観覧車
お化け屋敷を出た後、動物を見ることになった2人。
「・・・何これ?キリン?」
「アルパカです。ユーク様。」
「ふーん、これがアルパカ・・・。」
なんかイメージと違う。どうでもいいけど。
「これは何だ?毛玉?」
「ウサギです。そういう種類の。」
説明が書いてある看板を見る。
アンゴラ・・・?そういう種類ってことか。
「・・・退屈だな。」
ユークに動物園は向いていなかった。
「では、違うところにしましょうか。観劇はいかがですか?」
ユークは唸る。
「うーん・・・あんま興味ないな。」
園内を見回してみると、最初に目に付いたものが目に留まった。
「あれにしようぜ。」
親子連れやカップルの列に並び、観覧車に乗り込む。
ゆっくりと地上から離れ、少しずつ風景が高くなっていく。
「・・・・・・。」
小さな部屋の中、お互いに何も言わず景色をただ眺める。
「・・・ユーク様。」
時計にすると10時のあたりにゴンドラが位置した頃、プレナが口を開いた。
「私たちが出会ってから、まだそれほど経ったわけではありませんが、色々ありましたね。」
「・・・だな。」
出掛けた時にクオンと出会い、魔族の会合でモルガナと出会い――
4人で行動するようになってからは、旅の記憶が色濃く残っている。
そこまで考えて、ユークはふと思うことがあった。
「俺さ、思うんだけど・・・。」
「何ですか?」
2人を乗せたゴンドラは頂上に達しようとしていた。
地上から離れ、周りに誰もいない特別な空間。
観覧車の動く音が掻き消えたかのように思え、ユークの声だけがプレナの耳に届く。
「・・・魔王がこんなに出掛けてていいのか?」
「・・・はい?」
一瞬、時間が止まったようだった。
次いでプレナが笑いだす。
「ふふっ・・・あはは・・・あはははははっ!」
お腹を押さえ大笑いする。
呆気に取られているユークを前に、目元を指で拭う。
「ここで言う台詞じゃないわよ・・・あはは・・・お腹痛い・・・ふふふっ・・・。」
まだ笑いが収まらないプレナだったが、何とか落ち着こうとする。
「ふぅ・・・ふぅ・・・すみません。取り乱してしまって。」
優しい笑顔になり、言葉を紡ぐ。
「いいんですよ。それで。魔族の王位を持った者が『魔王』という肩書を持っているだけのことですから。人間の作った魔王へのイメージを真に受けなくていいんです。王族だって貴族だって、誰だって旅行したり遊んだりしていいんですよ。」
「それに。」とプレナは言葉を続ける。
「そういうところがユーク様の魅力なんですよ。きっとその魅力に救われた方もいることでしょう。」
沈む夕日のように、徐々に空から離れ、地上が近づいてくる。
「秘書としてではなく、あなたを見てきた1人の女性として、保証するわ。あなたが自分のことをどう思っているかは分からないけど、あなたは行動力があって、人を気にかけることができる男性よ。」
乗った位置までゴンドラが戻り、係員によって扉が開けられる。
プレナはジャンプして地上へと下り、出会った頃より少しだけ伸びた金髪をなびかせ振り向いた。
「さぁ行きましょう、ユーク様。せっかくの遊園地ですから、やっぱり4人で遊びませんか?」




