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亡国の公子と金と銀の姫君  作者: あぐにゅん
第5章 北の地での決断
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第51話 家宝の行方

怪盗シンが思ったより立ち回らなかったため、章の盛り上がりがないまま、次の章となりそうです。

結局その日、シンはキリクと夜中まで語り合う。シンとキリクお互いのこれまでの経緯、帝国の現状、今後の展望など、話す話題には事かかなかった。ただシンがこれから何をするかに関しては、「お前のしたいようにしろ」の一言だけで、シンの意思を尊重してくれたことが印象的だった。そして春になれば、またマイセンにくること、その時にはフィアナを連れてくることも約束し、翌日の朝にシンはマイセンを発った。


その後は予定通りアルナスの隠れ里により、遺骨の事をガースに話をする。


「まさかキリク様がマイセンにいて、兄上の遺骨を預かってくれていたとは」


「はい、俺も正直、父の亡骸に関しては諦めていました。あんなところでキリク叔父さんに再会して、遺骨を預けてもらえるとは思ってもみませんでした」


ガースはユーリの遺骨の入った箱を眺めながら、うんうんと感慨深げに頷いている。シンはそこで遺骨の扱いについてどうするかをガースに相談する。


「ところでガース叔父さん、父の遺骨なんですが…」


「ん?姉上の墓に入れたいんだろ。俺もそれでいいと思うぞ。領都にある一族の墓に入れても兄上は喜ばんだろう。今あの辺は焼け野原だしな。それならば、姉上と一緒の墓のの方が兄上は喜ぶ。姉上はうるさがるかもしれんがな」


「キリク叔父さんにも同じ事を言われましたが、母さんはきっと喜びますよ。まあ俺も父が同じ墓に入ったら、うるさそうだとは思いますが」


「ハハハッ、そうだろう。ならそれで決まりだな。それはそうと冬の間、アカネをガリアに預けてしまって大丈夫なのか?」


ガースは遺骨の件が片付くと今度は父親の顔を見せて、娘の事を聞いてくる。


「師匠には許可はとりました。ですので、来るのは構わないのですが、ガース叔父さんはアカネがいなくて大丈夫ですか?」


「まあ親としては、娘が惚れてる男についていきたいというのを止める理由はないが、ほらお前、フィアナがいるだろう」


「フィアナに関しては、問題ないみたいですね。むしろ喜んでいるくらいです」


「ん?お前フィアナに惚れているんじゃないのか?」


「大事ですよ。家族以外で一番大切にしているかもしれません。ただ、今はまだ俺自身の事で手一杯なので、他の事には手が回らないというのが正直なところです」


「ならアカネは脈なしか?」


シンはその率直な物言いに、思わず苦笑し、


「アカネは正直、家族ですからね。それこそ小さい頃から姉弟のように過ごしてきましたから。これから自分の気持ちがどうなるかは今は何とも言えないです」


「まあそうか。アカネに関しては、成るようになると思っておくよ。ただ春になったら返してくれ。何分人手不足だ。人手はいくらあっても困らんからな」


「ええ、アカネもそこはわきまえているみたいですね。ずっと引っ付いていようとは思っていないみたいです」


「ならいい。まあアカネの事はよろしく頼む。跳ね返りだが、根はやさしい娘だ」


「ええ、よく知ってますよ。任されましたので、安心してください」


ガースはそう言って頭をさげると、シンは少しだけギョッとするが、すぐに優しい笑顔でそう返す。すると旅支度を済ませてきたアカネが部屋に入り、二人の光景を見て察したのか、憎まれ口をきく。


「もう、お父さんちょっとやめてよ。自分の事は自分でできます。子供じゃないんだからっ」


ガースはその娘の姿を見て、溜息をつく。


「アカネ、お前、そんな跳ねっ返りじゃフィアナに勝てないぞ。少しは素直になったらどうだ」


「うるさい、余計なお世話よ。別にフィアナなんて目じゃないわっ」


シンはそんな父娘の会話を微笑ましく見ていたが、ガースに「元はお前が原因だっ」と言われて、その笑顔を引き攣らせた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「アカネ、魔力はまだ大丈夫か?」


「うーん、まだ大丈夫だと思う。でももう少ししたら休憩した方がいいかも」


「わかった。休憩できそうな場所を見つけたら、一旦休憩しよう」


シンとアカネはアルナスの隠れ里を出発した後、身体強化で脚力を強化し、高速で移動していた。アカネは元々あんまり魔力量の多い人間ではなかったが、シンがキリクに魔力操作を教えてもらった時に、一緒になって教えてもらっていた。それから比較的真面目に修行を継続していたのか、魔力量はそれなりにあり、シンには遠く及ばないものの、身体強化で脚力を強化して半日程度は走りきる事が出来る程度には魔力を保有している。なので単独で高速移動をしてもらい、マメに休憩を取る事で、ガリアまでの道のりをこなそうと考えていた。


