第2話 野党の襲撃と少女の救出
ヒロインの一人を助けます。派手な立ちまわりではないですが、颯爽と助けます。
「護衛は4人だけだ。さっさと切り伏せろ。魔術師、爆炎魔法だ。蹴散らせ」
馬車の周囲を囲む野盗らしき集団のリーダーと思しき男が、怒声を響かせる。その怒声に呼応するように、後方にいた魔術師から火球が打ち付けられるとその周囲にいた護衛が吹き飛ばされる。
「ぐわぁー」
直撃を受けた護衛は火ダルマになりながら、悲鳴と共に地面を転げまわる。リーダーらしき男はその転げまわる騎士の喉元に剣を突き刺してとどめを刺す。それ以外の護衛達も多勢に無勢で一人、また一人と倒されていく。暫くすると野党達のてにより、完全に馬車の周囲が沈黙し、護衛の死骸と馬車を取り囲む野盗だけが残る。
「さて、後は馬車の中身だけ。いいか。相手は王族。くれぐれも粗相のないようにな」
そう言ってニヤケ顔で部下に声をかけ、馬車の扉の前に立たせるとそのドアに手をかけて、扉を開けさせる。
「ファイアボール」
扉を開けたと同時に火球が飛び出し、扉の目の前にいた野盗が吹き飛ばされる。それと同時に一人の少女が扉から飛び出し、野盗の合間を走り抜ける。
「しまった、王女だ。逃がすな、取り押さえろ」
野盗たちは混乱しながらも、少女が走った方へ追いかけ始める。
「ファイアボール」
再び少女から放たれる火球が野盗の周囲で爆散する。
「あっちだ、逃がすな。追え、所詮、女一人だ。あわてずに追え」
リーダーらしき男は苛立ちを隠しもせずに、部下共を叱咤する。
「矢を使え、ただし狙うのは手足だけだ。殺すな、絶対に生け捕りにしろ」
そう指示を出すと矢をつがえた部下が逃げた少女に向けて、矢を放つ。
「きゃっ」
矢は少女に右上腕部をかすり、少女はその場に倒れ込む。上腕部からは血がにじみ出て、少女は顔をしかめる。すると少女の周囲を野盗が3人、4人と取り囲むように立ちはだかり、その先頭にリーダーらしき男があらわれる。
「随分手間を駆けさせてくれたな。おかけで部下が何人か大怪我を負っちまった」
少女は毅然とした表情でそのリーダーらしき男を睨みつけると、
「あなたたちは何者?私が王女だと知っていて、襲ってきてるの?」
「俺たちはただの野盗でさあ。偶々襲った馬車が王族の姫様のものだっただけの事。それ以上でもそれ以下でもないね」
「その野盗とやらが、生かして私を捉えてどうしようとするの?身ぐるみでも剥いで、殺せばいいでしょう」
「おや、おや、お姫様は身ぐるみ剥がれて殺されることがお望みで。身ぐるみ剥ぐのはやぶさかじゃないが、野盗に捕まった女は奴隷に落とされて、俺らの慰みになるのが相場ってもんだぜ」
リーダーらしき男は、卑下た笑みを浮かべると少女の服をひん剥こうと手を伸ばす。少女はその手を払いのけると腰に差していた短剣を引き抜いて、自分の喉元にあてて、自害を試みる。しかし、その手は後ろにいた野盗に捕まれ、反対の手と共に上に持ち上げられる。
「痛っ、離しなさい、嫌、やめなさい」
少女は上に持ち上げられた両手を振りほどこうと懸命に身をよじるが、逆に野盗から力を入れられ、痛みから力が抜けていく。リーダーらしき男は今度こそその服に手をかけると力任せにその服を左右に引き裂く。
「いやーっ」
少女は下着があらわになった自分の姿に叫び声を上げる。
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シンは真剣な表情を浮かべて、野党の様子を眺める。
野盗の数は全部で10名。その内2名は後方で魔術師より治癒を受けている。少女を取り囲んでいるのが、4名。その周りで街道の様子を見張っているのが3名である。
ただその3名も少女の事が気になるのか、興奮した面持ちで取り囲んでいる4名の方を見ている。
