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亡国の公子と金と銀の姫君  作者: あぐにゅん
第8章 流浪の冒険者
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第82話 帝国の本気

ちょっと閑話っぽいかもです。

シンはその後、二度程シンジの元に赴いた。単純に知識を得るのは勿論なのだが、それ以上にいい稽古相手となって貰っている。現状シンと同等以上に戦えるのはリヴィアのみであるが、リヴィアは体術に特化している部分がある為、そう言う意味では多様性に乏しい。逆にシンジは体術、剣術、魔法といった攻撃がバラエティに富んでおり、且つ、一定水準以上の技量を誇る。シンジはそう言う意味で、最高の稽古相手になってくれた。


一方で、それ以外の時間の多くは、魔力操作とヤタノカガミの習熟に費やしている。魔力量は元が大きい為、それに比例して伸びも大きくなる。これまでは、日課として一定水準まで伸ばすよう修行していたが、冬の間は枯渇寸前まで使い切ることで、更にその伸びを引き上げている。このままいけば、春にはシンジの魔力に方を並べるくらいまでは、伸ばせそうな勢いである。一方、ヤタノカガミは10分まではため込む事に成功しているが、それ以上の短縮にはなっていない。そもそも鏡側の魔力の受け口の小ささが問題なので、どんなに綺麗に魔力を流し込んだとしても、それ以上のスピードにはならなかった。


そうこうしているうちに月も3月になる。最後の冬に期間であり、冬が終わりを告げる月である。シンはその日の修行を終わらせて、いつもフィアナと過ごしている応接室にやってくる。そこではフィアナとハル、そしてニナが仲良く話をしていた。


「ふぃーおねえちゃんと、はるおねえちゃんはどっちがおねえちゃんなの?」


どうやらニナがフィアナとハル、どっちが年上なのかを聞いているようだ。するとハルがにっこりして、ニナに言う。


「フィアナお姉様が2つ年上ですよ。私はミリアさんと同い年です」


「ふーん、じゃあふぃーおねえちゃんがいちばんおねえちゃん?」


すると今度はフィアナが首を振って、それに答える。


「一番年上なのはアカネさんね。その次がセシルお姉様、私はその次よ」


するとニナはもう一人名前を思い出す。


「じゃあ、りヴぃあおねえちゃんは?」


するとフィアナもハルも首を傾げる。そう言えば、誰も年齢とかを聞いたことが無い。そもそも竜の盟約者って、普通の人と同じなのだろうか?そして二人は、偶々そこに居合わせたシンに目を向ける。


「シン?」


「シンお兄様?」


しかし流石にシンも年齢とかを聞いたことが無い。なんとなく年上だとは思っているが、男性が女性に年齢を聞くのも失礼な話となる。シンも困った表情を浮かべて、知らない旨を二人に伝える。


「残念ながら、俺も知らないよ。多分俺よりも年上のような気がするけど、俺から年齢を聞くのもね」


「あかねおねえちゃんよりおねえちゃん?」


「うーん、どうだろう。そんな気もするけど、なんとも言えないな」


するとそんな三人がニナの質問に答えられない状況で、当の本人が現れる。リヴィアはいきなり三人から注目されたことで、少しギョっとする。


「なんだ、私の顔に何かついているのか?」


リヴィアはそう言って、自分の顔をぺたぺたと触っている。それに対してシンは苦笑しながらも、リヴィアに質問する。


「ごめん、ごめん。別に顔に何かついているわけじゃないから。今みんなでリヴィアの年齢が一体いくつなんだという話題になってね。竜の盟約者でだと、普通の人間と何か違う部分があるのかと思って」


それを聞いてリヴィアは対して関心もなさそうに、答える。


「なんだ、そんな事か。私達竜の盟約者は竜と魂が繋がっているが、特段、年齢に及ぼす事はない。普通の人間と一緒だ。しいてあげれば、短命な人間の方が、多いのではないか」


むしろ長命、長寿だと思っていたシンは意外な表情を見せる。


「てっきり長命、長寿だと思ってた。下手したら不老不死とか」


リヴィアはそこで少し嫌そうな顔をすると、シンに文句を言う。


「そんなわけあるか。普通に生まれて普通に死ぬ。ただし死ににくい体にはなるが、その分危険が増える。総じて短命になるケースが多くなる。普通に結婚して、子供を成す事も出来る。別に子供が必ずしも竜の盟約者となるわけでもない。別に化け物じゃないんだからな」


シンはそれを聞いて、少し悪いと思ったのか、素直にリヴィアに謝罪する。


「ああ、そんなつもりじゃなかったんだ。済まない。別に化け物とか思ってもいない。ただリヴィアが一体何歳なんだというのが話題になっただけだ」


「なんだ、シンは私の年齢に興味があるのか?それなら最初からそう聞けば教えてやらんでもないが」


シンは何やら嬉しそうにするリヴィアの表情を見て、めんどくさくなりそうな予感がしたので、事実を言う。


「残念ながら、興味を持ったのはニナ。俺は年上だろうなとは思ったが、年齢までは聞いてなかったなと思っただけだ」


「まあまあ、そうテレるな。うんうん、まあそう言う事にしておこう。私は今年で20歳になる。どうだ、シンとはつり合いが取れているだろう。嫁にするには丁度いい歳の差じゃないか?」


