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亡国の公子と金と銀の姫君  作者: あぐにゅん
第4章 王都争乱
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第36話 王宮強襲

本当は三人娘、ピンチの予定が思ったよりも戦力過多でした…。

シンと近衛隊の面々は、フロイセン公爵家邸宅前まで来ていた。ただその光景にやや唖然とする。城門にこそ、目が虚ろな衛兵が控えているが、中からは人の気配がない。シンは魔力を練って、その衛兵たちの体に障るとパチッとした感覚が、触れた部分に走ると衛兵たちの目に光が宿る。


「おい、お前たち。王宮の近衛隊のものだ。屋敷内に立ち入るが問題ないな」


「あれっ、俺たち何でこんな所に?えっ近衛隊の方々ですか?いやどうなってるんでしょう」


全く要領を得ない兵士達を無視して、屋敷内に立ち入る。やはり屋敷内には人の気配がない。侍女が何人か衛兵たちと同じような状態でいたが、洗脳を解除しても、有効な情報は上がってこない。


「ライアスさん、これは一体どういう事でしょう?」


シンは近衛隊隊長でナタリアの父でもあるライアスに意見を求める。


「問題は奴らがどこへ行ったかだが」


二人がそんな会話をしている時、近衛隊の一人がライアスに報告を上げる。


「ライアス隊長、フロイセン公爵夫人を発見しました。随分憔悴されているようですが、命に別状はありません」


「今どこにいる?」


「2階にある客間にて休んでいただいております」


シンとライアス二人は急いで2階に上がると夫人のいる客間に入る。夫人はシンの顔を見て、少しだけ安堵の表情を見せると、二人に向って、知っている事を話出す。


「英雄様、あなたは確か近衛の…ライアス様でしたか。お二方には急ぎお知らせしあければいけない事がございます。昨日までこの家にいました集団が、まとめて王宮へ向かいました」


「王宮へですか?人数はどの位でしょうか?」


ライアスは多少の人数でどうこうなるとは思っていないのか、敵戦力の確認をする。


「詳しい数まではわかりませんが、恐らく50名はくだらないかと」


「うむ、そこそこの数ですな。ただ王宮へはその程度の数では届きますまい。そこまでご心配される程では」


人数を聞いて、ライアスは安心をするが、シンは逆に嫌な予感を覚える。


「フロイセン公爵夫人、どこから王宮へ入るかご存知ですか?」


「私は詳しい場所までは存じあげません。ただ、主人は王城に直接続く隠し通路をご存知です。恐らくそこから侵入されるでしょう」


「なっ。隠し通路ですか?そんなものが王宮に?」


ライアスは驚愕の声を上げる。近衛でも知らない情報らしい。シンは嫌な予感が的中して、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。


「ライアスさん、これは非常に不味い状況です。近衛の皆さんがここにいる以上、王城内に兵はいても王宮内の手勢は手薄なのでは?」


「シン殿の仰る通り。しかも王族を人質にでも取られたら、王城内の兵たちも手が出せなくなります。恐らく王宮を制圧したら、城門を閉じて、外部からの侵入も阻止するのでしょう。これはまずい状況です」


ライアスは焦燥をにじませて、危機感を募らせる。シンは正直迷ったが、背に腹は代えられない。


「ライアスさん、私に王宮へ入れるアテがあります。今から馬を走らせて正面から行っても間に合わない可能性があります。ならば確実に入れる手段を選ぶのも手だと思いますが、どうしますか?」


「今なぜその道をシン殿が知っているのかを聞くのは野暮でしょうなあ。非常にありがたい話です。すぐそこへ向かいましょう」


ライアスは即断し、直ぐに近衛の舞台を集めるとシンを先頭に、一路王家の墓地へ急行した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「探せ〜、国王を、王族を探し出せ。王女以外は殺しても構わん。抵抗するものは切り捨てろ。そうで無いものは縛り上げろ」


王宮内では今、怒号が響き渡っている。いづこともなく現れた武装している集団が王宮内に溢れ出したのだ。まさに強襲である。王宮内の近衛兵は最小限の人員しか配置されていない。しかも隊長であるライアスは出払っており、指揮者不在の状況だった。そうなると統率された動きは取れず、各個それぞれの力量で打破するしか無いが、虚を突かれ浮き足立った状況では、それすらも叶わない。王宮内は徐々に制圧を余儀なくされていく。


王の周囲には三名の近衛兵とアレク王子、宰相のテオドールの六名しかいない。近衛で付き従う内の一人は王立学院で講師を務めるニックだった。ニックは王含めた三名の要人に話かける。


