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VS盗賊&そのリーダー


 バトル描写が発展途上なので、今回は生暖かい眼で見ていただけると幸いです(´・ω・`)




 それと同時に、下っ端盗賊総勢16人が一気に飛びかかってくる。

 あの、すいません。いきなり無理ゲーですわぁ……。

 さっきはあんな格好いい台詞言ったけど正直めっちゃ怖ぇぇぇぇぇぇっ!!? こんなことなら産まれてこなきゃよかったぁぁぁぁぁっ!!

 てかもう盗賊達すぐそこまで迫ってるよ俺何も抵抗出来ねぇよ一人殴っても他の15人に集団リンチだよ勝てる気しねぇよボコボコだよ負けるよ人生オワタよどうすりゃいいんだよそもそもフィアナ庇いながらどうやって戦えば──

 ──地面殴っちゃえ♪

 バトル漫画とかでよくあるじゃん。キャラが地面殴ったら衝撃波で周りを吹っ飛ばすやつ。それ出来ないかな? それだったら真後ろのフィアナに被害はほぼ無いし、下っ端盗賊達吹っ飛ばせて一石二鳥。よし、それだ。それでいこう。

 もう、一刻の刹那の猶予もない。

 俺は全力で拳を握り締め、腕を大きく振りかぶる。

「ぬぅぅぅぅおぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおぉぉぉっっ!!!!」

 その刹那──


 ドゴォォォォォォォォォォォォ……ッ!!


 ──地面に打ち据えた拳から発生した衝撃波が下っ端盗賊達全員を吹き飛ばした。

「「「どわぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁっ!?」」」

 叫び声を挙げて墜落していく下っ端。

 大抵は背中から落ちて事なきを得ているが、その着地音に紛れ何かが潰れるような音が数回。何の音かは考えないことにした。

 だが、それよりも。

「────すげぇ……」

 見ればしゃぶしゃぶ鍋のようなクレーターが俺を中心に広がっており、辺り一面の草は薙ぎ倒されていた。

 本当にこれ、俺がやったのか……? もしそうだとしたら、これはフィアナの肉体強化によって引き起こされたに違いない。

 だってよ、18歳童貞オタクなんだぜ?

「き……貴様……っ! 一体何しやがった!!」

 その僅かながらの静寂を打ち破るように、リーダー盗賊が声を挙げる。その挙動には動揺も見てとれたが、すぐにそれも掻き消え、腰の剣を引き抜いた。

 一見すると両刃(ブロートソード)の類いだが、それにしてはやけに刃が短い。想像するブロートソードの半分ほどだろうか。まぁ、短い=小回りが利くから盗賊にはお似合いだな。

「てめぇを殺してやる……!!」

「じゃあ最初からお前自身が攻撃してくればよかったろ。それともなんだ? 怖かったから部下に先に襲わせたの? それじゃあんたリーダーの素質無いねー、よってカリスマ性ほぼ皆無。リーダーなら部下を先導するもんじゃ無いのか? 違うか?」

「ぐぬぬ…………」

 筋肉モリモリマッチョマンの変態(かどうかは知らんが)の「ぐぬぬ」なんて需要ねぇよ。精々ホモォの餌だ。

 だが、俺の挑発がいい加減頭にきてるようで、リーダーの額には何本も血管が浮き出ている。冷静さを欠いているのは明白だ。

 そう、これこそ俺が狙っていたこと。さっきからの挑発はこの為。別にさっきので自分の力に慢心してるわけじゃ無いからな? 本当だ、本当だぞ!? 

