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亡国の公子と金と銀の姫君  作者: あぐにゅん
第1章 金の姫
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第1話 日常からの始まり

まずは説明中心ですが、物語を始めます。

「メルさん、今日はこの依頼をお願いします」


シンはいつものように依頼の掲示板から、めぼしいものを探しだし、受付のメルに依頼書を渡す。


「ああ、シン君おはようございます。草原エリアの討伐依頼ですね。いつもありがとうございます。今、受領証を用意しますので、少々お待ち下さい」


メルもまたいつものように、丁寧かつ朗らかに受付をする。受領証を用意し、シンに引き渡したところで、そう言えばと思い出したようにシンに話かける。


「最近、街道沿いに野盗らしき人影がいたって話があったんですが、シン君見たことありませんか?」


「野盗ですか?魔物なら少し増えてきた気がしますが、野盗は見たことないですね」


「まだ襲われたとか被害報告が出ているわけではないんですが、探るように見られた後、気が付いたらどこかに行っているらしくて」


「襲う馬車でも物色しているんですかね?まあ、見かけたら、報告しますよ」


「うん、情報あったらお願いします。それじゃ、今日も頑張って下さいね」


「ありがとうございます、行ってきます」


シンはメルに軽く笑みを浮かべながら会釈をすると、そのまま入口に向う。いつもの代わり映えの無い日常がスタートする。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


シン・アルナスはカストレイア王国の北にあるヤンセンの町の冒険者である。


カストレイア王国はフォルトナ大陸の南西部の大半を占める大国であり、カストレイア王国の治世は既に500年を超えている。ヤンセンの町はその王国の北に位置し、大陸内でカストレイア王国と勢力を二分するアーガス帝国との防衛の要として常に国軍が駐留する要所である。ヤンセンの北東から東にかけて平原エリアが広がり、北西より北には魔境の森が広がっている。


魔の森は森中に魔素が広がり、ただの魔物をより凶悪なものへと変質させる。変質した魔物は上位種と呼ばれ、中には知性を宿すものまで出るという。大抵の人間は魔の森には近づかず、冒険者や騎士、魔導師と言った腕に覚えのあるものでも、その最深部まで行けたものはいないとされている。


平原エリアもまた魔物が出るのだが、魔の森とは違い、下位種と呼ばれる魔物がほとんどである。ただし、下位種と言っても侮れず、群れで行動することが多い為、一般人にとっての脅威は変わらない。その脅威を排除すべく、商人のギルドが中心となってスポンサーとなり、冒険者ギルドがその討伐依頼を定期的に出すのである。


シンはそういった冒険者稼業を既に3年もやっている。年齢は18歳。15歳が成人とされるこの世界で、成人して早々に冒険者稼業を生業ととして生活をしている。黒髪、黒い瞳の風貌はこの国では珍しく、出身がこの国でない事は想像に難くない。


ランクはDランク。冒険者にはランク制が敷かれており、FがスタートでFランクはなり立てから1年間はFのままで上がらない。これは新人の無駄な犠牲を防ぐ為の処置で、それ以降Dランクまでは依頼件数に応じて順々に上がっていく。なので、普通にこなしていれば大抵はDランクまでは上がれるのだ。Cランク以降に関しては、実績のみならずギルド主催の試験やギルドマスターによる面談等、色々ハードルが増える。これはCランク以上の場合、ギルドから直接指名依頼が出るようになる為で、不適当な人材を指名して、ギルドの看板に傷がつくのを避ける為である。


シン自体はこれまで何度かギルド側よりCランク試験を受けないかとの打診をもらっているが、全部断っている。Dランクで生活が困らないというのもあるが、Cランク以上の冒険者になること自体に魅力を感じていないからである。そもそも冒険者でいる事自体、生活の為であり、それ以上でもそれ以下でもない。かと言って何か他に目的やしたい事があるわけでもない。以前、ギルドマスターにも言われたが、燻っている、現状に一番合う言葉がこの言葉であることに、シンも異論がなかった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


討伐依頼の場合、まずはその討伐対象である魔物を見つける事から始まる。

シンは身体強化の魔法が使えるので、この索敵に関しては、あまり苦労しない。


この世界における魔法とは、体内にある魔力を術式をイメージして具現化するものである。魔力の質は人それぞれで、その資質以外の魔法系統は使えない。シンの魔法系統は闇。闇は精神や肉体を作用させる事を得意とする系統で、精神強化や肉体強化に秀でた系統である。


草原エリアをある程度奥まで進むといくつかむき出しの岩が転がる場所があるので、その上から視覚と聴覚の強化をして、魔物を探す。

そのポイントで探していなければ、次のポイントと言った形で、いくつか索敵ポイントを押さえているので、そこを順々に見て回れば、大抵は魔物を捉える事が出来るのである。


そうしてその日はいくつかのポイントを回ることでで見つけた魔物を掃討する。

やはり群れで行動している魔物で有った為、囲まれないように不意を突き、一か所に止まらないよう移動を続けながら、一体、一体を切り伏せていく。

そして最後の一体となった魔物を、一刀のもとにに切り伏せると漸く、立ち止まり一息つく。


「今日のノルマはこれで終了かな」


切り伏せられた魔物から、討伐した証明の部位を切り取るとそれをバックに収納する。周囲に魔物の気配がないことを確認して、町に戻ろうと歩き出す。


ここはヤンセンの町から東に向かう街道周辺の草原地域。街道を東に行くと王立学院と魔術師協会の総本部のある学術都市メルゼンがある。街道はヤンセンよりの途中より王都への街道へと分岐し、その途中にはいくつかの宿場町が存在する。比較的、隊商が行きかう街道の為、道はきちんと整備されている。


シンは街道をヤンセンの町に向け歩きながら、一人ごちる。


「そう言えば、メルさんの言っていた野盗って、どの辺にいたんだろうな」


そう思って周囲を見回すが、当然それらしい存在は確認できない。そもそも、一介の冒険者風情の人間を野盗がわざわざ目をつけるはずもない。


「馬車を見張ってたと言っていたから、ただの金品目当てか、それとも別で狙いがあるのか」


まぁ考えたところで答えはでない。シンは不毛な考えを頭から振り払い、その辺はギルドの幹部連中が考えるだろうと思考を放棄する。そうこするうちに街道を歩いていると、後方からそれほど小さくない爆発音が鳴り響く。


「魔法?魔物に襲われている?それとも例の野盗か?」


爆発音があった方を見ると、モクモクと煙が上がっている。ただ場所がそれなりに離れているのか、何があったのかまではわからない。無視してもいいのだが、爆発音がそれから2度、3度と繰り返されている事から、戦闘自体はまだ続いているのがわかる。


「はぁ…メルさんに情報は提供すると言っちゃったし、様子だけでも見に行くか」


シンはつくづくお人好しだと自分自身に苦笑をし、身体強化をかけて脚力を上げると、煙の立つ方へ走り出した。

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