赤ずきんのお話⑵~魔女さんのいう通り~
淡々と語っていく赤ずきんの瞳に喜びがともっていく。
「その魔女さんには何故か敵対心がわかなかったの。どうしても悪い人には思えなかったから聞いてみたの。『どうしたら殺せるの?』ってね。そしたら魔女さん、さも当たり前のように言ったの。」
意味深に一拍開けられてゆっくりと喋る。
「『私の薬を使えば完璧よ。』って。」
結果からいうとやはり彼女は魔女でたまたま赤ずきんを見つけた時に赤ずきんから見えた『めんどくさい、いなくなればいい』と思っていた感情に目をつけていた。
元々、森の中に住む赤ずきんのおばあちゃんにいい気は抱いていなかっただけに強力な毒を赤ずきんに渡すことを決めたのだった。
「いい?今から私が渡す薬は魔法がかかっていてねぇ…この中身が毒だとわかっていると死なないけど毒だと知らないとどんなに強くても毒に触れた全てに死が訪れるよ。」魔女は愉快そうに話したのだ。
この意味が理解できなかったのか、それとも全てを理解していたのかは定かではないが彼女は頷いた。
赤ずきんはあえてその話だけはせずに次の言葉から発した。
「私は魔女から薬を…毒をもらっておばあちゃんの家に急いだの。変に遠い場所だから困っちゃうわ。途中で狼にも会ったけど怪我をしていたから殺す予定だったおばあちゃんにあげる林檎を1つあげたわ。」
彼女の目が先程までは本当に楽しそうだったのに今では木の机を睨み、冷たく感じさせる真顔で話していた。まるで、これがいかにつまらないことだったかのように、淡々と話し続ける。
「そしておばあちゃんの小さな小屋に着いたときには少し日が傾いていたわ。ドアをノックすると中から弱々しい声で入っていいよって言われたから荒々しくドアをあけて入ったわ。そしたらおばあちゃんに『やっと来てくれたね、赤ずきん。そこにかごをおいてお茶でも飲んで話しましょう?』と言ったので猫を被ってお茶を淹れるって言ったのよ。その時に毒を入れたわ。ほんの一滴だけよ。」
彼女の目が楽しげになってきた。彼女の白い肌に映える金髪が窓からの光に反射して少し輝いていた。