 しかし、冷静さを失った人間は、ほぼ確実と言って良い程猪突猛進だ。細かいことなど考えず、目の前の敵を怒りに任せて叩き潰そうとする。ただそれだけ。

 ──そうなった敵の対処は簡単だ。

「野郎、ぶっころしてやらぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁっ!!」


 ──こちらは冷静に対処すればいい。


 怒りの形相で剣を振り上げ突っ込んでくるリーダーに対し、空かさず俺は足元で気絶している下っ端から短剣を拝借。手にした二振りのそれでリーダーの剣を受け止める。

「フィアナ……少しの間離れてくれるか? 流石に付き人とはいえ、『これ』相手だとフィアナを後ろで庇いながら戦うのは無理だ」

「…………分かった。そのかわり、40秒でぶっ倒せ」

「──任務了解っ!!」

 初めての魔王様直々の任務。


 《盗賊リーダーを40秒でぶっ倒せ》


 こんなの、フィアナの肉体強化のお陰で怖がる事なんか無い。今の俺は、強靭! 無敵! 最強! フィアナの命令でアドレナリン超活性!! 負ける気しねぇ! もう何も怖くねぇ!! えっ、最後のは死亡フラグ? そんなふざけた理屈、ぶち壊す!

 フィアナが俺の後ろから離脱して少し離れたのを確認すると、俺は渾身の力を込めてリーダーの剣を押し返し、その空いたどてっ腹に蹴りを一発撃ち込む。

「ごぶっ!?」

 頭上から聞こえる嗚咽など放っておき、数メートル吹っ飛んだリーダーから、俺はステップで距離を離す。

 やはり、攻撃が直線的。これなら戦闘経験皆無の俺でも勝てる。冷静に対処すれば、どうということはない。じりじりと時間をかければ確実だが、生憎40秒で決めろと言われてるからそうもいかない。

 ──なら、次で決める。

 俺の思考がその答えを出した瞬間、リーダーはこちらに向かって突っ込んできた。

 ラッキー、突っ込む手間が省けた。

「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 再び剣を振りかざし迫るリーダー。それに対し、俺がとる行動はただ1つ。


 ──両手の短剣を投げ捨てた。


「馬鹿が! 敵を目の前にして武器を捨てるなんてなぁ!! やっと諦めたか!!」

 その不細工な顔で戯れ言を告げるリーダーは、俺の目前に迫った所で顔面目掛けて剣を降り下ろす。

 だが、俺は避けない。避けては意味がないからだ。

 ──俺の攻撃が出来ないから。


「とんでもない、この瞬間を待っていたんだ」


 ──バシィィン!!

 降り下ろされた剣を、俺は空いた両手で挟み込む。剣と額の距離は、僅かに数センチ。リーダーがどれだけ力を込めようとも、その距離が縮まる事は無かった。

 そう──白羽取り。

 これがこの戦いを即急に決める一手だった。

「く……糞が…………! こんなもやし腕の何処にこんな力が……!!?」

 汗の滴る腕でリーダーは何度も力を込めるが、現状は全く変わらない。

 互いに圧すことも退くことも出来ないこの状況。変えるのは誰か?


 ──勿論、俺だ。


 リーダーが剣に力を込めたその瞬間、俺は身体の右側に剣を引き込み、ついでに剣を真っ二つにへし折る。

 激昂の余り処理能力が落ちた脳で判断が遅れ、呆気に取られたリーダーはそのまま引き込まれた方へと倒れ込む。

 そして、その先に待ち構えているのは──俺の右拳。

「どぉぉぉぉぉぉりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 空いた左手でリーダーの首を固定。衝撃を後ろに逃がされないように、しっかりと。