暫くして周囲に遮蔽物の無い開けた場所に出ると、一旦そこで休憩をする。ガリアはアルナスよりも北にある為、日中のまだ日がある天気なのにもかかわらず、大分空気は冷え込んでいる。シンは周囲で薪になる木々を集めると、すぐさま火を起こす。走っているうちはまだいいが、汗もかく為、休憩するとすぐ冷える。シンは焚火の上で湯を沸かし、そのお湯でお茶を用意すると、アカネにお茶を渡しながら、アカネに言う。


「アカネが身体強化をできて良かったよ。歩きだったら、タイミング的に雪が降り始めるところだった」


「フフフッ、褒めてくれていいわよ。フィアナだったらついてこれないでしょ」


アカネは少しだけ胸を張って、フィアナにできない事が出来る自分の自慢をする。シンは思わず苦笑して口を滑らす。


「確かにフィアナには無理だな。まあ目が見えないから走らせたら危ないし、それだったら抱きかかえて走った方が早いしね」


「えっ、抱きかかえて?どういう事?」


「いや、だからフィオナの場合は、目が見えないから走らせるわけにはいかないだろ。だから早く移動したいなら抱きかかえて移動した方が、効率的だという話だけど」


シンが説明を重ねれば重ねるほど、アカネの目が剣呑な雰囲気になっていく。


「ちなみにフィオナを抱きかかえて移動したことはあるの?」


「ん?二、三回、いや、もっとあるか」


シンは思わずそうこぼす。するとアカネはますます剣呑な雰囲気を醸し出す。


「私は一緒に走って、フィアナは抱っこなんだ。ふーん、そうなんだ」


シンはここに至ってようやく自分の悪手に気付く。ただし、ここで失策を重ねる。


「いや、フィアナはしょうがないだろ?目が見えないんだから。アカネは魔力で身体強化もできるし、抱っこの必要はないだろ?」


ここでアカネは不満を爆発させる。


「ずるい、私も抱っこされたい。フィアナが抱っこされるのはわかるけど、それでも私もしてもらいたいの。シンのバカ」


完全にご立腹である。シンは仕方がなく、妥協案を提示する。


「はぁ、なら少しだけなら抱っこで移動してあげるけど、ずっとは駄目だぞ。アカネは走れるんだからな。その方が速いんだし」


「ほんとにいいの?」


「その代りテレるのは止めてくれ。フィアナは嬉しそうにするけど、テレはしないからこっちも抱っこしやすいんだ。テレられると変なところに力が入って運びずらいんだ」


結局、アカネはシンに抱っこされると、顔を真っ赤にしてテレまくる。そして程なくシンから怒られて、あっさりと抱っこを解除されたのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


二人がガリアに着いたのは、雪がチラつき始めた頃だった。何とか冬に入る前にガリアにはつけた。ここから春までの冬は深く、長い。その前にガリアに戻れたことにシンは安堵するが、と同時に、この冬をどれだけの人が乗り越えられるかと思うと、忸怩たる思いにとらわれる。シンはガリアの領都に着くと、真っ先にダンに面会を求める。シンは直ぐにダンの元へ通されるとそこにはフィアナの姿もあった。


「お帰りなさい、シン。それといらっしゃい、アカネさん」


フィアナはシンの帰還に気付いて先回りをしていたのだろう、ドアを開けた途端にシンに抱きついてそう挨拶をしてくる。


「だだいま、フィアナ。不在の間は大丈夫だったかい?」


「ええ、ミリアさんが世話をしてくれたので、なに不自由なく。お爺様にもいろんなお話を聞かせていただきました」


「それは良かった。っと、師匠。ただ今戻りました」


「なんじゃ、気付いておったか。てっきり、フィアナに気を取られて気付いていないのかと思ったわい」


ニヤニヤしながらシンをからかうダンに思わず苦笑し、素直に謝罪する。


「すいません、御挨拶が遅れました。それとお話をしていたアカネを紹介します」


アカネはアカネで目の前でいちゃつき始めた二人を羨ましそうに見ていたが、シンに話を振られて、慌てて挨拶をする。


「あっ、すいません、初めまして。アルナスのガースの娘でアカネ・アルナスと申します。冬の間、お世話になりますが、よろしくお願いします」


「おっ、お前さんがフィアナのライバルじゃな。ガリアの前領主でシンの祖父でもあるダン・ガリアだ。ガースとも旧知の仲じゃ。まあ冬の間は余りできる事も少ないが、のんびりするといい」


