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歩き始めて──早速戦闘開始

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 △ △ △ △ △



「なぁ、ちょっといいか?」

 しばらく歩いた所で俺はフィアナに問い掛ける。

「なんだソウマ。その服にいちゃもんでも付けるのか?」

「いや、そうじゃねぇよ」

 そう、今の俺の服はスタンダードな冒険者衣装。落下してきた時の衝撃で飛び散った返り血まみれだった制服を見かねて、フィアナが城を出る前に用意してくれたのだ。

 防御魔法を練り込んだ布とグランドプンバァー(も○の○姫に出てきたナ○の神みたいなデカイ猪型モンスターらしい。鞣し革が防具として重宝される)の鞣し革で出来た服、冒険者らしいマント(AMCマント──アンチ・マジック・コーティングマントといい、相手の魔法攻撃を99.9%防ぐ高性能マント。魔法を受けた部分から消滅するので無敵ではない)という至ってオーソドックスな服装。

 武器は渡されなかったが、拳で戦えって事ですかね? 止めてくださいよ、俺喧嘩あまり強くないんで。

 ──ってそうじゃない。

「じゃなくて、俺の肉体強化の話だよ。あれって結局俺に何したんだよ」

「ああ、あれか。心配するな、我の力をほんの少し分けてやってお前の身体能力を実戦で使える程度まで引き上げてやっただけだ」

 なるほど、道理でさっきから妙に力が湧いている訳だ。キスによる魔王の力の恩恵。それこそが先程までの出来事の心理というわけだ。

 ──にしても、ほんの少し分けてくれただけで人体強化って……フィアナがフルパワー出したらどうなるんだ……? 仮にも魔王だし、やっぱ想像以上の化物なのか……?

 俺はそこで考えるのを止めた。

「あのさ、フィアナって本気出したらどのくらい強いの?」

「我か? 少なくとも今のお前の53万倍はあるだろうな」

 お前は何処の自称宇宙の帝王だ。

「まぁしかし、地図を見る限り我らがいるのは西の端だな」

 フィアナがいつの間にか広げていた地図を覗き込むと、地図の左端──要するに大陸の西側に、立体映像のように黒と青の小さな逆三角形が浮かんでいた。どうやら魔法の類いで紙の地図にGPSのように俺達の位置を映しているらしい。色からして俺が青でフィアナが黒か?

 しかし、思えば遠くまで飛ばされたもんだ。

 俺が落ちてきたパンデモニウムのフィアナの城は大陸の右側、その中心に位置している。距離感が全く分からないが、恐らくカナダの右上からアフリカ大陸の希望峰くらいは飛ばされたんじゃないか? もちろんカナダから西に、希望峰から東に伸ばして太平洋を横断する直線でだぞ! 大西洋突っ切った距離じゃ無いからな!?

 まぁ、いつかは城に戻ってくるんだ。そんなことは気にしないでおこう。

「えっと、ここから一番近い町は」


「──ちょっと待ちなお二人さん?」


 その時、俺の言葉を遮るように前方から声が投げ掛けられた。

 見ると、目の前には緑色の装束を纏った人相の悪い野郎共が。その一団は俺らの逃げ場を無くすように周りを取り囲んだ。

 まさか──盗賊?

「へっへっへ……。お二人さん、ここを通りたきゃ金目の物全部置いてきな? そうすりゃ命は取らねぇからよぉ……」

 リーダーと思われる男が、下劣極まりない口調で語りかけてくる。まるで見本のような盗賊だ。

「なるほど……。でも、俺らが盗賊さんの話を聞くと思う?」

 流石にフィアナの前で盗賊相手にヘイコラする訳にもいかないので、無理して相手を揺すってみる。ハ、ハッタリは苦手なんだよ……!

「勿論、そのつもりだ……。じゃあ、お前は殺して嬢ちゃんは連れて帰るかな……?」

 リーダー盗賊が右腕を挙げると、手下の盗賊が全員身構える。

 ──どうやら、覚悟を決めないといけないらしい。

 息を飲んだ俺はフィアナを庇うように構え、相手の出方を窺う。

 ──俺だって魔王様に、フィアナに見初められた付き人だ。守るべき人が、女がいるなら、男はどこまでも頑張れる。

 俺だって男だ。好きな女を守れないで、何が男か!! 大事な女を守れないで、何が男か!! 一人の女も守れないなど、男の名が廃るっ!!

「ソウマ……」

 見ると、フィアナは俺に隠れて震えていた。

 ──それもそうかもしれない。

 フィアナがパンデモニウムを回るときには、きっと大勢の護衛を連れていたはず。それ故、道中襲われても自分に危害が及ぶことはなかった。

 だか、今この状況で護衛は俺一人。それにここはフィアナにとって初めての土地。怯えるのも仕方が無いだろう。どれだけ巨大な力を持っていても、そんなの何処吹く風だ。

 ──だが、怯える魔王様を安心させるのも付き人の役目だ。

「──安心しろ、フィアナ」

「ソウマ…………?」

「俺は仮にもお前の付き人。こんな状況の1つや2つ、打開できないでどうするんだよ。だから──安心しろ」

 すがるように見つめるフィアナの頭を、心を落ち着かせるように撫でてやる。俺にはこのくらいしか出来ない。だから、その出来ることを全力でやる。


 それが──付き人の使命だ。


「最後のお話は済んだか?」

「……お前こそ可愛い部下に最後の話くらいしてやらないのか?」

 俺の返答に、リーダー盗賊の眉がピクリと動いた。どうやら癪に触れたらしい。

「ガッハッハッ!! そうかそうか、悪かったなぁ!! ならばてめぇら──」

 まるで勝利を見据えたような下劣な高笑い。聞くだけで虫酸が走る。

 リーダー盗賊は一頻り笑い終えると。


「────殺れ」


 ──その右手を降り下ろした。


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