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亡国の公子と金と銀の姫君  作者: あぐにゅん
第2章 銀の姫
21/92

第20話大きくなった英雄と銀色の姫<後半>

おまけ的な姉妹の会話を入れたら長くなってしまいました。

これで暫くは金の姫のターンの予定です。

「魔道具のお店に行くの?」


フィーはコテンッと首を傾げて聞いてくる。


「うん?ああ、ちょっと思いついた事があってな。それよりフィー、口にタレがついてるぞ」


「ふぇっ」


シンは綺麗なハンカチを取り出して、フィーの口を拭ってやると、そのまま自分の口周りも拭く。


「なんだか、フィー、子供みたいだな」


自分の事は棚に上げて、そんな感想をシンが言うと、少し顔を赤らめて、フィーは拗ねた声を出す。


「あんな風に串をそのまま食べるのはまだ2回目だから、しょうがないの。シンのいじわる」


シンはその言い分も子供っぽいんだが…と思いつつそれは声にしない。更に拗ねそうだ。


そしてそうこうするうちに、串屋の主人が言っていた赤い屋根が見えてくる。シンはそのまま、その扉を開いて中に声をかける。


「こんにちわ。店の人はいますか?」


すると店の奥から、人の良さそうな初老の女性が現れる。女店主ははいはい、と言いながら店のカウンターに立つとシンとフィーを一目見た後、穏やかな口調で話かけてくる。


「あら、随分の可愛らしいお嬢さんだねえ。品物をお探しなのはその恋人さんかい?どんなものが欲しいんだい?」


なにやら恋人と言われてフィーは頬を赤らめて嬉しそうにしている。シンはそれに反応したら、面倒なことになる気がしたので、そこは完全に無視をして、欲しいものを伝える。


「魔力を込められる素材が欲しいんだけど、何かおいてないかな」


「魔力が込められているもの、ではなくてかい?」


「ああ、魔力はこれから込めるから、込められているものはいらない。素材が欲しいんだ」


女店主はちょっと待ってなと言って、店の奥に引っ込んで行く。その間、シンとフィーは店の中を物色していると程なく女店主が戻ってくる。


「今うちの店で提供できるのは、この辺の魔石と、このミスリル製のチェーンくらいかね。もっと大きいものが欲しいんであれば、知り合いの鍛冶屋も紹介できるが」


そう言って品を並べる。シンは並べられた魔石を見ながら女店主に質問する。


「この魔石は何の核だい?できるだけ魔力を込められるようにしたいんだけど」


「できるだけ多く魔力を込めるっていう事であれば、その銀色に見える魔石が銀狼の核の魔石だから、込められる魔力量は相当なものだよ。ただ値は張るけどね」


シンは言われた白銀の魔石を手に取って検分する。そしてそれをフィーに渡して確認する。


「フィー、この魔石に触れて嫌な感じはしないかい?」


フィーはそれに素直に答える


「はい、別に嫌な感じはしないです」


シンは今度は女店主に向き直り、


「ちなみに支払は、冒険者ギルドのギルドカードでできるかい?できるのであれば、その魔石とミスリルのチェーンを貰おう。ちなみに工房とかあれば、少しだけ借りたいんだけどあるかな?」


「んっ?あんた冒険者かい?綺麗な身なりをしているから、てっきり貴族様か何かだと思ったよ。結構値が張るけど、お代は大丈夫なんかい?」


女店主は冒険者だという事に驚き、支払の心配をし始める。


「結局それはいくらなんだい?」


「金貨10枚。それ以上は安くならないよ」


「ああ、それくらいなら問題ない。で、ギルドカードの清算は大丈夫かい?」


シンのギルドカードには、先日の白金貨1枚分とそれ以前に稼いでいる冒険者報酬や先日セシルを助けた際にギルドと軍から出ている報酬もあり、結構な金額が入っている。シンは普段から軽装の為、装備類にもあまり金がかからないので正直使い道がないのだ。その土地に居住を構えるのであれば、家を買うという選択肢もあるが、今のところそんな予定もない。


「ああ支払いはできるよ。じゃあそのギルドカードを貸しておくれ」


女店主はカードを借りて特殊な装置にかざすと、清算が完了したことを教えてくれる。この世界において身分証は、お金を預け、引き出し、支払い等で使える。ただ、すべての店ではなく、ある程度高価なものを取り扱う店でしか使えない為、大抵は、銀貨や銅貨、まれに金貨が使用される。特殊な装置は店舗と身分証を発行するギルド等に置かれており、相互で魔力を通して通じているらしい。


