私も同席していいかな?
前期テスト終了後、私は即事務室を訪ねた。
鈴原さん曰く、その友人さんのオーケーも取れたということで数日後にこの事務室で話を聞ける手順となった。
その後、その一連の流れを夕飯を一緒に食べている(というより勝手に上がり込んできた)夏央莉に話した。
「図書館で働いてた人かー、ふーん…」
今日のメインのおかずである餃子をパクパクと口に運びながらそう呟く。
今日は少し多めにタネを作ってしまったため、後で冷凍しようと思っていた分が夏央莉のお腹の中に収まっていく。
「その人の話さー、私も一緒に聞きに行っていいかな?」
「え、夏央莉こういう職業に興味あったんだっけ?」
「いや、興味あるかどうかはさておきさ、実際に社会に出て働いてる人の話聞けるってやっぱ貴重な経験じゃん。だから駄目かな?」
「うーん… 駄目ではないと思うけど、その友人さんの性格とか全然分かんないから一度鈴原さんに夏央莉も同席していいか確認してみるよ。」
と言いつつ、私は多分大丈夫だろうなという直感があった。
なにせ働いているのにも関わらず、貴重な時間を学生の進路相談に割いてくれるのだ。
講義のように一対百のような人数にならない限りは相手も許容範囲だろう。
案の定、翌日鈴原さんに「連れを一人増やしても大丈夫ですか?」と確認しに行ったら「全然大丈夫だよー」というゆるーい返事が返ってきた。
正直その返事を聞いた瞬間、私はホッとした。
働いてた人の話が聞けると分かった瞬間は興奮状態だったが、冷静に考えてみると顔見知りの事務室の人が同席してくれるとはいえ、その日初めて顔を合わせる人と三人(もし鈴原さんに仕事が入ったら二人)で話す、というのはハードルが高かった。
だから親しい関係柄の夏央莉が「私も聞きに行っていいかな?」と言ってくれた時から若干の安堵感を覚えていた。
その後、日時と場所を教えてもらったのだが。
「場所、会議室の一室って大丈夫なんですか?夏休みだから講義はないでしょうけど、お話してもらうのってもちろん外部の方ですよね?」
「あー、その点は大丈夫。上のほうに一応確認は取ったし。普通の講義でも受講生が少ない講義は一般の方が聞きに来てる、なんてことも実はあったりするんだよ。」
それは初耳だった。
でもそれって私たちはお金を払って受けてる講義をタダで聞いてるってことだよな… とふと思ったが、言及するのは止めておいた。
とりあえず夏央莉の同席がオーケーならばそれで良かった。