。なぜなら、相手となってくれる闇はいつも彼女の言ったことに対して否定的な態度を見せるからだ。どれだけ前向きに捉える彼女でもそれは面白くない。彼女は自分の体を切り分け、元気な男の子に太陽、気弱な女の子に月と名付けた。彼女は初め、ふたりと楽しく会話していた。男の子の元気な返事、女の子の寂しげな微笑みは彼女の宝だった。しかしいつの頃か女の子は彼女の前から姿を消した。光は心配になり、太陽に自分の体の大半を預け、月を探しに行った。
光の領域の外は闇が支配している。彼女はそこで彼に寄り添う月を見つけた。その輝きは陰りにすっかり飲み込まれていた。彼女は変わり果てた娘を連れ戻すことを宣言し、彼の支配下から抜け出した。太陽のもとに戻った彼女は息子とともに戦いを挑む。闇もそれに応戦する。この世で初めての戦争である。
戦は幾億年にも及んだ。それは光と闇の双方の弱体化を招く。闇は使者を立てることにした。その者は彼の暗い闇とその感情である嫉妬を引き継いでいた。彼─仮に彼としよう。彼は対等に、できれば光の領域を奪うよう任を受けていた。闇の眷属である彼の嫉妬への執着をもってすれば容易いことであった。その時はそう考えられていた。しかしかねてより彼は懇意にしていた月の、光の世界への葛藤を聞かされていた。そして彼がわずかに羨望を抱いていたことを誰も、おそらく彼自身にも知る由はなかっただろう。
彼は光の世界に触れ、月の生みの親である、すなわち自身の祖に当たる彼女の無邪気さを目の当たりにした。その時、彼の嫉妬は完全に憧憬へと変わり、今までの自分を恥じた。やがて彼は彼女の祝福を受けるに至った。闇と光の祝福を受けた彼、または彼女は両方の性質を有することとなった。そして、彼は闇の眷属から妖精へと変貌を遂げ、その王を名乗るようになった。妖精王がその領域を広げるに従い、闇は北へ、光は南へ追いやられていった。その隙間を埋めるように太陽が光の領域を占めるように、月が闇の領域を占めるようになっていった。王は両者に仕えるものとして、大地とその地に暮らす者たちを作り出した。そして月と太陽は王の大地を照らす主として天空を行き交うようになった。
これがこの世の始まりであり、王国の民はすべてこの妖精王を始祖とする。そして彼らの指導者たる者は妖精王の性質を持っていなければならない。