「あらま、本当に清算できてしまったね。毎度あり…と、それと工房だったね。早速それに魔力を込めるのかい?」


女店主は少し疑って申し訳なかったという顔をして、工房の用途を聞いてくる。シンはそれを気にした素振りも見せず、


「ああ、それとできれば、そのチェーンに付けてネックレスにしたいんだ。」


「なら、石をチェーンにつける細工は私がしてあげるよ。そちらのお嬢さんへのプレゼントだろ?男のあんたよりかは、綺麗なものをこしらえてあげるよ。つける人も、つけるものも素材は最高級だからね。腕が鳴るよ」


女店主は張り切ってこっちについてきなと言って、奥の工房にシンとフィーを案内する。まず先に女店主がネックレスを完成させる。魔石は少しだけ加工をして、綺麗な涙のような形状に姿を変えて、その石とチェーンを繋げる連結部分には、月桂樹をあしらった植物文様の留め金で石をぶら下げる。シンはできたものを取りあえず、フィーの首にかけてあげると、フィーの銀色の髪と瞳にとても似合ったネックレスに仕上がっていた。


「うん、フィーにすごく似合っている。ありがとうございます」


シンは、女店主に御礼を言うと、女店主は照れているのを隠すように、


「まだ、完成じゃないよ。魔力を込めて、初めて完成品なんだからね」


「はい、わかっています。フィー、一回ネックレスを外すよ」


そう言ってフィーの首に手を回して、ネックレスを外してあげる。そして、それを台座において、シンは体内の魔力を練り始める。ものに魔力を込める作業はシンが日常でしている魔力操作の鍛練の延長である。体内で練った魔力を少しずつ流し込み、溜めていく。流し込む魔力によって、込められた魔石の効果は変わってくるのだが、今回練っている魔力は守る事をイメージしたもの。フィーを悪意の感情に押しつぶされないように、暖かく守るイメージで魔力を練っていた。確かに銀狼の魔石は優秀で、シンの流し込んだ魔力を確実に吸っていき、魔力を吸う事で、白銀の魔石が少しずつ輝いていくのがわかる。シンが魔力を込め終わる頃には、くすんだようなところもなくなり、白銀に輝く宝石のような見栄えの魔石となっていた。


「これはまた、たまげたね。そんなにも魔力を込めたのに、あんたまだ全然、平気なんかい?それにその魔石、今それを店に出したら、下手したら白金貨が手にはいるよ」


そう言って女店主は感嘆の声を上げる。シンは出来上がったネックレスを再び、フィーに付けてあげると、今度はフィーの方から感嘆の声が上がる。


「シン、これすごい。シンとくっ付いているみたいに、暖かくなる。すごい、シンとずっと一緒にいるみたい」


シンはにやりと笑って、思惑通りの結果に満足する。


「フィー、残念だけど魔力だから、少しづつ抜けていくんだ。でも同じ魔力なら込め直す事が出来るから、輝きがくすんできたら、また入れてあげられる。フィーのお守りになると思ったんだけど、上手くいったみたいだね」


「シン、ありがとう。これでシンといないとき、少しだけさびしいのがなくなる。シン大好き」


フィーはそのままシンに抱きついてきて、シンはそれを受け止めると、フィーはその胸に顔を埋めて幸せそうな顔をしている。女主人は、絵になる二人をやはり恋人同士だろうと勘ぐった顔で、微笑ましく見ていた。


店を出ると思った以上に時間がたっていたのか、陽が少しだけ傾いている。シンは手を繋ぐフィーを見ると、


「フィー、残念だけどそろそろ戻らないと王宮で騒ぎになってしまう」


「はい、わかりました。前に食べた甘いお菓子も気になりますが、今日は素敵なプレゼントもいただいたので、許してあげます」


「それはありがたき幸せ、じゃあ急いで帰ろうか」


シンは少しおどけた調子で、フィーにそう言うと、フィーの手を握って、足早に神殿に向けて歩いていった。


帰りの道中はシンの身体強化も駆使して、急いで移動し、シンとフィーはあの噴水まで戻ってくる。それでもあたりは夕暮れ時となり、あたりは夕日に照らされ、赤く染まっていく。


「思ったより遅くなってしまったな。フィー、急いで戻らなくて大丈夫か?」


「そうですね、今日の夜はセシルお姉様と一緒に夕食をいただくので、そろそろ戻らないと心配されるかもしれません」


フィーはそう言うわりに、動こうとはせずに、シンの両手を握り締めている。シンは、フィーが何を言いたいのか、何となく察すると、フィーより先にその言葉を紡いでやる。


「フィー、俺は明日王都を離れるよ。式典も晩餐会も終わったからね」


「もう行っちゃうの?」


「そうだな、一介の冒険者じゃ長いはできないからね」


シンはそう言うと、フィーは俯いて、銀色の瞳に涙を溜め始める。ああ、やっぱりフィーには勝てないな。シンはフィーのその姿を見て実感する。


「だから、約束する。また会いに来るから、その時はまた冒険しようぜ」


そう言って、子供の頃によく見せていたようなニカッとした笑顔をフィー向ける。勿論、フィーに表情は見えていない。ただ何となく伝わっているような気がするので、シンは、その表情を向ける。


