赤ずきんVS俺VS……?
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「──という訳で死ねぇぇぇぇっ!!」
「まず主文を話せぇぇぇっ!!」
少女が腰から引き抜き降り下ろしたショートブロートをすれすれで避けると、フィアナの手を取って店の奥へ逃げる。
──店の外へ逃げては、被害が広がりかねない。
咄嗟にそう判断した上での行動だった。
幸い他の客は全員店の外へ避難し店員も裏口から逃げたようで、店の中には俺達と少女しか居ない。これならば人的被害は起こり得ない。
店の奥まで逃げ込むと、少女の動向を確認するため振り返る。
「ぐ……ぐぬぬ…………!」
そこには、机に食い込んだショートブロートを精一杯引っこ抜こうとする少女の姿が。どうやら先程降り下ろした際に食い込んだらしい。
「ふん…………っ!! あーもうなんでぬけないんだよっ!! このやろっ!!」
頭に血が昇りやすいのか、少女は力任せにショートブロートの柄に蹴りを入れる。
がん。
「くーがっ!?」
結果、抜けなかった。それどころか足の当たり所が悪かったようで、頻りに蹴り込んだ足を抱えて跳ね回っている。まるでカートゥーン映画を見ているようで、自然と笑みが溢れてきた。
しかし現在、そんな事をしている状況では無いことは先刻承知。
本来ならここで先手を打ちたいのだが……。
「ああっ……くそっ! 駄目だ……」
「ソウマっ!?」
ずっと我満してきた空腹がここに来て限界を迎えてしまい、俺は床に倒れ伏してしまう。最早、起き上がる力さえ無い。
あぁ……きれいな川の向こうでばぁちゃんとじぃちゃんが手を……。ばぁちゃん……俺のこと、褒めてくれるのか……? じぃちゃん……ずっと俺の事を思って……。ばぁちゃん……。
「しっかりしてよソウマっ!!」
「……んあっ」
フィアナに叩き起こされ、俺は無事に三途の川の畔から帰還した。危なかった、もう少しで逝ったかと思ったよ。
しかし依然として状況は変わりない。こちらは空腹で動けず、あちらはショートブロートが抜けずに動けない。
最悪フィアナを戦わせる手も考えたが、守護対象に危険を晒させるなど付き人の恥だと思い棄却した。
ならばこの身体に鞭打って戦うか? いや無理だ。この状態では幾ら鞭を打てど、立ち上がれそうには無い。謎のテコ入れがあっても無理だろう。
少女は未だにショートブロートを抜こうと悪戦苦闘しているが、いつ抜けて襲い掛かってくるか分からない。1秒後か? 5秒後か? 1分後か? 10分後か?
それまでに、何とか少女を止めなければ。
「ソウマ、しっかりしてよ! ソウマ!」
フィアナが元気付けてくれる声を聞きながら、俺の意識は再び遠退き始めていた。きっと次倒れたらすぐには起きられないだろう。
──何か、何か助けとなる物は無いのか?
俺は最後の最後に、落ちていく意識の中で蜘蛛の糸を探そうとしていた。
何か、何かこの状況を打開出来るようなもの……! 何でもいい、何かっ!!
手を、足を、嗅覚を、触覚を、視覚を、聴覚を。五感全てを使って足掻く。
──その時、俺のそうした足掻きを神様が見据えたのか。
──俺の嗅覚が何かを感じ取った。
なんだろう…………何か、香ばしい。
暖かな匂いに、濃い独特のこの香り────まさか!?
瞬間、俺の意識は覚醒した。
そして即座に起き上がって辺りを見渡すと、その匂いの元を見つけた。
──ビンゴ!
「よっしゃ、やっとぬけたっ!!」
それとほぼ同時に、少女が机に食い込んだショートブロートを引っこ抜いた。まずい、もう時間が無い。
俺は無我夢中で、その匂いの元に飛び付いた。
「今度こそ死ねぇぇぇぇっ!!」
刹那、少女がこちらに突進してくる。
フィアナに向かい振り翳されるショートブロート。
それに対し、応戦の構えを取るフィアナ。
「ぬおあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」




