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理不尽なその裁き

作者: ロース山

「え〜被告人はよって、地球滅亡の引き金を引いたとして、地獄行き!!」

「そんな! なぜです!?」

「だから。地球滅亡の引き金を引いたんだって」

「私はただ職務を全うして……!」

「そうだよね、職務を全うして将来世界を救うはずだった子の進路を切っちゃったんだよね。書類の〆切破りと必須の授業の出席忘れそして地球は危機を乗り越えられなかった」

「だったら、地獄に落ちるべきはあいつの筈だ!!」

「でも君念押ししなかったでしょう〜だめだよ〜自分が未来ある若者の進路関係預かってるんならちゃんと忠告ぐらい」

「もう自己管理はできてしかるべきだ!! できないやつが悪い!!」

「でもあの子障害者だよ〜サポート必要でしょ〜」

「!? そんなの知らない!!」

「あら〜勉強不足〜」

「だからそんなのっただ一生徒の情報なんて把握しきれないっ」

「そうだよね、君は極悪人ではない。良くも悪くも普通。職務を全うする。それだけをノルマをこなしただけ。ただ、それ以上やらず、自分の仕事がなんのためにあるのか、なにをもたらすのか、思考を巡らせず、ただ定時に上がって給料の、自分の生活のため。


 当たり前のことだ。

 大切なことだ


 でもね、


 その君の生活は君自身を大切にしているかな?

 誰かを思いやることは君を大事にすることじゃない?

 ちゃんと働いて休息とって。君は日々生きていた

 植物のようにおだやかに

 でも希望も絶望も何もないね。そりゃ個人的な感情を仕事に入れてしまうと大変なことが起こりかねないけれど。

 でも仕事以外にも

 君は何かに前向きにでも後ろ向きにでも取り組んでいたかい?

 君はどこにも向いてないだろずっとずっと

 もっと、想像してみて。君に何かできるかを

 君は学校の事務の受付。

 君は子供の頃夢見たヒーローではないのかもしれない

 どしたら日々楽しいだろう、自分に何ができるかな、これをしてあげたら相手はどんな顔するかな、そんな風に考えたこと、ないでしょう?

 君は止まってしまったね。

 ヒーローになれないと諦め、いや、その夢をわすれて」

「だからどうして!! 地獄なんかに!!!」

 いや違う、なぜ知ってるその夢を。

 その夢を知っているのは

 その目は


 「ねえ、諦めないで。

  自分のために頑張り、自分を守り、自分を慈しむことは大事なことだよ

  他人に期待することは無謀だよ

  でも、ほんの少しだけ。

  指先だけの、ほんの少しでいいや、それ以上はだめ

  まわりを見よう?

  世間の目を、自分の中の価値観を気にして好きなことをやらないのは、嫌いなことをやらされるのは悲しいことだ

  でも困った人をほんの少しだけ、助けることはどうだろう?

  そのほんの少しを、ほんの少しだから偽善だと、言う人がいたらそれは何もやらずに楽して正しく有りたいだけの人


  別にアクの組織から狙われる美少女は助けなくて良い。危険な火の粉は、被ることは無い

  ただその子が逃げやすいようにさり気なく行動できないかな。その子を助けてくれる人を呼ぶことは?

  あるいは、倒れている人がいたらすぐに救急車を呼ぶだけでも良い。他の誰かと思わずに

  君を大切にするほんの少しだけの勇気()を持って。

  (勇気)は君自身を大切にするためにあるべきじゃないかな」

 ひたすら長い、トイレットペーパーのように長い独り言のようなことを垂れ流す、性別も定かでない裁判官

 傍聴席から怨念垂れ流しで俺を見ていた全地球人、うなだれた世界を救うはずだったやつ。

 死後の世界。今流行の異世界ものではなく古来由緒正しき天国と地獄、その裁き、

 「異世界転生? そんな話もあったかもね。でも君が今生きることを諦めないで」

 裁判官は杖でトントンと音を立てて床をつく。

 その裁判の法廷にいた地球人や救世主予定が、また法定そのものが水洗ボタンを押したトイレのようについた床へ吸い込まれていく。

 俺と裁判官を残して。

 「タイミング良く君が事故にあった。このまま殺して仕事が有耶無耶になってあの子が無事進路を進み地球は救われ。そしてその穴埋めに君に異世界転生プレゼントなんて案は蹴らせて頂くよ。

  だって今転生しても君は変わらない。同じことをするだけだから

  異世界でヒーローなんてやらせない

  だから今、ちょっとずつ変われ

  高校デビューならぬ生誕デビューなんて、そんな大掛かりなことをしなくてもいいだろ。

  ちょっとずつの今日デビュー。

  だから生きて。暇つぶし程度には見てるからさ

  君の親友の僕がね」

 やっぱりか

 どこかで見たその目は

 幼い頃一緒に遊んで事故で死んだ親友のものだった。

死後の裁きに潜伏していた悪魔は、裁く天使が杖で開けた穴に吸い込まれていった。

人間を事故にあわせ異世界転生をプレゼントする提案をしたのは天使に化けた悪魔だ。転生時にアンテナを埋め込み異世界で力をつけさせ駒にしようとした。

とある科学者が未来を予知するものの存在を悪魔と呼称したために手に入れた予知能力。なにもせずとも地球は滅ぶ。しかし一つもなくなるのも味気なし

舌なめずりする悪魔が下そうとした理不尽なその裁きを、天使は蹴った。



 悪魔が演算し作り出した未来は消え、今が動き出す。

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