「じゃあ次は、シンの故郷に行ってみたい」


フィーは真摯な表情で、シンに訴えかける。この顔どこかで見たことがある。ああ、フィーの母親と同じだ。


「いや、さすがにそれは色々と越えなければいけない壁があって」


シンはシドロモドロになりながらも、否定的な言葉を紡ごうとする。正直、どうしたら実現できるのか解らない位難易度の高い約束だ。しかしフィーはそんなシンの気持ちはお構いなく、


「約束してくれないの?」


そう言って、シンが困惑するのもお構いなしである。ああ、こんなところも母親と一緒だ。


「約束はできない。ただ、最大限努力はする。フィー今はこれで勘弁してくれ」


そう言って、フィーに白旗を上げる。正直それでも精一杯だった。フィーはちょっとだけ、不満げな顔になるも、すぐにいたずらを思いついたような顔になって、


「今はそれで許してあげる。ただずっとは待たないからね。その時はセシルお姉様にシンの事バラしちゃうんだから」


「ハハッ…頑張ります」


シンはそう言って、やっぱりフィーには勝てないなと思った。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


金色の姫と銀色の姫、二人は仲よく向かい合いながら夕食を楽しんでいた。


「フィアナ、何だか今日は楽しそうね」


フィアナはセシルの目から見ても大人しい子だった。目が見えない事もあると思う。自分は別にしても、お父様やお兄様にもあまり積極的には会話をしようとはしない。フィアナが本当の意味で、素の自分でいられたのは亡くなった母の前だけだった。そんなフィアナが今日は終始、ご機嫌なのである。何かいい事でもあったのだろうか。そう思って、つい、そんな言葉が出てしまった。


「はい、今日は素敵な事があったので、すごくうれしいんです」


そう言うと普段は滅多に見せない、楽しげな笑みを浮かべてそう言ってくる。セシルはその素敵な事とやらに興味がわいて、聞いてみる。


「あら、その素敵な事を聞いてもいいかしら」


そうすると少し申し訳なさそうに、首を横に振り、


「ごめんなさい、約束だからお話はできないの。でも1つだけ教えてあげますね」


フィアナはそう言うと、胸にあるネックレスを姉に見せる。


「素敵なネックレス。フィアナにとっても似合っている。その石なんの石かしら?真珠じゃないみたいだけど」


白銀に光るそのネックレスを見て、素直な感想をセシルは言う。すると、フィアナは嬉しそうに話出す。


「これを今日プレゼントしてもらったのです。石は銀狼の魔石と言っていました。これをつけていると嬉しい気分になるんです」


「銀狼の魔石!?それってすごく貴重なものなんじゃないかしら。それに淡く輝いて、魔力が込められている?」


「はい、くれた人が魔力を込めてくれて。だからこれをつけているとその人が傍にいる感じがするのです」


セシルは、すぐにそれをフィアナにプレゼントした人物の事を考える。ものはすごく貴重で高価なものである。その上、魔力まで込める事が出来る人物。王宮内でそんな事が出来るような人物がいたかしら。セシルは、フィアナが誰か知らない人間に騙されてやしないか心配になり、ついついその人物が誰か聞いてしまう。


「フィアナ、そのプレゼントした方って、どんな方なの?」


「ごめんなさい、お姉様。それはお話できないの。くれた方とのお約束で。でもその人は、子供の頃に1度あった事があって、それにお母様も知っていた方なので、御心配なさらずとも大丈夫ですよ」


セシルはますます、頭の中を混乱させる。フィアナと子供の頃に会っている人物で、お母様も知っていた方。そもそもフィアナは今でも王宮の外には一切でない。それにお母様も知っているとなると、お母様方の親族の方か?いや、今お母様方の親族の方は、お母様が亡くなられてから、ほとんど、王宮には現れない。それに加えて魔力を込められるような魔法に精通していて、高額なものを簡単に買えるような財力があって…そう考えるとますます対象者が出てこない。なのに、フィアナは約束と言って話してはくれない。一体、フィアナは誰と会っていたの??


もしかしたら、そのネックレスをセシルが触れば、その送り主に気が付いたかもしれない。ただ残念な事にその事にセシルは思いいたらず、妹思いの優しい姉は、その日夜な夜なフィアナの天然ぶりにやられ、頭を悩ませるのであった。

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