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075 10000人 vs 6人

 聖ガルド教皇国軍10000人に対してロキヘイムはサラを含めても6人しかいない。


「何だあれ?」


「あんな少人数で降伏交渉でもしに来たのか?」


 聖ガルド教皇国はロキ達が近づいてくるまで何もしなかった。戦力差がありすぎて敵と認識出来ていないのだ。


「この辺りでいいかな」


 ロキは聖ガルド教皇国軍の100メートルほど手前で立ち止まった。


「じゃあ、やるよ。……【死王(デス・キング)】!」


 ロキが敵軍にスキルを使用すると、範囲内に居た敵軍6000人が突如倒れた。


 ロキは修行の成果によって、自分よりも精神力が弱い生き物に対して【死んだふり】をかけることが出来るようになったのだ。だが、相当の集中力が必要な為、この規模では1日1回が限度である。


「さすがマスターです」


「すっごーい!」


 白い巨人や範囲外にいた残り4000人の敵軍は倒れていない。


「後はあたし達に任せて!」


「行きます!」


 シャル、アルエ、イーヴァルディが敵軍に向かって走って行った。


 それを見ていたマクファーソン将軍は開いた口が塞がらない状態だった。突如として敵軍の半数以上が倒れたのだ。


「な、何が起こったんだ……?俺は夢でも見ているのか?」


 そして、思い出した。合図があったら攻撃しろと指示されていたことを。


「ぜ、全軍突撃しろ!今が絶好の機会だ!」


 マクファーソン将軍のスキルは指揮術である。将軍がスキルを使用すると兵士達は戦意、身体能力、集中力が向上し一糸乱れぬ動きで突撃を開始した。


「フティア王国に勝利を!」


「ここは絶対に死守する!」


 フティア王国の屈強な戦士達と聖ガルド教皇国の神殿騎士がぶつかった。


「いっくぞー、えーい!」


 シャルは氷河の矢筒から氷の矢を取り出すと、白い巨人を狙って放つ。氷は空中で巨大化していき白い巨人を粉砕した。


 アルエは白い巨人に殴りかかった。白い巨人は物理攻撃無効である為、本来アルエの攻撃は一切通用しない。しかし、白い巨人は全身を炎に包まれた。


 理由はサラの火属性付与をアルエに行った為だ。今のアルエは触れるもの全てを燃やし尽くす。


「さすがアルエちゃん。あたいも頑張るぞー!」


 イーヴァルディのアダマンタイト製ハンマーにも同様の火属性付与がされている。ただし、こちらはイーヴァルディの習得した永続的な火属性付与だ。


「あたいが作ったファイアーハンマーの威力を!食らいな!」


 ゴシャ!という音と共に白い巨人の頭が潰れ、その直後燃え上がる。


 次々と白い巨人は撃破され、神殿騎士はフティア王国の冒険者と兵士によって倒された。


 ホットフット村の防衛戦はロキ達の勝利に終わった。


「ふう、被害も最小限に抑えられたし、防衛成功かな」


 砦に戻ったロキはやっと一息ついた。


「人間同士で争うことは愚かな行為だが、その中でも最良の結果だったろう」


 サラの言う通り、敵の半数以上は死んだふりで寝ているだけなので敵側の被害も少なく済んでいる。そこに、慌てた様子のフティア兵が砦に走り込んできた。


「大変です!イーストコースト村の防衛戦、失敗しました!」


「え!?」


 ロキはその報告をとてもではないが信じられなかった。


「あそこには師匠が、イーリアス国王が居たはず……負けるわけがないですよ!」


「敵は白い巨人を大量に投入してきました。中でも、黒い巨人には全く歯が立たず、撤退するしかなかったようです」


「黒い……巨人……」


 黒い巨人は見たことがない。


「撤退したということはイーリアス国王は無事ということですか?」


「はい、国王は無事です。現在は王都まで撤退したはずです。私は伝令の為にこちらへ……」


「ロキよ、急いで王都に向かった方がいいのではないか?」


 サラが言う通りかもしれない。


「みんなもそれでいい?」


 ロキヘイムの全員が頷いた。僕達は急いで王都に戻ることにした。

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