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4話 ハイグリップラジアルを公道で履いてはいけない(戒め)

2月末。

シミュレーターで事故り、一抹の不安を覚えつつも俺はタカタサーキットに来ていた。上空は青空が広がっており、冬の澄んだ空気が気持ち良い。

8時にはサーキット入りし、受付を済ます。

走行料は半日で5500円とこれまた高額…

だが、今日は走り屋のプライド(とタイヤ代)をかけた戦い。

金がないからと言ってケチなことを言っている場合ではない!


店長の貸してくれたA052を装着。空気圧も調整。そして、トルクレンチでホイールナットの締まりを確認という一連のルーティンを完了させた。

作業は同行してくれた八郎はちろうが手伝ってくれた。まったく良い奴だ。そして時刻は走行開始する9時前。ヘルメットとグローブ、シューズを装着し我が愛車ロードスターNCECに乗り込む。


「見せてもらおうか。国産最高ハイグリップラジアルA052の性能とやらを」

「車が同じ赤色だからって調子に乗ってると事故るぞ〜?」

「大丈夫、任せとけ」


俺は八郎にサムズアップをしてコースへとインした。

なお、ここから先のアタック摸写は、ほぼタカタサーキット攻略法みたいなものです。

興味のある方はコース図でも見ながらお楽しみくださいませ。

参考になれば幸いです。ならないと思うけど。



コースに出てアウトラップを周ってさぁアタック……と言いたいところだがここは焦ってはいけない。2周くらいかけてしっかりタイヤを温めなければならない。タイヤというのは発熱させて初めて機能するものだからだ。

さもなければシミュレーターの時のように木に激突してリアルで走り屋人生、いや下手したら人生そのものが終わる。


ではどうやってタイヤを温めるのか?

それは急ブレーキ、急加速を出来るだけ繰り返すこと!

ブレーキングと加速で発生するタイヤと地面との摩擦熱で温めるのだ!!

そして、タイヤが温まったらいよいよアタックに入ろう!


コントロールラインを通過し、まずは左の高速コーナーである1コーナーと直後にくる右の低速ヘアピンの2コーナー。2コーナーで大きくスピードが落ちるため、ここは1コーナーで多少ブレーキを頑張って突っ込んでも問題ない。

シミュレーターではここでスピンして木に激突したが、リアルでは同じようにはいかない。念のため1コーナーはスピンを警戒しつつ通過し、2コーナーでしっかり車速を落としてクリア。


短いストレートの後は3コーナー。

大きく円を描くように回り込む。

そんなに難しいコーナーでもないが問題は立ち上がりにある。

中盤から登り坂になっており、コーナーの終わりで急に平坦な道に戻るのだ。

つまり、コーナーを曲がり終えてアクセルを踏んで加速していくタイミングで路面が変わる。

つまり、リア荷重が抜けてオーバーステアが出やすいというのがこの3コーナーの難しいところなのである。


が、しかし!

今の俺にはそんなことはもはやどうでもよかった。

なぜなら!

今履いているA052はその程度の路面の変化じゃびくともしないからだ!

アウトラップ中にそのことに気付いて俺は感動した。

さすが国産最高のハイグリップラジアルは伊達じゃない…!


その次に待っているのは左、右のダブルヘアピン。

ここはしっかりとブレーキングして車速を落とし、2つともインベタで最短距離を駆け抜ける。


直後にある左の6コーナーはなるべくアクセル半開のまま、イン側のパイロンをかすめるようなライン取りをして短いストレートへ。


ストレートの先にはセナコーナーという左の下りながらの高速コーナー。

下り坂のため先が見えなくて突っ込みづらいかもしれないが、入り口でできるだけ外からかぶせるように入ると曲がりやすい。


そして次はすり鉢状の右に2連続で続く複合コーナー。

入り口でしっかりと減速を終わらしてから進入するように!

それにしてもA052の性能はすごい!

コーナリングスピードがすり減ったタイヤとは段違いだ…

どんどん踏んでいける!


すり鉢をクリアするといよいよ最終コーナー。

右に緩やかに大きく曲がる高速コーナーだが、高速だからといって調子に乗ってアクセルを踏み過ぎてはならない。ここは路面が凹凸していて、アクセルを踏み過ぎると簡単にスピンしてしまう。

このコースで1番の危険ポイントだ。

実際、俺は夢の中でここでクラッシュした…

だが、正夢にはならない。

今の俺にはA052が付いているのだから。

A052にはこんな路面の凹凸など取るに足りぬ!

俺は中盤からアクセル全開にして最終コーナーを駆け抜け……無事にクリアした。


目の前にはコントロールライン。

ここを越えると1周が完了する。

そして今---そのラインを超えた。

1コーナー手前にある電光掲示板に自分のタイムが表示される。

そのタイムは……


60.729



「よくやったね。これでこのタイヤ-A052ーは君のものだ」

「おめでとう。やる時はやるんだな」


アタック終了後、店長と八郎が俺の結果を祝ってくれた。


「ありがとう。よし、これからこのタイヤでまたたっぷり走り込んでやるぜ!」


これでタイヤ戦線異状なしだ。

道星みちぼしがそう意気込んでこの小説は終わり---


「なぁ、そのタイヤで普段も走るつもりなの?」


…と思っていたら八郎が突然そんなことを聞いてきた。


「ああ、そうだけど?」


これ以外タイヤも持っていないためそう答える。


「そんなことしたらすぐすり減るよ。A052って溝浅いから」

「………え?」


ナンダッテ?


「だから、すぐすり減るって」

「………どれくらいで?」

「だいたい1ヶ月くらい」


え?ナニソレ?

つまり、1ヶ月後にはまた買い換えなきゃいけないってこと?


「…ま、頑張れ!」


八郎は笑いながらポンと俺の肩に手を置くだけであった。

A052の新品価格は10万…


「……結局最後は金に悩まされるオチかよ!!!」


今度こそひもじい生活になるのか...?

お金のない走り屋、道星のお金のない日常はこれからも続いていく。

タイヤ戦線異状……あり。



※モータースポーツは身の丈にあった楽しみ方をしましょう

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