魔王と息子とこれからについて
「・・・我が息子、ユークよ。この玉座の間にお前を呼び出したのは他でもない。大切な話があるのだ。」
玉座の間と呼ばれる、おどろおどろしい装飾が施された部屋。そこにある宝石のついた豪華な玉座に座る者が、目の前で膝を折ってかしこまる少年に語りかける。
「お前ももう16になったのだ。将来のことも当然、計画しているであろうな。」
「・・・はい、父上。いえ、魔王様。」
ユークと呼ばれた少年、黒に近い青髪の少年は魔王であり父親である者の目を見つめる。
その澄んだ瞳に魔王は安堵のため息を吐いた。
「流石は我が息子、ユークだ。」
魔王は咳払いを一つする。
「では、本題に入ろう。ずばり!お前に魔王をやってもらうためだ!!」
・・・・・・
「・・・は?」
「実はユーク・・・父さんはな・・・。」
「もう充分、魔王として働いたから、引退して趣味に生きようと思っているんだ。それにほら、お前さ、魔王の息子ってだけで、何もしてないじゃん。ニートじゃん。だからこの話はな、お前のためでもあるんだぞ。父さんは引退して好きに生きることができる。お前は仕事ができる。いい話じゃないか。」
「いや何言ってんだ親父!?」
先ほどまでのシリアスな空気から一転、玉座の間は妙な雰囲気になる。
「なんで俺が魔王をやんなきゃならないんだ!?大体、親父はまだ働けるだろ!?」
「いや、だって・・・ユーク、お前はほら・・・魔王の息子じゃん。跡継ぎじゃん。」
「だからって・・・!」
ユークは頭を抱えた。
まずい・・・まずいぞ。このままでは魔王をやるはめになってしまう。
ニートとして生きていく俺の人生設計が・・・!
崩れる!!!
ならば!ここで俺がやるべきことは!!上手く逃げること!!!
ユークの頭の中で、ニート生活を守るための武器(言い訳)が作られていく。
「俺、ニートだったからさ、いきなり魔王なんて無理だと思うんだよね。」
「安心しろ。面接も試験もないぞ。それに秘書もつけるから、心配いらないぞ。」
ぐぬぬ・・・。
「城のこと、全然知らないからさ、かえって迷惑じゃ・・・。」
「最初は誰だって初心者だ!皆、そこから頑張るものだ!」
た、確かに・・・。
「正直、もう少し考える時間が欲しいっていうか・・・。」
「もう城内には伝えたぞ。お前が新しい魔王だって。」
がああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
何やっちゃってんの!?この親父は!?
「というわけで、今日からお前が・・・!」
「はい・・・魔王・・・ですね・・・。」
こうして俺は(無理やり)ニートから魔王にジョブチェンジした。