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進路相談Ⅴ

 ちょうど向こうも作業がひと段落済んだところのようで、コーヒーカップを片手に席に戻る途中のようだった。


 「あの、私二年の大原鈴菜です。今日はちょっと就職に関して相談があって来ました。」


 「あー、大原さんね。レポートとか他の提出物もすごく丁寧だし、どんな子なんだろうなと思ってたけど、予想通り「真面目」って感じな気がするよ。」


 ここの事務室を任されている鈴原健一(さん)は私を見るにおもむろにそう答えた。

 普段は動きやすい服装をしていることが多いが、今日はカッターシャツに黒のズボンを履いている。

 学生からの人気(特に女子)は高く、よく「けんちゃん」といった愛称で呼ばれているのを耳にすることがある。

 それにしても初対面でもないのに、「予想通り真面目な感じがする」は喜んでいいのだろうか。


 「で、就職に関することを聞きに来てくれたんだっけ? 結構色々調べたいならコーヒー淹れるけど、どうする?」


 奥にあるコーヒーメーカーに目線を動かしながらそう尋ねてくる。

 あんまり長居する気がない(というより情報がなくてできないであろう)私は首を横に振った。


 「えっと… たぶんそんなに長居はしないと思うのでコーヒーは大丈夫です、ありがとうございます。それで知りたいのは本に関わる仕事についてなんですけど…」


 「本に関わる仕事についてか…。就職課には行ったけど、情報が無かったからここに来たって感じだよね?」


 「そうですね。」


 「うーん… そうだなぁ…」


 鈴原さんは何か意味ありげな様子でコーヒーを口に含みながら綺麗に納められているファイル棚に視線を移した。


 「現状、漠然としたものでいいんだけど、大原さんは本に関する仕事ってどんなものがあると思う?」


 「そうですね… 今思いつく限りだと作家、出版社、書店。それに図書館や学校にいる司書ですかね…」


 多分自宅に帰って調べたらもっと様々な職種が出てくるのだろうが、今の私の頭の中に浮かんでいるものはそのくらいだった。

 私が質問に答えている間、「図書館」というワードが出た瞬間だけ鈴原さんの顔が一瞬変わった気がした。

 そしてその予想は当たっていた。


 「あのさ、僕の知り合いに図書館に勤めていた人間がいるんだけど、良かったら話を聞いてみる?」


 「ぜひ、お願いします!」


 自分でも前のめりになっているのではないかと思うくらい即答だった。

 というのも、高校時代「本に関する仕事に就けたらなぁ~」と漠然と考えるようになってから常々思っていたのだが、まずこの職種に関する情報が少ない。(単に私の調査が足りていないだけなのかもしれないが) 

 更にいうと他の職種に比べて実際の現場で働いている人の声を聞く機会もなかなかないなと私は感じていた。

 それが図書館限定ではあるが話が聞けるときた。

 これはもうチャンス以外の何物でもないだろう。

 それまで大人しい雰囲気だった私が一瞬にして食い気味になったことに対して少しだけ鈴原さんは驚いたようだったが、にこやかに話を進めてくれた。

 

 「よし、じゃあその知り合いには僕から声をかけておくね。実際に話を聞くことになるのは夏休みに入ってからになるだろうけど大丈夫かな?」

 

 「はい、私はそれで大丈夫です。」


 「じゃ、前期のテストが全部終わったらまた僕のところに来て。それまでにはコンタクトを取って日時を決めておくから。」


 「分かりました、ありがとうございます!」

 

 「テスト、頑張ってねー」という鈴原さんの声を後ろに私は意気揚々と事務室を後にした。

 正直もうテストのことなんてどうでもよくていますぐにでも話を聞きたいのだが、そうもいかない。

 その気持ちをなんとか抑えるために無理やり同じ階にある図書館に寄り、自分が取っている講義のテストがいつあるかスマホのカレンダーと照らし合わせながら範囲の確認を行った。

進路相談パートは今回でラストになります。

次からは「図書館」の仕事について実際の体験談を踏まえながらな内容になっていくと思います。

と、同時に書き溜めのストックもなくなってしまったため、次の投稿まで間が空くかもしれませんが、気長にお待ちいただけると幸いです。

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