「さて、どうやって助けるか?」
正面から切り伏せることはやってやれない事は無い。
先にけが人と魔術師を無力化し、見張り3人を切り伏せて、1対4の状態にする事ができれば、相手の力量次第だが、まぁ相手にはなるだろう。その場合は、少なくても離れたところにいる6人を取り囲んでいる4名に気付かれる事なく、処理する必要がある。
ただ、シン自身は、暗殺術に秀でているわけではない為、気付かれずにと言うのは難しい。乱戦になり、少女を人質にされると更に厄介になる。逆に先に4人を処理するのも難しい。少女が捕まっている以上、少女に危害が及ばないとは言えず、むしろ動転して何をしでかすか分からない。
そうなると、相手をどうこうする前に、まず少女の身柄を確保するのが最善の方法だと判断する。現状、少女の身の危険もある。そうして、周囲を見回して、あるものに気付くとシンはニヤリとして、行動を開始するのだった。
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少女の破れた服から見える真っ白な肌は、少しだけ赤みを帯びていて艶めかしさを際立たせ、はだけた胸元や、太腿が野盗たちの欲望を膨らませている。
「さすがは王女殿下。今までさらったどんな女よりもお美しい。嬲った後で、どのようになるか、楽しみでしょうがない」
リーダーらしき男がその手を太腿に這わせ、舌なめずりをする。
少女は固く目を瞑り、羞恥と恐怖、嫌悪様々な感情が心に渦巻くのをじっと我慢する。そして絶望が少女をの身を染めようとするその時、街道から突然、悲鳴が上がる。
「ぐお、何だお前は。うぁあ」
街道にいた3人の見張りや魔術師達が、シンが解き放った馬により蹴散らされいた。
シンが目をつけたのは、野盗たちが騎乗していた馬だった。その馬の繋がれているところに、気付かれないように近づくと、自分が騎乗する馬以外を見張りの野盗に向けて解き放った。
シンはすぐさま馬に騎乗するとまっすぐに少女を取り囲む野盗の方へ駆けつける。そして少女の目の前までくるとその馬の手綱を手前に引き上げ、前脚を大きく振り上げさせ、野盗めがけて振りおろす。
「ウワァッ」
踏みつぶされまいと、野盗たちは転がり逃げる。
「今だ」
そう声を上げると、シンは少女の腰を抱き上げ、ファッと馬上へ引き上げる。
「キャッ」
少女は思わず声を上げるも、シンは気にせず馬首を返し、街道めがけて駆けだず。
「逃がすな、追いかけろ。くそ、馬をさっさと宥めろ。」
後方では野盗たちが怒声を上げている。ただ馬自体も暴れているので思うように行っていない。
「このまま逃げれるところまで行く、しっかり捕まって。」
少女は横座りの為、馬ではなくシンにしがみ付き、シンはそんな少女が馬から振り落とされないように支えながら、速度を上げる。
少しだけ後方の様子を見てみたが、まだ、追ってがくる気配は無い。町が見えるまでは安心はできないが、このままいければ、上手く逃げ切れる。
「助けが遅くなって、ごめん。本当はもう少し早く助けたかったんだけど…」
シンは馬上でシンにしがみ付く少女に向けて、謝罪の言葉をかける。少女はしがみ付く顔を少しだけ上げて、シンの顔を見て、
「いえ、助けていただいただけで、なんて感謝をしたらいいか。あの場にあのままいたら、私は…」
そう言うと言葉を詰まらせ、再びシンの胸に顔を埋め、うっうっと咽び泣く。
「まだ町に着くまでは安心できないけど、このままなら、大丈夫だよ」
シンは背中に手をやって、優しくさすると安心させるように話かける。馬は速度は緩めず、街道を駆け抜ける。
暫くすると胸にしがみ付いていた少女からすぅすぅと寝息がするのが聞こえてくると、シンは少女を落とさないように抱きかかえる手に力を入れて、表情を引き締めるのだった。