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013 昇格依頼

 銅級1位となった翌日、イーリアス師匠の特訓を終わらせた後、冒険者ギルドに来た。


 昨日の事があったので顔を出しにくかったが、師匠に行けと命令されたのだ。


 受付嬢のベリンダさんに挨拶をする。


「こんにちは」


「ロキ君!昨日はすみませんでした。ギルド職員としては喧嘩を止めなければいけなかったのに……」


「いえ、もう終わった事ですから。それよりも、ギルドに行くように師匠から言われたのですが」


「そういえば、銅級1位になったロキ君にはギルドから昇格依頼が出ます」


「昇格依頼って何ですか?」


「昇格依頼を達成すると銀級冒険者になれるんです」


「なるほど、そういう仕組みなんですね〜」


「昇格依頼はギルドマスターが出す規則ですので、ギルドマスターの部屋に案内しますね」


 受付の奥にある通路を進み、2階に上がると通路の先に少し見た目が違う扉があった。


 ベリンダさんがその扉をノックし声をかける。


「銅級1位になったロキ様がお見えです」


「入ってくれ」


 許可が出たので部屋に入ると、大柄な虎獣人が椅子に座っていた。


「ロキ君だったな。俺はこの冒険者ギルドのギルドマスター、ガルググだ。よろしく」


 猛獣のような低い声でギルドマスターが挨拶する。


「はじめまして、ロキです。よろしくお願いします」


「早速だが、昇格依頼の内容の説明に入らせてもらうぞ」


「はい」


「今回の昇格依頼は、トロールの討伐だ」


「ギルドマスター!それは……!」


「ベリンダ君、黙っていたまえ」


 何か言いかけたベリンダさんをギルドマスターが止めた。


「……はい」


「トロールが王都南の洞窟で目撃されたのだ。それを討伐してくれ」


「分かりました」


「トロールの皮膚は硬い。しっかりと準備して行くといい」


「はい!」


 ロキは退室した。


「トロールは銅級冒険者には荷が重すぎます!」


 ベリンダがギルドマスターに意見する。


「これは国王から頼まれたのだ。仕方なかろう」


「何かあったら責任を取るのはギルドマスターですからね!」


 ベリンダは怒ってギルドマスターの部屋を後にした。



 ロキは冒険者ギルドを出て、サラと相談することにした。


「トロールだってさ。倒せると思う?」


「トロールは巨体で鈍重(どんじゅう)だが防御力は高い。ロキは素早さと防御力は高いが、攻撃力は低い。苦戦する事になるだろう」


「そうだよねぇ、どうしたらいいんだろう」


「攻撃力は武器を変えるか、腕を磨くしかないな」


「武器屋に行ってみよう」


 武器屋は冒険者ギルドのすぐ近くにあった。


 武器屋に入ると所狭しと武器が陳列されている。


 刀身が金色で宝石が付けられた剣のお値段は白金貨5枚だった。


「白金貨なんて見たことないや」


「その剣は貴族向けの観賞用だ。そんな剣じゃ戦えないぞ?」


 店主がアドバイスしてくれた。


「僕はロキ、銅級冒険者です。トロールを倒せる武器はありませんか?」


「トロールか。それなら、この大剣だ。どんなに分厚い皮膚も剣の重量で両断出来る……んだが、お前さんの細腕じゃ無理そうだな」


「他の武器はないですか?」


「ちょっと待ってな」


 店主は店の裏から箱を持ってきた。箱を開けると細身の紅い剣が出てきた。


「こいつはこの店で最高の魔法剣だ。魔力を込めれば刀身に火を纏うんだが、値段は10白金貨だぞ。払えるのか?」


「無理です。すみませんでしたー!」


 ロキは謝って店を飛び出た。


「こうなったら、腕を磨くしかない!」



 ロキは王都の北の森にやって来た。


 ここなら人気もなく思う存分に鍛えられると考えたのだ。


「スキルを使って攻撃出来ないかなぁ?」


「ふむ、今から筋力を増やすよりは近道かもしれぬ」


 サラが同意する。


 ロキは拳に【死んだふり】をかけてアッパーした時の事を思い出していた。


 ロキの力でも大人を4メートル吹き飛ばすことが出来たのだ。


 じゃあ、大人ではなく石や投擲武器を殴ったらどうなるのか?


 転がっている拳大の石を拾い上げる。


 ポンと投げて、【死んだふり】をかけた拳で殴ってみた。


 バシュッ!!


 一瞬にして石は加速し、森の方向へ飛び見えなくなった。


「こ、これ、凄くない?」


「我もこんな事になるとは思わなかったぞ」


「そこの木に当たったらどうなるんだろう?」


「やってみせよ」


 石を拾って殴る。石は明後日の方向に飛んでいった。コントロールが難しい。


 今度は殴るのではなく掌底突きにしてみた。


 バシュッ!ガッ!!


 木の幹に石がめり込んでいる。


「やった!当たった!」


「ほう、これなら威力は十分だろう。だが、石ではトロールの皮膚に負けるだろうな」


「じゃあ、至近距離で剣を撃ち込めばいいのかなぁ?」


「それなら倒せそうだな」


「そうだ!技に名前を付けよう!物に【死んだふり】を撃ち込むから、【死んだふり撃ち込み】なんてどう?」


「長いし弱そうだ。【死撃(デス・バレット)】はどうだ?」


「カッコいいかも!それに決めた!あと拳に【死んだふり】をかけて殴る技は【死んだふり拳で殴ると吹っ飛ぶーヨ】にしよう」


「絶対に駄目だ!【死拳(デス・ストライク)】にしておけ」


「分かったよ。サラは技名の宝石箱だね」


「訳の分からん例えはよせ。それよりも【死撃(デス・バレット)】の練習をしないのか?」


「そうだった!【死撃(デス・バレット)】!」


 ロキは1日中、石を木に撃ち込む練習をするのだった。

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