シンがリヴィアのプライベートな事柄に興味を持ってくれたのが、そんなにも嬉しかったのか、リヴィアは得意そうにそう答える。するとニナが小首を傾げて、シンに質問する。


「しんおにいちゃんは、りヴぃあおねえちゃんをおよめさんにするの?ふぃーおねえちゃんじゃないの?」


「ほら、リヴィア、ヘンな事言うから、ニナが勘違いしたじゃないか」


リヴィアに文句を言うシンを尻目に、フィアナがニナにフォローを入れる。


「フフフ、ニナは私がシンのお嫁さんになると思っているのね。ありがとう。でもシンはいざとなったら5人はお嫁さんを貰うから、私の他に後4人もお嫁さんを貰う事が出来るから、大丈夫よ」


シンはフォローにならないフォローを入れるフィアナに唖然としていると、ニナが二パッと笑って宣言する。


「ならになも、およめさんになるーっ」


「あらあら、強力なライバルの出現ですね。リヴィア、ハル、頑張って下さいね」


ニコニコ顔で笑顔を交わすフィアナとニナを見ながら、リヴィアとハルは真剣な表情で、のこりの枠に入り込めるのかを、考え始める。


「だからなんで、嫁の枠が5名って事になっているんだ……」


シンは少しずつ外堀が埋まっていくこの状況に危機感を募らせるのであった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


帝都王城の広大な庭園には、今、一体の竜が鎮座している。身の丈10数Mにも及ぼうかという巨体。漆黒の翼に漆黒の鱗を持ち、その口からは、鋭い牙がむき出しになっている。その竜のまとう空気は重々しく、禍々しい。北方諸国の人間なら誰もが知っているおとぎ話の存在。暗黒の竜、邪竜。すべての物を破壊しうる存在。破滅の象徴。本来であれば、その怨嗟からくる衝動で、帝都といえど無事では済まず、その黒き炎で、すべてを焼き尽くす。藻屑と化しても不思議ではない。なのに、何故かその竜は大人しく、帝都の庭に佇んでいた。


王城バルコニーからその様を眺める存在がいる。現皇帝エリウス三世。この暗黒の竜の魂を受け入れ、その盟約者としてその力を受け入れるもの。日々をその邪竜の怨嗟にさらされてなお、正気を保つ人間である。今は、竜の怨嗟が弱まっている。過去の封印により憤怒や憎悪を募らせていた時期に比べれば、その怨嗟は今、歓喜に近い。己が衝動の破壊活動が今、目前へと迫っているからだ。エリウスはその破壊衝動をも精神力で押さえつけ、眼下にいる竜を一瞥した後、バルコニーから部屋へと戻る。そこには既に部屋で待機をさせていた龍騎兵の面々がいた。


「やはり青はいなくなったか。他はすべてそろっているな」


赤・黄・緑・白・紫、それぞれの色をした髪と瞳をした騎士というより戦士に近い出で立ちの面々は平伏をして、待機してる。その中のうちの赤が代表して答える。


「仰る通り、青に関しては、いまだ行方が知れておりません。竜の理により強き者に従う宿命。竜王でも顕現されない限り、我らは皇帝に従う立場。裏切りは考えられません。であれば、どこかで誤って命を落としたのでしょう」


「竜の盟約者がそう易々と命を落とすとも思えんが、今は考えても無駄であろう。それよりもいよいよ、北方諸国で破壊の限りと尽くす。かの地を焦土と化し、二度と人の住めぬ土地としよう。その後は南、カストレイアだ」


皇帝も青に関しては、最早興味が失せたのか、差して咎めもせずに北を攻める事を宣言する。


「わかりました。それで我らはいかように行動をしたらよろしいでしょう」


赤のサラマは慇懃な姿勢を崩さずに今後の方針を訪ねる。皇帝はメンバーを値踏みした後、それに答える。


「ならば、白、その方は北方出身。北方への従軍に従え。赤、緑・紫もだ。黄、その方はカストレイアに迎え。かの国には金の兆候があるとされる。そなたはかの金の眷属と聞く。ならば、その痕跡をたどれ」


「ははっ」


一同は平伏したまま、返事をする。その表情までは見れない。ただ、その忠誠心に疑念は無い。なぜなら彼らは竜なのだ。竜の理は強き者に従うのが宿命。ならば、この世界で最強たる暗黒竜に従うのは必然なのである。皇帝も暗黒竜、その魂も完全に失念していた。青がいない可能性。強者を塗り替える事によりその理に綻びが出る事に。そして、破壊への歓喜が、過去の敗北を完全に塗りつぶしていた。そう、物語は流浪の冒険者の登場により大きく変わることに。


その年の春になり、帝国は旧メルストレイル公国及び北方諸国にむけ、進軍を開始した。その頭上には漆黒の翼と漆黒の鱗の暗黒の竜が飛来していた。

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