移動手段は多い方がいい?
おそらく翌日。
母上のローリング気絶マシーンの魔の手によって気絶させられてから復活を果たした俺は、今は起き上がったベットの上で移動手段について考えていた。
そうなのだ。毎度毎度、俺が悲惨な目に遭っている時は、誰かしらに抱えられている時だと気づいたのだ!
最近は高速ハイハイや多少の距離のタッチは出来る様になったけど、やはり大人の足のスライドには敵わないのが現実だ。
しかし! 今の俺には『魔法』というパワーワードがあるのだ!
さて移動するにはどうすればいいのか考えよう。
モ〇ルスーツを作る。
……駄目だ。著作権やら肖像権が絡んできそうだが、そもそも魔法で作れるモノではない。
発展形の乗り物を作るってのはどうだろう?
……赤ちゃんが乗れる乗り物ってなんだ? チャイルドシートか? あれは赤ん坊を固定する為のもので、乗り物じゃねぇだろうが!
う~ん。
俺はベットの上で考えた。……ん? ベット?
そういやベットを浮かせるゲームとかあったよな? アレって元ネタは空飛ぶ絨毯だろ?
そこまで考えた時に俺の頭に閃きが走った。
キュピピーン! ってヤツだな。
未だに俺の生死が掛かるときに発動してはくれない新世代感覚だが。
俺の頭に浮かんだのは肌の色が悪い一体のキャラクター。
青白い肌をしたそのキャラクターは、移動するときに下半身を竜巻みたいにして宙を飛ぶアレだ。
まあアレも元ネタは魔人とかいう種族らしいから、人間の肌色とは別なのはしょうがないだろう。
そんなことよりも注目すべきはその足元だ。
竜巻。
それは自然界において人や家などを巻き上げて吹っ飛ばすほどのエネルギーを秘めた現象だ。
気圧差や温度差などが発生条件なのだがそれは置いておいて、それが風が作り出す点が今は重要となるのだ。
つまり空気が移動する原因を、俺が魔力を使って行えばいいのだ!
……出来るかな? まあ、やってみれば分かるか。
イメージを固めて……
『風を足元から、渦を巻くように収束!』
動かす対象は周りにある空気なので、俺は魔力を全体的に放出しながらイメージを乗せる。
すると周囲の空気がゆっくりと旋回しながら俺に集まってくるのが肌で感じ取れた。
俺が魔力を放出するのを強めつつ更なる速度をイメージすると、シュオオオオと風切り音が聞こえてくるように風がその強さを増していく。
そしてある時点で俺の体が上向きに持ち上がる感覚がきた!
俺は飛べる! アイ・キャン・フラーイ!
ここで唐突だが、みんなはヘリコプターという乗り物を知っているだろうか?
そう、機体の上でバカでかい羽をクルクルと回して大空を飛ぶアレだ。
そして大体のヘリコプターというのは尻尾のようなものが付いていて、そこにも小さな羽が付いているのはご存じだろうか?
俺も子供の頃(たぶん前世での)に『なんで横向きついた小さな羽も回しているんだろう?』と考えていた事がある。
図鑑で見たのかテレビで見たのかその辺りは定かではないが、俺はその答えをその後に知った。
慣性モーメントとかまあ色々な言葉があるのだが、要するに――
「ヴヴぁヴぁヴぁヴぁヴぁヴぁヴぁヴぁヴぁ~!!」
俺はベットから上昇したのだ。
回転しながら。
※ 俺は鍛えられたベテラン赤ちゃんなので、良い赤ちゃんは真似しないでね?
*
――は! 何かコマーシャルが挟まった気もしたが、俺は無事にベットの上に着陸して、無事に生還を果たすことに成功したのだった!
……イヤイヤ、コレはアカンわ!
リアル魔人は成れそうもないな。
だがベットの上が乱れた以外に物が壊れた様子もないから、風を使うことには間違いはなさそうだな。
さてどうするか。
俺は頭の中の記憶を探る。
探すのはテレビなんかで見たことのある映像だ。具体的にはアニメや特撮、映画など。
……う~ん。ウルトラな人みたいにシュワッチでは飛べないし。
マント付けて飛んでる超人だって、アレ、別星系の超能力者だしなぁ。
秘密道具のマントがあるわけでもなし、秘密道具といえば映画なんかで空飛ぶ道具を装備した人達なんかも居たよなぁ。
ん? そういえばあのキャラクターって確か……
俺は一人のキャラクターを思い出していた。
そのキャラクターは超天才の鉄の男と呼ばれた男だ。
その男は手足からエネルギーを放出して飛んでいた。
……これはイケるんじゃないか?
俺はそういった装置を装備しているわけではないが、魔法の指定しだいではその代用が出来そうな気がする!!
『俺の手の平から、空気を圧縮して放出!』
目の前に突き出した手の平からドン! と衝撃があって、俺の体が後ろに飛ばされる感じがした。
イケる! 物理法則さんは俺を裏切らないぜ!
俺はまだふらつくが両足でベットの上に立ち上がると両手を下に向けてイメージを固める。
『出力10%! 気分だけども!』
ドン! と両手から放たれる空気の反作用で俺の体がちょっと浮かび上がる。
『連続放射!』
ゴオオオ! とジェットエンジンのような音を立てて、俺の体が浮かび上がったままになる。
イケるイケる! と調子に乗った俺は足からも噴射するイメージを固める。
『足からカメ〇メ破!』
俺の足から放たれた圧縮空気は俺の足を持ち上げて――
「ぐふ!?」
俺は自爆ニードロップを顔面に食らうこととなった。
赤ちゃんの体ってやっこいのね。と思いながら、俺はベットに沈むことになった。
教訓。調子に乗ったら駄目。
この作品は決して別の作品を貶しているわけではありません。
というか鉄の男はメッチャ好きなイノシシでした。
ハ〇クバスターとか男の子のロマン満載だよね。