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亡国の公子と金と銀の姫君  作者: あぐにゅん
第8章 流浪の冒険者
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第79話 公王の記憶

今回はほのぼのした回です。

「ほほう、彼女が竜の盟約者か?」


ダンはそう言うとリヴィアに目をやる。今この場には、シン、ダン、フィアナ、リヴィア、シグルドの他に、ハルとミリア、何故かニナまでいた。ちなみにニナは今フィアナの膝の上に大人しく座り、ニコニコしている。フィアナの話では、既に温泉で、女性陣はリヴィアとは顔を合わせていて、仲よくなったらしい。


シンはダンの質問に首肯し、ちょっと意外な表情を見せる。


「師匠、あまり驚かれていませんが、竜の盟約者の事はご存知なのですか?」


「まあ、古い書物で見たことがある程度だがの。竜の盟約者、代々その血は受け継がれその一族の益となす。昔、北方諸国にも1つそう言った一族がいたみたいだからの。確か色は白だったか」


ダンの言葉を受けて、リヴィアは目を見開く。


「爺さん、物知りだな。白ん所は、先の北方諸国の帝国侵攻で一族は滅ぼされたんだ。今は渋々皇帝に従っているけどな」


「帝国に寝返ったっていう事か?」


シンは単純に考えてそう質問する。リヴィアは少し怒った口調でそれを否定する。


「それは違う。竜には竜の理がある。より強き者に従うという理がな。白はその竜の理に従っているに過ぎない。私も本来であれば、皇帝に従うべきところだが、シンのおかげてその理が上書かれた形だな」


「上書かれた?」


するとリヴィアは少し呆れ顔になって、シンに言う。


「シンは私に勝っただろう。だから私は竜の理に従い、強き者に従っているんだ。ちなみに皇帝とシンの優劣はついていない。なぜなら、私には両方の底が見えなかったからな。だから、私はシンに従う事が出来るんだ」


「なら、もし俺が皇帝に負けたら?」


「その時は私も皇帝に従う事になる。強き者に従う理によってな」


リヴィアの行動原理は至極単純だが明快だ。強いものに従う。それは他の盟約者にも言える事らしい。


「なら、俺が他の盟約者を倒したら、リヴィアと同じように俺に従わせる事が出来るのか?」


「それはどうだろう。白は多分いけると思うが、他の盟約者は何とも言えない。結局優劣がついていないだけで、誰を上位とするかは、最終盟約者の気持ち次第だからな。白は敵意を持っているが、それ以外は、それがあるかは分からん」


するとそれまで黙っていたダンが、シンに向って、軽い口調で言う。


「とりあえずはその白とやらを倒すしかなかろう。底を見せずにな。そうすれば、こちらにとって心強い味方となろう。それとシンが皇帝に負けない事じゃな。まあもし負けたら、この世界が破滅するだけだがの」


「師匠、流石に色々重いのですが」


シンは流石に顔を引くつかせながら言う。そこにフィアナとニナが追い打ちをかける。


「あら、シンが負ける姿は想像できません。大体、竜の盟約者相手に既に底を見せずに勝っているのですから」


「しんおにいちゃん、つよーい」


それにハルやミリアまでも追随する。


「シン兄様なら、大丈夫です!」


「シンお兄様が駄目なら、多分他の誰でも駄目でしょうね」


するとダンがカラカラと笑い声をあげて、シンに言う。


「ほらな、お前の大事な人達がそう言うんだ。守りきって見せるしかないじゃろう。まあ、儂も力をいや、知恵を貸す。肉体労働は全面的に、シン頼みだがの」


そんな和やかな雰囲気の中で、一人だけシグルドが、冷静な意見を述べる。


「シン様に頑張っていただくのはいいとして、現実的には竜の盟約者だけでなく、実際には帝国軍をもどうにかしないといけません。ダン様、そのあたりはどうお考えなのですか?」


確かに先方の最高戦力は別にして、何万もの兵士達を動員できる帝国軍は脅威である。シン個人の勇は別にして、そこを何とかしないとこの春は乗り切れない。ただそこはダンが考え逃すはずはない。シンはダンが何を言うか、固唾を飲んで見守る。