 そして、全身全霊かつ命を奪わない程度の全力を込めた必殺パンチを、リーダーの鳩尾目掛けて飛翔させる。

「ごぉ…………が……は………………っ!」

 直後、勢いよく胃液を吐きリーダーが嗚咽と共に倒れ伏した。

「ふむ……38.59秒。我の命令通りだな」

「お褒めに預かり光栄です」

 戦いが終わると同時に木の陰から出てきたフィアナに一礼。

 そう、これこそ本来の付き人の姿。


 《盗賊リーダーを40秒でぶっ倒せ》


 俺、霧風ソウマは、初めての魔王様からの任務を無事終了しました。



▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 △ △ △ △ △ △



「さて、こいつらをどうするか」

 戦いを終えて数分。俺達二人の前には縄で縛られた盗賊総勢17名。無論、その中にはリーダーの姿もある。

「畜生……。俺らをどうするつもりだ……」

 たかが一人の男に自分が倒されたのが未だに認められないのか、リーダーはこちらを睨み付けてくる。

「いや、普通なら町の衛兵の所まで連れてって引き渡すんだが……生憎魔王様がその気で無いんで」

「魔王だぁ? へっ、寝言言ってんじゃねぇよ。愚劣な悪魔共の頂点に立つ愚王がこんな所にいるわげぶぅ!?」

 気づくと、リーダーの頭部にフィアナの踵落としが突き刺さっていた。いや、本当に気付かなかった。2秒前まで隣にいたのに瞬きする間に一撃。すごいね魔王。

「貴様、今の言葉は聞き捨てならんな」

 物凄い剣幕でリーダーの首根っこを掴み挙げるフィアナ。どうやら自分と自国の民を侮辱されたのが気に食わなかったようだ。

 持ち上げたリーダーを地面に叩き付け、フィアナは続ける。

「貴様らが我の事をどうと言うのは勝手だ、盛大に口にするがいい。だが、我の国民を侮辱することだけは断じて許さんっ!!」

「な、何が『我の国民』だ……! 馬鹿にしやがって……!!」

 頭を踏みつけられながらも、リーダーは更にフィアナを睨み付ける。それほど目の前の少女に屈服したく無いのだろう。プライドが高そうだから尚更だ。

 だが、あいつは勘違いをしている。

 目の前にいるのは、決して自称魔王を語るゴスロリ少女などではない。


 ──本気で国民を思う、魔王その者なのだ。


「見上げたプライドだな……。ではそのプライドに免じ──そして我の国民を侮辱した罪を賞し、貴様に『恥』を与えよう」

 無慈悲に、そして冷酷にそう告げると、フィアナはゆっくりと左腕を掲げる。

「な……何をする気だ…………?」

「言ったろう? 『恥』を与えると」

 目の前の恐怖に怯えるリーダーを尻目に、フィアナは左手の親指と中指の平を合わせる。

 その姿はまるで、幼稚なコソ泥に裁きの鉄槌を下す──魔王その物。


 ──パチン!


 刹那、辺りにフィアナが指を鳴らした音が響く。

 それと同時に、リーダーの身体を包み込むような煙が上がった。ピンク色をしたそれは、瞬く間にリーダーの身体を多い尽くす。

 やがて煙が晴れると、そこにいたのは──


 ──ぶかぶかの服と縄に身を包んだ幼女だった。


「えっ、な…………なんだよこれ!? 声までガキのこえじゃねぇか!!

 何が起きたか分からない、といった感じで、元リーダーはバタバタと手足をジタバタさせる。

 外観年齢は12~13歳程だろうか。髪は茶色のショートヘアーで、瞳は澄んだ緑色をしている。身体も出るところは外見相応に出ているし、肉付きもいい。同世代だったら確実にフィアナと同じくらい惚れてたと思う。

「てめぇ! このおれになにしやがった!」

 先程まで僅かに気圧されていた怒号も、今となっては舌足らずで萌える。

 いやぁ、小学生って最高だぜ!!

 っていかんいかん。俺は断じてロリコンじゃ無いぞ。決して連邦の大尉みたいなロリコンでは無いぞ。あの人が好きになった女の子は好きだぞ。外見も中身も中の人的にも。

「何度も言わせるな。お前に『恥』を与えたと言った。そして我はそれを実行したまで。それ以上でもそれ以下でもない。貴様はその姿で人生をやり直せ」

「ふ、ふざけるなぁ!! もとにもどせ!」

「無駄だ。貴様にかけた魔法は絶対に解けん。よって永遠に元の身体には戻れない」

 つまり、フィアナが与えた『恥』とは。

 ──男の心のまま、幼女になって人生をやり直す。

 実に魔王の名が示すような無慈悲。

 そして、フィアナは下っ端の縄を全て切り落とす。

「さぁ、行くがいい。もっとも、首領は盗賊を続けるのは無理そうだがな」

「く、くそぉ!! お前ら、引き上げだ!!」

「「「はい、お頭ぁっ!!!!」」」

 元リーダーの幼女は大勢の下っ端に担がれて森の奥へと消えていった。


「おぼえてろよぉぉぉ! おまえらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 幼女の悲痛な叫び声は、それから数分続いたのだった。

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