出発
やったよ……俺…………念願の彼女……手に入れたよ……! こんなに嬉しいことはない……!!
──いや、待て。正確にはまだ「彼女では無い」んじゃ無いのか!?
さっきのフィアナの「お前の事が好きだぞ」という台詞は、言うならば告白。それに自分の思いを乗せて答えを返した時、本当に相思相愛の恋人同士に──俺にとっての彼女たる存在になるのではないか!?
だが俺はフィアナの告白に答えを返していない。
ってことはまだ彼女じゃ無いじゃん(泣)
ならば即急に答えを返すまで!
「……ソウマ? いったいどうした、急に黙り混みおって」
「え? ああ、大丈夫だ。問題ない」
やべ、何露骨に死亡フラグ建設してんの俺。それよりも早いとこフィアナに答えを返さねば。
俺は、いつの間にか昂っていた心臓の鼓動を落ち着かせ、上半身を起こしてフィアナに向き直る。
そして、非モテの脳で導きだした告白の返事を──
「──フィアナ。俺も……お前の事が──好きだ」
──誠心誠意、真実の思いと共に、目の前の魔王に告げる。
「…………その言葉を待っていた」
ぎゅっ。
フィアナは魔王らしからぬ笑顔を見せると、両手を広げ俺を抱き寄せた。
初めて出会った時と違い、逆に俺の胸に顔を埋めるフィアナの身体は、とても暖かい。これが、互いに思っている相手の暖かさなのだろうか。非モテな俺には全然分からない。
だが、その暖かさは──決して悪いものではなかった。
「全く、出会って間もないというのに早くも恋人か我らは」
「お互い思いあってて恋人になるのに、時間は関係ないだろ?」
「はは、それもそうだな」
そう、恋人になるのに時間なんて概念は関係ない。大事なのは、「互いが互いをどれだけ思っているか」。例え10年かけて思いを実らせようが、マジで恋した5秒後に恋人同士になろうが、それは──関係ない。それらの出来事は、全て、恋人になった──互いを思い合っている事実に変わりはない。
「では、早速行くとするか。そろそろ出発しておかないと、今夜は野宿になる」
「うげ、それはやだな。じゃあ行くか──フィアナ」
「ああ──ソウマ」
俺はフィアナと手を繋ぐと、まっすぐ歩き始めた。