そうだ、町に行こう
チャライやつを倒した翌日。
魔王として振る舞うのが面倒になっていた俺は、玉座に座って自室から持ってきた本を読んでいた。
「ユーク様。お話があります。」
「ん?何だプレナ?」
「魔王としての脅威をもっと、人間に示すべきかと思いますが、いかがでしょうか?」
「魔王の脅威って・・・親父がそういうのは、もうやってたんじゃないのか?」
そう言ってからユークは、あの親父のことだ。俺が就任するにあたって全部取り消した可能性があるな。と思った。
しかしユークの予想とは異なりプレナは首を横に振り
「先代の魔王様・・・ジェーラ様は、そのような活動・・・宣伝や広告は一切しておりません。」
と口にした。
意外だな・・・。
いや、そうでもないか・・・?
「どうして親父・・・先代は、そういうことしてこなかったんだ?」
「分かりません。前に一度お尋ねしたのですが・・・はぐらかされてしまいまして。」
ふーん。やっぱ、親父の考えてることはよく分かんねぇな。
ならば
「調査に行くのが手っ取り早いか。」
「先代に聞きにいくのですか?」
「いーや。親父に聞いたって、いい答えは返ってこないと思うぜ。だから、人間の町に行くんだ。」
「人間の町に?私たちが?」
「そーだ。現地調査だ。魔王についてどう思っているか、な。」
そろそろ新しい本が欲しかったところだし。
それに人間の町なんて、ずっと行ってなかったからな。
いつだったか・・・小さい時に一回だけ行ったような気がするんだが・・・。
心を躍らせているユークがふと、プレナを見ると苦虫を噛み潰したような顔だった。
「・・・どったの?」
「・・・人ごみ・・・というより、密集したところが苦手なのです。ちなみに、向かうのは夜ですか?」
「いや昼前・・・今すぐにでも行こうかと。」
プレナの顔色がますます悪くなる。
「・・・留守番したいのですが。」
「ワッハッハ!これも経験だ!行ってこい!」
足元から突然声がした。と思った次の瞬間、ユークは宙を舞っていた。
原因は、殴るように玉座を持ち上げ地下から出てきた先代魔王だ。
「実際に人と接しないと、何も分からないぞ!幸い、お前らは人とほとんど見た目が同じだ!バレないバレない!あ、お土産期待してるよ。」
「親父・・・分かったから・・・普通に出てきてくれ・・・。」
床に叩きつけられ、玉座の下敷きになっていたユークが呻く。
「悪い悪い!さぁ行ってこい!」
全然悪びれる様子がない。
プレナはユークを引っ張り彼を起こすと、溜め息とともに移動魔法を使用する。
「・・・では、行ってまいります。」