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002 島流しと安息の地

「父さん、どの村に移住するの?」


「とりあえず隣の村で聞いてみようと思う」


「隣村かぁ」


 隣村には何度か行ったことがあるが、人口が少なく活気がない村だと認識している。


 3日間馬車で移動すると、ようやく隣の村に着いた。


「村長は居るか?」


 父さんが村の入り口で村民に聞いている。


「おらが村長だ」


「俺はケパロス。狩人だ。家族全員でこの村に移住を希望している。許可をもらいたい」


「拒否させてもらう」


「む、それはどういう理由で?」


「お前ら噂のアンデッド家族だろ?」


「そうだが、息子はアンデッドではない!」


「そうかもしれねぇ。だが、疑わしい者達は受け入れるべきじゃないと決定したんだ」


「そうか、では、生活用品だけ買わせてくれないか?」


「いいだろう。ただし、取引は村の外で行ってもらう」


「分かった」


 生活用品を買って次の村を目指した。


 しかし、次の村も、その次の村も受け入れてはもらえなかった。


「またダメだった。俺たちを知る者がいないもっと遠くの土地に行くしかないのか」


 ケパロスは頭を抱えた。


 一方ロキは荷馬車の中で【死んだふり】で遊んでいた。


【死んだふり】をすると本当に死んだように見える為、最初の頃は母親がとても驚いた。


 その反応が楽しくて何度もスキルを使っていたが、最近は母親も驚かなくなり、相手にされなくなった。


 ロキは【死んだふり】について調べる事にした。


 まず、【死んだふり】を解除する方法だ。


 スキルを使う前に5秒後に目覚めると強く念じてから【死んだふり】を行うと、5秒後に起きる事が出来た。


 次に他人が【死んだふり】を解除できるのかを試した。


【死んだふり】の最中に母親にビンタをしてもらったが、起きる事は無かった。


 正確には、不思議な力に跳ね返されてビンタする事が出来なかった。


 もちろん、【死んだふり】を解除した後はビンタの痛みもダメージも0だ。


 ロキは【死んだふり】を使っている間はある程度の攻撃を跳ね返すのではないかと仮説を立てたが、実験は危険すぎるのでやめた。


 そんなことをしていると、父さんから声がかかった。


「クリス!ロキ!神殿騎士だ!荷馬車で伏せておけ!」


 馬車は止められ、ケパロスは質問を受けているようだ。


「荷を確認しろ!」


 神殿騎士の命令が聞こえると荷馬車にかけられた布が剥ぎ取られる。


「こいつ等で間違いないようだ」


「お前達が噂のアンデッド一家だな?我々はガルド神教会の神殿騎士だ。教皇様の命によりお前達を強制連行する!」


「どこに連れて行くのですか!?」


「お前達が知る必要はない!」


 目隠しをされ、荷馬車に乗せられてどこかに連れて行かれる。


 もう何日経ったか分からない。


 唐突に馬車が停止した。


「降りろ!」


 目隠しを外されると、そこは海だった。それと小舟が一艘。


「では、教皇様のお言葉を伝える『我が聖ガルド教皇国にアンデッドが住むことは許されない。島流しの刑とする』とのことだ」


「……分かりました。もうこの国には俺達の居場所はないんですね」


「そういうことだ。さっさと舟に乗れ」


 最低限の荷物だけを舟に乗せる事を許可され、舟に乗り込む。


 手漕ぎの小さな舟である。帆もない。


 神殿騎士に急かされ、舟は出発した。


 波に揺られながら見た景色は、今まで生まれ育った故郷というよりも、全く違う冷たい物に見えた。



 それから3週間が経過した。ロキ一家は極度の脱水症状となっている。


「母さん、喉乾いた」


「もう水はないわよ。雨が降るのを待つしかないわ」


 舟には帆を取り付けてある。体力のある内に付けておいたのだ。


 風さえ吹けばどこかの陸地にたどり着くはずである。


「父さん大丈夫?」


「うぅー……」


 ケパロスは家族の水や食事を優先した為、一番衰弱していた。


 ロキは舟が進む方向を見ると遠くに漁船のようなものが見えた。


「父さん!母さん!船だよ!僕達助かるんだ!」


「本当だわ!こっちよー!」


「あうあうあー!」


 父さんがゾンビのようになっているが、気にしている場合ではない。


「こっちに気づいたよ!」


 漁船が近づいてくる。


「おーい!お前さん達、こんな小っせぇ舟で何してんだ!?」


 その後、親切な船長に乗せてもらい、最寄りのイーストコースト村に連れて行ってもらった。


 ここはフティア王国という国らしい。


 イーストコースト村の村長は犬獣人だった。


「島流しにされたんだって?よく生きていましたな!ハッハッハ!」


 陽気なおじいちゃんといった感じの村長だった。


「はい、俺はケパロス。狩人です。何でもするので村に住まわせてください」


「ハッハッハ!いいですとも!ただし、王様に報告はしなくちゃいけません。報告はこちらでしておきます。一応、亡命ということになりますからな!」


「分かりました。よろしくお願いします」


「「よろしくお願いします!」」


 ロキと母クリスが頭を下げる。


 こうして、ロキ一家は安息の地にたどり着いたのであった。

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