「そうさの。残念ながら今、北方諸国をまとめて軍を組織したとして帝国軍を勝る事は敵わんだろう。ならば手は一つ。頭を取るしかないじゃろう。それも正面から衆人の前での」


「師匠。その皇帝が自ら来ずに、何万もの兵のみがきたらの話をしているんですが」


「馬鹿者、そんなもの来させず、皇帝だけ、まあとは言え、竜の盟約者も来るだろうが、を釣り出せばいいじゃろう。何万もの兵を相手にするよりも、その方がよほど簡単じゃ」


ダンはそう言って、ニヤリといたずらっ子のような笑みを浮かべる。確かに釣り出せる方法があるのであれば、それに越したことは無いが、そう簡単に釣れるだろうか?ただダンがああいう以上、一定以上の勝算があるのは間違いない。シンはそこで溜息を付き、ダンに言う。


「まあそのあたりは師匠にお任せします。それとこの「ヤタノカガミ」ですが、これはどうされるんですか?」


シンはそこで、胸にしまっておいた鏡を取り出し、ダンの前に置く。ダンはそれを手に取って、物を確認するとうんうんと頷く。


「確かに「ヤタノカガミ」じゃの。これですべての家の家宝がそろった。ようやく公王の知識の遺産に触れることができる。後は人じゃが、アルナス、ガリア、ヘスティはここにおるから問題ない。後はレーニアとニルスじゃが、まあ文にて承諾を得ればよいか。シグルド、冬の行軍となってすまんが、ヘスティにいるキリクとニルスにいるアンのところに行って、承諾を取ってきてくれ。すまんが、春に入る前に戻ってきて欲しい。できるか?」


「承知しました。問題ありません」


すると、ハルが不思議そうな顔をしてダンに質問する。


「ダン様、公王の知識の遺産とは何のことでしょう?」


「ああ、ハルは知らんかったか。ん?シンには前に説明したか?」


シンはかぶりを振って、ダンに言う。


「細かいことまでは。なんでも歴代王の知識が公王には受け継がれるとか」


ダンはそれに対して、頷くと、ハルに向って、説明する。


「ハルや。今シンが言ったように公王となったものは、歴代の公王の記憶の詰まった宝玉から知識を得る事が出来る。特に重要なのが、メルストレイル公国初代公王の知識じゃ。この国の建国王は、いわば、そのすべての家宝の元々の持ち主じゃ。それを5人の妻それぞれに家名を持たせ、その息子たちを選定公にし、家宝として宝具を分け与えたのが、選定公家の始まりじゃ。つまりすべての家宝の扱い方の知識を得る事が出来る。ただその知識が合っても、初代以外、家宝を扱えるものがおらなんだ。だからその知識も宝の持ち腐れだったんじゃが、のう、フィアナ」


そこでダンはあえて、ハルではなくフィアナに話を振る。


「フフフッ、お爺様、そう言えば、私、家宝を使いこなせそうな方を存じ上げてますわ」


すると、ハルものそこで得心がいったのか、笑顔を見せて言う。


「ダン様、フィアナお姉様、私も思い当りました。初代以来の英雄と呼ばれるような方に心当たりがあります」


するとシンは苦虫を噛したような表情を見せて、苦しげに言う。


「あの、俺は公王になる気は今のところないのですが」


「ああ構わん、初代も公王になったのは、英雄となってからじゃからの。ちなみに、あまりに名声が立ちすぎて、断るに断れきれんかったらしいがの」


すると心の中でシンは誓う。なるべく地味に物事を終わらせようと。そしてそんなシンの誓いはリヴィアの一言でより強固なものになる。


「その初代というのは、妻が5人もいたのか?なら、シン、私も妻にしろ。フィアナは当然として、あと3人も枠があるぞ」


「あらリヴィア。私は既に入れてくれてるのね、ありがとう。でも私も含めて、競争よ。まだまだライバルはいるのだから。ねえ?」


そう言ってハルとミリアの方に向く。実際にはフィアナの目は見えていないはずなのに、何だか見透かされている気になり、思わず二人は頬を赤く染める。リヴィアはそんな二人の様子見て、フムと頷く。


