3 彼は初戦闘をする
という訳で本日3話目です。
初戦闘ということですが、戦闘シーンはいろいろと修行が必要そうですね。
さて、森を脱出するために歩き始めて早3時間。この世界がゲームと同じ時間で進んでいるかは分からんが、持っている魔導具の時計では3時間経過したので一応そうしておく。
おれは未だに森をさまよっていた。最初こそまっすぐ進めばいつかはと思っていたが、そもそもまっすぐ進んでいるかも分からん状況にいる。なにせ、どれだけ進んでも同じ風景にしか見えないからだ。進めど進めど、見渡せば木。
正直、森をなめていたとしか言いようが無い。人影を見るどころか、動物すら影も形も無いとはどういうことだ。魔物いるんじゃないのかよ、と悪態をつく。
そんな感じに森の中をさらに進んでいると、天に祈りが通じたのか茂みからガサリと何かの音がしたのでそちらを見る。
「「「グルルルゥゥ...」」」
するとなんということでしょう。視線の先にの初めて見る自分以外の動物がいました。風貌は灰色の狼といった感じで大きさは約1メートル程、目は血走り口からは際限なく涎が垂らしており一目で空腹なんだと理解するのは難しくない感じの狼が3匹ほど茂みから出てくる。その狼たちの視線の先にいるのはもちろん、おれ。
「……おいおいおい、マジかよ。おれ、運高いはずじゃないの?」
ステータスなんて当てにならないと思いながらつぶやいた瞬間、狼たちは一直線にこちらに駆けてくる。それを認識したおれはすばやく、宝庫の門に魔力を送りこむ。
「ストレージ・アウト!!魔導銃タスラム!!」
次の瞬間右手に握られていた銃の銃口を迫りくる狼の内一番近くにいた個体に向け、引き金を引く。すると、銃口からは一発の白い弾丸が飛び出し向けられた狼に向かって飛んでいく。こちらに向かってきていた狼はそれを避けることが出来ずに直撃し、後方に吹き飛んだ。
さらに、それを見ていたほかの2匹もその場に止まり、こちらを睨んでくる。どうやら全くのバカというわけではないようだ。こちらに攻撃手段があると理解して突っ込んでくるのをやめるくらいには知能があるらしい。だが、おかげで2匹ともいったんこちらと距離をとり始めたので若干ではあるが安堵した。
しかし、然程余裕で要られるわけでもない。なぜなら、この魔導銃タスラムは遠距離攻撃武具ではあるが、MPを使用するため連発しすぎれば自分のMPが空になるため、連射することは出来ない。さらに、最悪なことにこいつの一撃では狼を倒しきることも出来ないようだ。先ほど、撃たれて吹き飛んだ狼も普通に立ち上がってきている。
つまり、他の武具を使用する必要があるが、正直それも難しい。なぜならステータスが低いからだ。下手に接近戦武具を使おうとすれば、間違いなく死ぬことになるだろう。
つまりは、出来る限り接近戦にもちこまずに敵を倒したほうが良いということだ。
「あんまMPは使いたくないんだが。……仕方ないか」
そして、おれは再び宝庫の門に魔力を送りはじめる。しかし、それに気付いた狼たちも先ほどのことで学習したのか、それぞれが不規則な軌道でこちらに駆けてきた。慌ててタスラムを放つも相手の速度が速いため交わされてしまう。
そんなことをしているうちに、いつの間にか右に回りこんでいた個体がこちらに飛び掛ってきた。
「っ!!ストレージ・アウト!!ミラーズ・キューブ!!」
次の瞬間なんとか取り出すことに間に合った魔導具が、おれと狼の間に召喚され狼の攻撃をさえぎる。ミラーズ・キューブ、全部で6つからなる自動防衛装置。形は正十二面体で水晶のような材質で出来ている。あまり強力な攻撃には耐えられないが、狼たちの攻撃を防ぐくらいは出来る。こいつらは常におれの周りを適当に浮遊しており自動で防御をしてくれる。
「さて、準備も終わったしそろそろ終わらせるぞ」
おれの宣言を理解してかどうかは分からないが、おれの周りを囲みゆっくりと回り始める狼たち。機を狙っているのか、いきなり突っ込んでくる様子は無く様子を見ながら周りを回り続けている。
まあ、こちらとしては楽でいいのだが。そう考えつつおれは、一番近くに浮遊していたキューブに向かってタスラムを放つ。
すると、タスラムから放たれた魔弾はキューブに吸い込まれていき、他の5つのキューブから同時に魔弾が放たれる。
そう、これこそがミラーズ・キューブの本来の用途である。ミラーズ・キューブは防御壁として使用することもできるが、魔導具としての効果は受けた魔法攻撃を他のキューブに転移させるというものだ。しかも、その攻撃をさらに他のキューブに当てれば攻撃がねずみ算式に増えていくことになる。
現在おれの周りでは、おれを取り囲むようにそれぞれのキューブがそれぞれに向かって魔弾を発射し続けている状態だ。
もちろんこれを発動し続けるのには魔力を消費するが、ある一定以上まで弾数を増やすと普通にタスラムを撃つよりMP効率が良くなるのだ。
そして一発では倒れなかった狼でもこの数を一斉に放てばさすがに倒せるだろう。もう既に、魔弾の数は数百発に及んでいるし。
「いけっ!!」
次の瞬間おれの掛け声と共に増幅し続けていた魔弾が一斉に狼たちに向かう。さすがの狼たちもおれを取り囲んで飛び交い続ける光の弾を前におれに飛び掛ることも出来ずに呆然と眺めていた。そんなところに数百発に及ぶ魔弾の雨である。避けられるはずも無く3匹の狼たちは光の雨に包まれていった――――。
「……ふぅ。なんとか終わったか」
狼との戦いの後、一息ついたおれは倒した狼たちを解析し宝庫の門に放り込んでおくことにした。ちなみにそのときの狼たちのステータスがこんな感じだった。
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ハイロゥ
Lv.3
MP:10/10
筋力:21
耐力:12
魔力:12
器用:10
敏捷:34
運 :3
技能:
称号:
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ハイロゥ
Lv.4
MP:10/10
筋力:25
耐力:15
魔力:13
器用:12
敏捷:40
運 :2
技能:
称号:
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ハイロゥ
Lv.3
MP:10/10
筋力:22
耐力:12
魔力:10
器用:10
敏捷:34
運 :5
技能:
称号:
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個体差なのだろう多少ステータスが違ったりしているようだが、総じて筋力と敏捷が高い。正直接近戦してたら死んでたと思う。敏捷値から考えるに攻撃あたらなさそうだし、一発食らったら結構やばそうだ。なんせこちらの耐久は1。
いくらステータス=強さで無いといっても、狼のつめでやられたら普通に痛いしね。
そんなことを考えていると、頭の中に突然声が聞こえてきた。
『レベルがアップしました』
どうやらレベルアップしたらしい。というか何、このシステム的なの。何気にゲーム感覚だよね。そんなことを考えつつステータスを見る。
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シユウ
Lv.2
MP:140/350
筋力:1
耐力:1
魔力:1
器用:150
敏捷:1
運 :999
技能:
【神の手】【解析眼】【豪運】【言語理解】
称号:
異世界人、転生者、神王の玩具
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器用の上がりおかしくない?!1レベルあがっただけで30も上昇とかどれだけあがるんだよ。そして他があがらないのがやはりというかなんというか。
やはり下方にカンスト状態なんだろうか。
そんな風にステータスを見ていたおれは、初戦闘に勝ったことに浮かれきり周囲の状況を確認することを忘れていた。