第12話 事件のその後
その日の夜はまだ終わらない。
打合せ通り、セシル達は身支度を整えた後、軍部のある宿舎を訪れ、現地責任者のフィッシャーと面談する。フィッシャーはセシルがその場に来たことにも驚いたが、それ以上にルイーズの行動に怒り心頭で、すぐさま駐屯している中隊を動員し、すぐさま領主代行の館に突入する。館ではルイーズの雇っていた傭兵たちが、一部抵抗をしたが、その傭兵たちともどもルイーズもあっけなく捕縛されている。
彼らに関しては、今後アーガス帝国との関係性を調査すべく、厳しい尋問が予定されている。またその中にセシルを襲った野盗達がいるかと思われたが、彼らはその中にはいなかった。直接アーガス側と手を組むか、派遣されたかなのだろう。そう言う意味で言うと、火種はまだ燻っているだけなのかも知れない。
ここまでの一連の流れは夜通し行われ、シンが拠点にしている宿屋に戻ってこれたのは、日が既に昇って、朝市が賑わいを見せ始めるようになってからだった。 そしてシンが宿屋に戻ってから、次の行動を起こし始めるのは結局、その日の夕方までかかる。
さすがに昨日一日の出来事は、少なくてもここ3年の冒険者生活の中で一番ハードだった。肉体的な負担はそれほどでもなかったが、何より精神的に疲れた。自分の身の危険は何とでもなるが、別の誰かが身の危険に陥る状況はシンにとって大きな重荷となった。セシルやメルに言った事が本心で、本来であれば、身の危険に晒される状況にさせない事が大事なのだ。
ただ、まぁさすがに暫くは同じような事はないだろうと思う。セシルが軍の庇護下に置かれたからだ。軍部にルイーズのような阿呆がいれば別だが、フィッシャーはハワードも評価するように堅物だが、愛国心と王家に対する忠誠心が強い人物である。今回もセシルに対する礼節は徹底したものがあり、口の悪いハワードは別にして、丁寧な応対をしていたシンに対しては、むしろ好感を抱いていたようだった。そして何より軍の兵士達のセシルの人気が絶大なのだ。セシルはあの美貌で、あの快活な性格である。兵士にも朗らかに接する為、彼女がいると士気が上がるとフィッシャーのお墨付きが有るくらいである。
同じようにセシルも又、行動を起こすのに時間がかかる。
それでもシンよりはやる事も多く、動き出しは早い。領主代行を捉えた事に対する事後処理があるからだ。元々実務は領府役人が取り仕切っていた為、あまり実害は無いようだが、当座は軍に協力をしてもらい、監視体制を引いてもらう。それから王都への連絡やら、事情徴収やらで、何だかんだで、シンにお礼に行く暇さえ持てなかった。
結局のところ、シンには助けてもらうだけで、何もしてあげれていない。本当の意味で、彼が何を喜んでくれるかはわからないが、少なくとも何かしらお礼はしてあげたい。
それにこのままでは、彼との縁が無くなってしまう。セシルは自分の立場が王女である事は理解している。だからこそ彼との別れは、一度でも切れた縁はもう戻らないと思う。そしてそれはなんとなく嫌だっだ。
せめてもう少しだけ、シンと一緒にいる時間をつくれたら...と思いに耽ったところで、思い付く。
「そうよ、お礼をするのに、一緒に王都に来ていただきましょう」
そうすれば、今しばらくは側にいてくれる。これから縁を作る事も出来る。いい事を思いついたと、急ぎ知っらせのものを呼ぶのだった。




