進路相談Ⅰ
携帯のアラーム音がどこかでなっている。
就寝前には枕横に置いて目を閉じたはずなので寝ている間にどこかに動かしたのだろう。
重い体を両腕でようやく起こしながら音の在り処をまだ完全に開いていない目で捉えた。
アラームを止めて画面で時間を確認し、カーテンを開けるために身を起こした。
窓越しから見えた天気はどんより、といった感じだ。
今日は講義が二限目しかなかったはずなので時間にはまだまだ余裕がある。
天気につられてどんよりとした身体が二度寝を求めていたが、講義の前に友人が訪ねてくる用事があることを思い出し、目を完全に覚ますために洗面所へ向かった。
「今の時代、大学に行っといた方が就職に有利なの!」という親のありがたい?言葉を受けて実家から少し離れた大学に進学した。
社会経験もした方がいいという理由で両親を説得し、大学からは一人暮らしをしている。
本音を言ってしまえば寝坊しても大丈夫なように~とか一度でいいから好き勝手な生活を送ってみたいとかそんな理由だ。
ただ、部屋の家賃も生活費も両親に出してもらっているため、物件を決める時は私に発言権は無く、一件目に見た物件で決まってしまった。
女の子だから~という理由で一応オートロックは付いているが、その他は特に広くもなく入居した時は質素な部屋だった。
洗面所とお風呂は同じ、トイレは別。
後は簡単なキッチンと備え付けのエアコンとクローゼットがあるだけ。
今は大学の教材の数倍はあるであろう本を収める本棚が部屋の大半を占めている。
よく部屋に来る友人から「これどんだけ増えてくの?掃除とか大変そうだねー」と物色されながら言われた覚えがある。
ちなみに掃除はまめにしている。
なんなら除湿機能付きの空気清浄機を本のために買うほどは本好き馬鹿だと自覚はしている。
顔を洗い終わって朝ごはんの準備をしながら昨日はどの本をどこまで読んだっけなと机に積まれた本を遠目に眺めていると、最近音がくすんできたチャイムがなった。
玄関を開ける。
「おはよう、鈴菜! いきなりで悪いんだけどいつものあれお願いしてもいい?」