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侵略、そして逆襲、そして──


「──────────っ!!??」


 えっ、フィアナさんいきなり何やってくれてるんですか!? こんな唐突にキスって何故ですか!? おかしいですよ、フィアナさん!?

 即座に俺は顔を背けようとしたが、後頭部と頬を固定しているフィアナの両手がそれを許すはずが無く、結果として俺は1mmも頭を動かせなかった。

 ──さらに。


 にゅるり。


 唇を割り、フィアナの舌が俺の口内に侵入してきた。

「んんっ………んん……」

 あの、ちょっと!? すいませんけど俺の目の前で性欲そそるような声を出さないでいただけますか!? 俺の一握りの理性が崩壊しそうなんですが!?

 だが、当然その懇願はフィアナに届くはずも無く、当の本人は更に激しく攻め立てる。

 割り込んだ舌を俺のそれと絡め、更には自身の口内に引きずり込む。そして、引き込んだ舌をゆっくりと、かつ情熱的に蹂躙。その度にフィアナは俺の理性を崩壊させかねない声を漏らす。

「んん……ぁむ…………んんっ……」

 あの……もう……限界なんですけど…………。

 理性の壁の一部が崩れかかってる脳内で、俺の中の天使と悪魔が一悶着を始めだした。

 ──もう欲望に任せて襲っちまえよ? どうせ子供なんて滅多に出来ねぇんだからよぉ。

 ──まて、お前には乙女を思う心と言うものは無いのか? 子供などまだ早すぎる! 百歩譲ってもキスが関の山だ!

 ──へっ、キスくらいでこいつが止まるわけがねぇだろが!!

 ──黙れ小僧! 貴様にこの男が救えるか?

 ──知るかよんなこと! ならお前が言う通りキスまでならいいってのか!!?

 ──そうだ。私はこの男の理性を信じる。

 天使、キスまではとか言わないで止めろよ。

 だけど脳内の天使vs悪魔の戦いは「キスだけなら」という事で和平に持ち込まれた。つまり、俺の脳がキスくらいまでなら理性崩壊を許したということ。ならば、俺はその脳の決断に従うまでっ!!

 ──その時、俺の脳内で理性という壁の一角が崩れ落ちるような音が響き渡った。

「んっ…………んむっ!?」

 今までのお返しとばかりに、俺はフィアナの口内を舌で蹂躙していく。

 舌を、頬を、口内を余すところなくその舌で執拗に攻め立てる。

「……んっ……んー! …………んむっ……ぁむ……んん……!」

 先程まで余裕に溢れていたフィアナの声に余裕が無くなった。俺に攻められることを予知してなかった上での反応だろうが、今の俺には関係ない。

 先程されたように左手で頬を、右手でフィアナの後頭部をがっちり固定する。これで、フィアナは俺から逃げられない。

 ──あとはじっくりと、気が済むまで味わうだけ。

「ん…………んぁう……! んん……んっ……んっ……!」

 そして、そのまま攻め続けること数分。俺の頬と後頭部を固定していたフィアナの手が力を失いずり落ちた。

 ──そろそろ潮時か。

 俺は攻めるのを止め、フィアナの口から銀の糸を引きつつ離脱する。

「ぷぁ…………っ……!」

 すっかり顔を真っ赤に染め上げたフィアナは、精魂尽き果てた様子で四肢を地面に投げ出した。光が僅かに失せた眼は熱っぽく、かつエロティックに潤み、息も絶え絶えな呼吸をする口からは唾液が一筋輝いていた。

 正直フィアナともっとしていたかった自分もいたが、彼女の身体の心配を考察した結果あの辺で止めておいた方がいいという結論に達した。

 まぁ、何はともあれ──ご馳走さま。

「ソ……ソウマ…………」

「ん、何だ……?」

 息も絶え絶えになりながら、こちらを見つめるフィアナに俺は返事を返す。

 まぁ、こっちも攻め続けてフィアナと殆ど同じ状況何だけどな……。

「お前……彼女は居ないとほざいておったが……今のはファーストキス…………に……なるのか……?」

「えっと…………まぁ、そうだな。少なくとも、人間出来てからは初めてだ」

 そう、俺はこの18年間、一度たりとも彼女が出来たことがない。友達と自分からすれば普通以上イケメン未満のこの顔。

 だのに、一度も彼女が出来ない。

 まぁ、一度も告白とかしなかった俺にも非があるだろうが、それでも告白とかされないのはおかしくねぇか!? 友達の中にいる女の子は全員他人以上友達以下の存在。俺に好意を持ってるとは到底思えなかった。

 となると、結果的に1つの結論が見えてくる。


 ──敢えて言おう、「非モテ」であるとっっっ!!!!


「ふむ、まぁ何があったのか知らんがそんなに号泣するな」

「だ……だっでよ"ぉぉおおぉぉぉ…………」

 人間が出来て早十数年。そんな長い間女の子にモテなかった俺の気持ちなぞ分かるまいっ!!

 あぁ、溢れる涙が止まらない。

「……はぁ、思い出せソウマ。我がどういう条件でお前をヴァルシュエルに呼んだか」

「どういう……条件…………?」

「うむ。我は付き人となるに相応しい人物を『我を好く男』……そして、『我が好く男』を条件に呼び出した」

 えっと、つまり……『フィアナを好きになる男』で『フィアナが好きになる男』が俺……。

 それって──


「我は──お前が好きだぞ、ソウマ」


 俺が結論を出す前に、フィアナが結論を出した。

 ──自身の顔を、これ以上ないというくらい朱に染めて。


「えっと…………俺ら出会ってまだ1時間くらいしか経ってないよな?」

「だから一目惚れだ。お前を見た瞬間──惚れた」

 ──よし、ちょっと言いたいことがあるんだがいいか?

 と、その前に深呼吸。

 すーはーすーはー。

 ──よし、準備万端。

 じゃあ言うぞ。

 言うからな? 

 本当だぞ?

 ──よし。

 行くぞ。

 御大将、俺だ。霧風ソウマだ。

 あんたの名言を借りるぞ。



 ──我が世の春が来たぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!



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