第7話 捕らわれた二人の状況
セシルが目を覚ましたのは、宿屋のベッドではなく、天蓋の付いた煌びやかなベッドの上だった。
宿屋の部屋に何者かが侵入し、メルが声を上げたのまでは覚えている。ただその後、記憶がプッツリと途切れている。まず身なりを確認すると、寝た時のままであることに安心する。それから部屋の中を見回して、部屋にはほかに人がいない事を確認すると、今度はドアの外に意識を集中する。どうやら人がいるらしく、恐らく見張りだと目星をつける。
そしてその事からおそらく自分は攫われたのだと結論づける。一体誰が何の為に?思考の溝に落ちそうになるのを振り払い、現状確認を優先する。
そしてその時、同じ部屋にいたもう一人の女性の事に漸く思い至る。メルさん。今、この部屋に連れられていない事を見ると、可能性は2つ。その場において行かれたか、別室に捕らわれているかである。
前者であれば問題はない。ただ、後者であれば、少々状況が異なる。今この部屋を見る限り、相手は私の身分を知っていて遇している。
ただメルの場合は、その限りではない。最悪、野盗にあった時と同じ事以上の事をされる可能性は充分にあった。
「何とかしないと」
セシルは焦る心のうちを押し殺し、まず自分にできる手札の数を考え始めた。
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メルが目を覚ますと部屋には男が二人、ニヤケた顔でこちらを見てた。
「おっ、漸く目を覚ましたな」
その内の背の低い方の男がメルが目を覚ましたのに気付いたのか、話かけてくる。メルは混乱する頭で何がどうしたのかを考えよとするが、全然、頭が回らない。
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体を起こそうとしたとき、始めて自分の手が縛られ、ベットに括り付けられているのに気付く。
『何、何なのっ、これ』
自分の身が自由でない事に混乱する頭は更に混乱を極め、メルはたまらず声を上げる。
「あなたたちは誰?何、ここは何処なのっ」
メルは頭だけをお越し、二人の男を睨みつける。男たちはニヤケ顔を一層緩ませ、舌なめずりをすると心底愉快そうに話出す。
「お嬢ちゃん、状況が理解できて無いようだな。あんたはもう一人の嬢ちゃんと一緒に攫われたのさ。まぁもう一人の嬢ちゃんはなんか色々利用価値があるみたいだからって言って、依頼主が連れて行っちまったがな。でも今回の依頼主は気前が良いから、嬢ちゃんがここにいるってわけだ」
「あんた達、私は冒険者ギルドの人間よ。私に何かあったら、冒険者ギルドがタダじゃ済まさないわ」
「あーそっかそっか。あんたは冒険者ギルドの人間か。ただ、残念だな。たかがギルド如きじゃ、どうにもなんねーんだよ。うちの依頼主はもっと上の人間だからな」
メルのささやかな反抗も、相手は全く動じない。むしろ気丈な態度がいつまで続くか楽しんでいる風である。
メルにとって今この場での唯一の希望は、冒険者ギルドの介入であるが、それが通じない相手となると依頼主は貴族なのかもしれない。
「何それ、依頼主は貴族だとでも言いたいの?こんな人を攫って、人を縛りつけといて」
「さー、どうだかな。まぁ俺らの依頼主が誰だろうが、嬢ちゃんには関係ない。嬢ちゃんはこれから俺たちのおもちゃになるんだからな」
そう言って男は話を煙に巻くと、メルの方に近づいてくる。
「ひっ、止めなさい。近づかないで」
メルは身の危険を感じ、思わず、寝転がった状態で足を屈めると寝着のスカートがめくれ、白い足が露わになる。
「ひゅーっ、良いね。お嬢ちゃん。いい脚してんねぇ」
男はますます興奮した面持ちでメルの肌蹴た足を見ると、その足に手を伸ばそうとする。
メルは抵抗するように足をバタつかせると、男は一歩下がり、またおどけたようにメルに話かける。
「おっと、良いね、良いね。まあ夜は長いんだ、じっくり楽しもうじゃないの、ねえ、お嬢ちゃん」
メルは男の愉悦に歪んだ顔を見て、更に恐怖と絶望を感じるのだった。