「恐れながら申し上げます。このままここにいても救援が間に合うかどうかわかりません。我ら三名で血路を開きますので、どうか王宮外へお逃げください」


王は瞑目して語らず、代わりに宰相テオドールが声を上げる。


「そなたら三名でこの場抜けられるか?」


「現状は完全に虚を突かれての事。注意をしていれば、一個人の武勇で劣る事はございません。ただし多勢に無勢、我らは命に代えてでもお守りする所存です」


王はそこで目を開き、一同に対し指示を出す。


「ならばそなたらにこの命を預けよう。アレク、テオドール、そなたらもそれで良いな」


「ハハッ」


一同はその場で平服して、王に付き従うことを決めた。



セシルはその頃後宮の自室にいた。流石にその日の朝まで忙しなく動いていたので、急速ににあてていたのである。部屋の中には二名、気心知れる友人達がいた。一人はフロイセン公爵令嬢、アイシャ。彼女もまた朝までセシルとともにいたので、今は椅子に腰掛け、のんびりとお茶を啜っている。もう一人は、ナタリアが護衛も兼ねて、セシルに付いている。その姿は甲冑こそ付けていないが、近衛の正装をしており護衛として帯剣まで許可されていた。そのナタリアが、雑談交じりにアイシャの状況を聞き、眉を潜めている。


「そうですか。エリクがいましたか」


ナタリアはエリクと少なからず因縁がある。ナタリアとしては、捕まえなければいけなかった相手であり、そのチャンスも実際にあった。だからこそ、その名を聞くと悔しい気持ちが先に立つ。


「私は直接の面識がありませんので、あくまで可能性ではありますが」


「でも何故アイシャは洗脳にかけられなかったのかしら?」


セシルはふと思った疑問を口に出す。確かに機会はあったろう。手駒として必要無かったか、別の利用価値を見出したか。前者であれば問題無いが、後者であれば、どんな手段が…?、いややめよう。セシルは思考の渦に飲まれそうになるのを押しとどめる。折角休憩を取っているのだ。少しくらい難しい話は抜きにしたい。そんなセシルの気持ちを察したのか、アイシャはばっさりと切り捨てる。


「そんなことを考えても、答えは出ませんわ。それよりも…」


そう言ってアイシャが言葉を紡ごうとした時、王宮より怒声や魔法の爆発音が響きわたる。刹那、三人の顔には緊張が走る。


「今の音、王宮から?だとすると王宮が襲われているの?」


セシルが思わず声を上げる。ナタリアは窓の外を眺めて様子を伺って、それに答える。


「どうやら王宮だけでは無いようです。こちらにも五名ほど、武装した男達が来ています」


「下には近衛の兵とかはいないのよね?」


「はい、今はフロイセン公爵家の捜索の為、王宮含め近衛兵は出払っています」


セシルとナタリアは現状を確認し合いながら、状況判断を行なっていく。そこでその判断が一番早かったアイシャが、結論づける。


「取り敢えず悩むのは、今からくる五名の不届き者をどうにかしてからではなくて。何かあっては、その先も考えられませんわ」


そう言って自らは、魔法をいつでも使えるように、魔力を高めてる。セシルとナタリアはそれを見て、思わず笑いあった後、表情を引き締めて、臨戦態勢を整える。


すると不意に部屋のドアが開け放たれると五人の襲撃者たちが、歓喜の声と共に現れる。


「いやっほーぅ。どうやらここは当たりの様だ。若い女ばかりだ」


「後のどれかが王女様って訳か。確か金髪…おおっと、確かに当たりだな」


三人は下品な会話に閉口して目配せをするとまず後方にいた、アイシャとセシルが魔法を放つ。


「ファイアボール」

「アクアカッター」


それぞれがそれぞれの得意魔法を初撃で打ち当て、まず二名を撃退する。ナタリアは全身を身体強化し、手前にいる男に剣の平を使ってその後方にいる男目掛けて弾き飛ばすと、残る一名目掛けて斬りかかる。男は剣で応戦しようとするも、完全に後手を踏んでおり、ナタリアに一刀を持って斬り伏せられる。残りの二名は、完全に戦意を喪失し、即座に逃げ出そうとするが、手前の男は間に合わず、背後からナタリアに突き殺される。


「逃げた一名を仕留めてきます」


ナタリアは、そう言って部屋の外へでようとしたところで、階下から断末魔が響きわたる。そのまま慌てて下に行ったところ、思わぬ人物と巡り合う。


「シン先生!?」


逃げた襲撃者を仕留めたのは、フロイセン公爵邸宅に行った筈のシンだった。


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