「はい、お気遣いいただきありがとうございます」


ダンは鷹揚に言葉を返すと、アカネは礼儀正しく頭をさげる。その後、四人は応接の椅子に腰を掛けるのだが、シンの両隣りにフィアナとアカネが座り、その正面にダンが座るとダンのニヤニヤが止まらない。


「シン、そう言うのを両手に花というんじゃぞ」


「師匠、今回真面目なご報告が多数あるのですが、そこから始めますか?」


「フンッ、別にこれから時間は一杯あるからの。まあかわいい孫をあまり苛めても可哀そうだ。どれ真面目な報告を聞こう」


シンは少しだけほっとすると、胸元にしまっていた一つの玉を出す。


「これがご依頼をいただいていた、王の証し「王玉」になります」


「おお、持ってきてくれたか。これで家宝をそろえれば、公王を誕生させる事が出来る」


現在、確認できる家宝はシンの宝刀とガリアの家宝、医のヘスティの家宝の3つ。魔法のレーニアと技のニルスの家宝は帝国に取られている。どのみち帝国側にある家宝の奪取は必須となるが、逆にそれがあれば、公王を誕生させる事が出来るのだ。


「そうなると帝国側にある家宝と医のヘスティの家宝も必要になりますね」


「医のヘスティの方は、既に話を付けてある。王玉があれば、こちらに家宝を預けるそうじゃ。問題は帝国の奴じゃな」


「今、帝国のどこにあるかお判りになるのですか?」


「確証はないが、帝都に行けば所在は判明するじゃろう。何やら帝都できな臭い動きをしているそうじゃからの」


確かに帝都であれば、それなりに情報を得る事は可能だろう。帝国は王国に比べると専制の度合いが高い。となれば、帝都に情報が集まるの当然ではある。問題は次の言葉である。


「きな臭い動きですか?」


「ああ、何やら皇帝は家宝を躍起になって探しているたしい。それに加えて、この国の遺物・遺跡を徹底的に調査させておる。何の目的に何をしているのかはわからんがの」


「遺物・遺跡ですか?そう言えば、王城地下の場所も古代遺跡の跡でしたよね」


「公国建国以前の遺跡じゃな。それこそ今ではお伽話になっているような、実際にあったかもわからんようなものじゃが」


そこでようやくフィアナが会話に口をはさむ。


「お伽話というと流浪の冒険者が黒い邪竜を倒すお話ですか?」


「あっ、それなら私も知っているわ。どこから来たのか分からない流浪の冒険者の話でしょ」


そこでアカネも対抗するように、言葉を差し込む。


「そうじゃ、それ以外にも金の竜王の伝説などが有名じゃな」


「金の竜王の話なら知っています」


「ああ、知っておったか。金の竜王の話は、帝国より南部に広まっている話じゃからの」


フィアナ知っている話のルーツがカストレイア以南によくある話と聞いて、少し驚く。


「すいません、金の竜王の伝説はカストレイア王城の図書室に書物がったので、知っていましたが、そのルーツまでは知りませんでした」


「なに余程の本好きでなければ、知らぬのは致し方あるまい。ちなみに北方諸国では別の竜が有名だがの」


「別の竜ですか?」


「師匠、話が大分脱線しました。そろそろ話を戻しましょう。帝国がきな臭い動きをしているのはわかりました。では誰が、帝都に行って探ってくる、あわよくば他の家宝を持ってくるのでしょうか?」


するとダンは再びニヤニヤしながら、シンを見て言う。


「この国から秘密裡に帝国の中枢、帝都に入り込むには、正面からでは無理じゃろう。となると魔の森でも通っていかねばならん。わしの知る限り、魔の森に入って帰ってこれそうな人物は一人しか心当たりが無いのう」


そこでフィアナもポンと手を叩き、その言葉に同意する。


「ああ、私も一人心当たりがあります。なんでもその方は15歳という若さで北方諸国からカストレイア王国に一ヶ月掛からずに踏破されたとか。ですよね、お爺様」


シンは二人の顔を見比べながら、大きく溜息をつく。本当にいつの間にこんなに仲が良くなったのだろう、そう思いながら、春にシンの帝都行きが決まった。


最近地味にブクマが増えてきました。評価も合わせてお願いします。200pt、100ブクマ目指して頑張ります!

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