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1話 またまた悪夢

コース後半、すり鉢状の地形に右に2連続で続く複合コーナーをクリア。

立ち上がりは短い登り坂。

ここから先はいかにスピードを殺さずにいけるかが勝負だ。

次は最終コーナー。右に緩やかに曲がるためノーブレーキで突っ込める。

アクセルオフにし何も踏まないままステアリングを切り、最終コーナーに進入する。


「後はここをうまくまとめられれば好タイム!」


ここで欲が出た。

コーナー中盤に差し掛かったところでアクセルを踏み加速に移り始める……

がしかし、僅かにアクセルを踏む量が多かった。


「!?」


路面の凹凸に反応して、車に突然強いオーバーステアが発生。

コントロールを失った俺の車はアウト側のバリアに一直線。


「うわああああああああ!!!---ー」



「という夢を見たんだ」

「夢オチかい!」


今俺たちがいるのはサーキット……ではなく(有)ナイトーオブファイヤーという車屋。

俺ー道星みちぼしーは友人である八郎はちろうと店内のフリースペースでコーヒーを飲みながら今日見た夢について話していた。


「本当に恐ろしい夢だった…」

「すり減ったタイヤでアタックするからそうなるんだよ」

「いや、夢の話だからな?」

「現実でもタイヤ結構きてるじゃん?」

「うっ……それを言われると…」


ていうか俺、夢の中でもすり減ったタイヤでアタックしてたんだな…せめて夢の中だけでも良いタイヤ履かせて欲しかったんだが。


「ひょっとすると正夢だったりして…」

「あああああああ!!!やめてやめてやめて!!!」


慌てて両耳を塞ぐ。俺は何も聞こえんぞ…

八郎はそんな俺の様子を見て心底おかしそうに笑っている。

こいつ、楽しんでやがる…


「でも実際問題、そろそろタイヤ換えないと本当にクラッシュするかもよ?」


どうやらわめいても八郎はこの問題からは逃してはくれないらしい…いや、そもそも今日見た夢の話してただけなのになんで俺のタイヤの話になってんの??


「んなこと言われても、俺金ねーんだもん…」



俺たちがやっている趣味及びスポーツ、それはサーキットでのタイムアタック。アクセルを底まで踏み、ブレーキングでコーナーを攻め、1周をいかに速く周ってこれるかという走り屋のプライドをかけたスポーツ!

今日も最速の名をかけて走り屋達は日々鍛錬を積み、凌ぎを削っているのである!

サーキットに行けばガソリン、ゴムの焼ける匂い、そして爆音と非日常が俺たちを待っており、走り屋及び車好き達を日々熱狂させる!

しかし、このスポーツをする上ではいささか…いや大いに問題がある事柄が一つある。それは……


「まぁ、何するにしてもお金がかかるよね」

「それな」


そう、このスポーツ。

何をするにしてもお金がかかりすぎるのである。


ブレーキパッド:5万円

バケットシート :10万円

LSD(デフ):15万円


サーキットを走れるように車をチューニングするだけでもコレである。走る前からコレである。いや、必ずしも全部付けて走る必要はないのだけども。

つまり、俺みたいな月収十数万の底辺リーマンはそう簡単にポンポン金を注ぎ込めない。

つまり、車を仕上げるのが遅い!

つまり、なかなかサーキットに行けない!!

つまり、腕がなかなか上がらない!!!

金持ちが絶対的に強い…まさに理不尽な世界…ッ!(あくまで個人的な感想)


「新品のタイヤの値段っていくらだっけ?」

「……1セットでだいたい8万くらい」


俺が力なく言うと八郎は「あ〜」と曖昧に笑うだけだった。


「でも、さすがにタイヤはどうにかして欲しいよね。この前、お前と走りに行った時はコースアウトしてコース上に砂利まいてたじゃん?」

「すみませんその節は本当に申し訳ございませんでしたぁ!」


俺の今のすり減ってグリップの低下したタイヤはコーナー立ち上がりでオーバーステア(リアタイヤが滑る現象)が出やすい。そのため俺はこの前八郎と走りに行った日にオーバーを出し、コースアウトしてコース外にある砂利をばら撒いて赤旗中断のきっかけを作ってしまった。

あのサーキット、砂利撒いたら清掃のため走行中断させられるんだよな…

あの時はアタック中だった他の人にも白い目で見られて本当に参った……


「とにかく、多少無理してでもタイヤだけはどうにかした方がいいんじゃない?」

「あーもう、どうにかしてドカンと稼ぐ方法ないのかな〜! タイヤ戦線異状ありだよ!」


そんな現状を嘆いていると、ガチャリと店内のドアが開く音がした。

音がした方向を見ると、一人の中年男性が入ってきていたところだった。


「やぁ、道星君、八郎君。こんにちは」

「こんにちは〜」

「こんにちは、中村さん」


俺たちに笑顔で挨拶をしてきたこの男性は、(有)ナイトーオブファイヤーの店長、中村なかむらさん。俺と八郎の車の面倒を見てくれている人でもある。


「なんだかひどく悩んでるようだけど、どうかしたのかな?」

「店長、実は…」


俺は、さっきまで八郎と話していた内容を掻い摘んで中村さんに話した。

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