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亡国の公子と金と銀の姫君  作者: あぐにゅん
第1章 金の姫
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第8話 潜入と決断と危機

それぞれの場面です。メル、大変です。

シンは単独で領主代行が使用しているという屋敷の中に潜入していた。

ハワードには話をつけてある。今単独で行動しているのは、単純に単独行動の方が行動しやすいというのもあるが、もし万が一失敗した場合、シンがこの町から追われても良いようにである。ただ状況証拠はそろっている。それならば探らない手はないのである。

最終的にはハワードも屋敷の外に冒険者を待機させる事と見つけたら一度戻ってくるという事で渋々了承している。


屋敷は貴族の邸宅らしく庭が広い。見張りが何人かいるが、さすがに時間帯も深夜に差し掛かっているからか、注意力は高くないようで、シンは見つからないようにいくつかの木陰を使って、屋敷に近づいていく。

屋敷は三階建てで、中央に両開きの大きなドアがある。恐らくそこが正面玄関で、玄関ホールがあるのだろう。

窓から明かりがともって見えるのは、5部屋程度。

地下に部屋等あればそこも捜索対象となるが、さしあたり明かりのある部屋から確認していくのが、妥当だろうと、外から大体の場所を記憶していく。

後は侵入経路だが、と建物周りを見て回っていると裏手に見張りが立っている場所がある。


「あそこが勝手口だな」


シンはあたりをつけて、少し大きめな石を拾うと、見張りの前にある茂みにその意思を投げつけ、音を出す。

案の定、その音に反応した見張りの隙を見逃さず、一気に近づくとその見張りの首筋に手刀を繰り出し、一瞬で意識を刈り取る。


「取り敢えず、バレずに中へ入れそうだな」


シンは見張りを勝手口の脇に座らせるとそーっと屋敷の中に入っていった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


セシルは迷っていた。

少なくても今のセシルは部屋の中に限り自由に動き回れる。

一応念の為確認したが、ドアには外側から鍵がかかっているらしく、内側からは開けられない。

部屋は3階の一番奥の部屋であり、窓もドア同様に空かない。

当然、部屋の中に武器になりそうなものもない為、使える手立ては魔法くらいであるが、幸い魔法を阻害するような感覚は無いのでそれでドアを打ち破ろうとすればできる。

ただし、打ち破った後、逃げおおせるかと言うと恐らく無理だろうと考えている。

迷っているのはメルの事だ。メルが捕まっているかどうかも定かではないが、捕まっていた場合、今の自分以上に身の危険がある可能性がある。

本来無関係である自分の所為で、何かあったらと思うと気が気でない。もしかしたら、ここで行動を起こすことで、彼女を救う手だてになるかもしれない。

ただ、それすらも非常に低い可能性なのだ。


「シン様…」


セシルは自分を助けてくれた人の事を思い浮かべる。

シンと出会ってからまだ1日も立っていない。正直、彼がどんな人物で、どこで何をしていたのか、何が好きで、何が苦手で、どんな事を楽しいと悲しいと思うのか、何一つ知らない。

優しい人だとは思う。

市井の人には珍しく、きちんとした応対のできる人とも思う。

私を王族と知っても、態度の変わらない珍しい人だとも思う。

そして何よりそばにいると安心できる人だと思う。

セシルにとってシンは、今一番興味の尽きない、不思議な人なのである。

そんなシンの事を考えるとなんとなくだが、勇気が湧いてくる。

今はどちらにしろ捕らわれの身。手段・可能性があるのに、やれる事をやらないで、それでもしメルの身に何かあったらと思うときっと後悔する。

それになんとなくだが、何とかなる気がするのだ。

彼の事を考えてから、ずっとそんな気がする。


「ふふふっ」


セシルは、楽しげにドアの前に立つと、両手を前に掲げ、大きな火球を作りだすのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


メルは大柄な男に足を抑えられ、もう一人の小柄な男が自分の太腿を嬲るのにじっと耐えていた。

男の手は膝下から少しずつ上に外側から内側にと這ってくる。


「嫌っ」


メルは背中に走る悪寒に耐えられず、思わず声が漏れる。寝着の裾はめくり上がり、その身は手が上にくる度によじれる。


「ひっひっひっ、じゃあそろそろ、そっちの立派なお胸も拝ませてもらおうか」


男は腰に差していたナイフを取り出すとメルの胸元にそれを持っていき、着ていた寝着を引き裂いていく。


「嫌―っ。やめて」


引き裂かれた寝着が左右にはだけ、メルの下着姿が露わになる。露わになった胸は形のいい張りのあるもので、その下着から溢れんばかりに実っている。メルは顔を横に逸らし、羞恥に打ち震える。


「うひょー、嬢ちゃん、やっぱいいもん持ってるねー。」


男が狂喜の声を上げ、その胸に武者ぶりつこうとしたその時である。轟音が部屋の上より、響き渡った。


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