「シンを慕う女性は多いのだな。ならなおの事、シンには公王になって貰わねば。私の番が回ってこないかもしれない」


「そもそも、なんで公王になると妻5名が確定なんだか……」


シンは溜息と共に、がっくりと項垂れた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


シグルドがガリアをたって数週間がたった。冬の行軍である。元々間者でもあったシグルドは冬の行軍にも慣れているらしいが、やはり時間はかかるようで、シン達はその間はガリアの町で束の間の休息を取っていた。シンは、ニナと遊んだり、リヴィアを伴って、雪かきを手伝ったり、ミリアの家事や、ハルの勉強に付き合ったりと、のんびりとした時間を過ごしている。そして夕食も取り終え、夜の時間は大抵、暖炉の前でフィアナと一緒にガリアの図書室の書物を読みふけっていた。


「今まで気にしてなかったけど、意外に竜に関する記述はあるんだな」


シンは少し、感心した口調でフィーに言う。元々、金の竜王と邪竜に関する記述は多い。前者は南方諸国の文献に多く出てきており、その子孫がやはり、類まれな力を持っていた。恐らく金の竜王の盟約者なのだろうか。ここ何百年もその者の存在は確認できていないが、過去何度もそういった存在の記載があった。邪竜に関しては、帝国より以北の文献に散見される。大抵は流浪の冒険者とセットでの記載であり、流浪の冒険者が倒す、封印したと記述はまちまちである。中には金の竜王により、神器を授かったとか、神自らにその宝具を譲り受けたなど、もはや文献というよりは物語に近いものが多い。


「少なくはありますが、白、赤、黄の竜の文献もありました。紫・緑・青に関しては、文献にも出てきませんでしたが」


「リヴィアの話だと、青の一族はもう随分前に廃れているらしいね。白のように一族が残って血を守っている方が稀らしいから。ただ血はどこかしらに受け継がれて、代々の盟約者が無くなると、次のものに引き継がれるとか。一族が残っているとその一族の中で現れる事が多いみたいだから」


フィアナはその話を聞いて、少しだけ考え込む。この世界にいる竜の盟約者。竜は何故、この世界に干渉するのだろう。なんの為に盟約者をたててまで、この世界に顕現するのだろう。まあ、今の段階では、知識も情報も足らなすぎる。余り考えても答えは出ないだろう。フィアナは何故だか、その内すべてがわかるような気がして、今はその時ではないのだと思った。


「シン、シンはやはり竜の盟約者や暗黒の竜、邪竜と戦うのは怖い?」


春になれば、シンは激しい戦いの中に身を置かなくてはならない。フィアナはふと思って、そんな事を聞いてみる。シンは何だか不思議そうな表情をして、フィアナに答える。


「怖くないよ。正直、それどころじゃないと思うし。むしろ、大切なものを失う方が怖い。だから、相手は何でもいいんだ。どんなに強い、恐ろしい相手でも、俺が頑張ることで、大切なものを守れるのであれば、頑張るだけだよ」


「フフフッ、シンらしい。普通は邪竜とか聞いたら、恐怖を感じるのに。なら、私はシンに守って貰うだけ。私を守る事が、シンの強さに繋がるなら、私はそうする。勿論、私だけじゃない。シンを慕うすべての人を守る事、その事でシンはもっと強くなる」


シンはその言葉に苦笑しながらも、決意をにじませる。


「本当にフィーは厳しいな。でもかわいい奥さんの為に頑張るよ。ああ、かわいい娘もできたんだっけ」


シンはそう言ってフィアナの膝枕で寝ているニナの頭を優しく撫でてあげる。


「はい、旦那様には精一杯頑張って貰って、私やニナ、セシルお姉様や、アカネさん、たくさんの人たちを幸せにして貰わなきゃいけないんですから」


フィアナはそう言って甘えるように、シンの肩に頭を乗せる。シンもまた寒いガリアの冬に負けないようにその身を寄せて、二人はそっとキスをした。


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