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飯食いたい


▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 △ △ △ △ △ △ 



「ほらっ、ソウマ! 早く早くぅ!」

「分かってるって」

 暖かい日の光が降り注ぐリカルデの町。その中で一番活気を見せる1つの通り──町の人間が《活気の通りライブリネス・ストリート》と呼ぶその場所を、俺とフィアナは歩いていた。

 いや、正確に言うと、はしゃぎまくって走り回るフィアナを俺が追い掛けている構図になる。誰得だこんなの。俺得だ。

 昨日まで童貞で非モテで彼女無しだった俺には、デートが如何なる物なのか分からない(童貞関係ねぇ)。だが俺のデートの定義は、「フィアナと共に楽しめる時に楽しむこと」と決めた。

 だから例えこんな構図でも、俺が、フィアナが互いに楽しめたら、それは立派なデートだ。

「ねぇねぇ、まずどこから行ってみる?」

「決まってるだろ──」

 ぐるるるるる。

「──飯屋だ」

「あ、そう言えば昨日から何も食べてなかったよね。晩御飯も朝御飯も食べ逃しちゃったし」

 ああ、そう言えばそうだった。

 昨日の晩飯はフィアナと一晩中のギシアンで食べ損ね、朝飯はフィアナとの入浴で間に合わず、結局この世界に来てから何も食べていない。気付けば空腹が限界に近付いて、いつ倒れてもおかしくはなかった。よくこの状態で一晩中頑張ったな俺……。

 そんなこんなで流石にヤバイので辺りを見回すと、少し先にレストランのような建物が見えた。(言い方は悪いが)平屋作りに通りに面した幾つもの窓、そこからチラリと見える沢山の机と椅子が置かれた内装。

 少し近付いて看板を見ると、



 《あなたの腹を満たします~レストラン ガフィル~》



 よかった、レストランだった。店内に客の姿も見えるので、ちゃんと営業しているようだ。

 それを確認すると同時に、香ばしい香りが鼻をつく。間違いない、これは老若男女誰もが愛するインドの味────カレーだ。

「あ、すっごくいい香り!」

「だな。まさかこっちで嗅げるとは思わなかったけど」

 やっぱカレーっていいよね。特に食欲をそそるあの匂い、あれがとてつもなく堪らん。味も、お袋の味を始め各家庭毎に違うからバリエーションに富むのがいい。スパイス1つで味が全く変わるから凄い。ちなみにカレーの中にいれる肉は鶏肉か豚肉派だ。

 ああ、味を考えただけでヨダレが……。

「よし、朝御飯はここで食べよう! いいよね、ソウマ?」

「ああ、構わないよ。てか寧ろここにしてくれ」

「よーし、なら早速いこーっ!」

 カレーのスパイシーな匂いで空腹が増大しふらつく俺を、フィアナは腕を組んで店内へ引き込んでいく。性格素に戻ってもパワーは凄いです。

 カランカラン……。

「「いらっしゃいませー」」

 中に入ると、にっこり笑顔のウェイトレスさんがお出迎え。普通に可愛い彼女たちを見て、元の世界のメイド喫茶を思い出した。もうあの楽園(エデン)に戻れないと思うと、心が痛い……。

「なーにさっきからウェイトレスに眼がいってるのかなー?」

「いだだだだだだだだだたっ!?」

 ウェイトレスを眺めていたら、案の定フィアナに怒られました。魔王様だけあって頬っぺたつねるのもお強い……。

 てか、早く飯食いたい……。

 なので早速俺達は席に着いてメニュー一覧を開いた。

 一見すると、元の世界のレストランの物と大差ない。正確には一流レストランの、だが。写真を撮る技術が無いのか、メニュー一覧に載っているのは文字だけで、料理の写真は一切掲載されていない。元の世界のレストランの一般的なレストランは、大概こういうのは画像つきなので、画像が付いていないとなると一流レストランしか考えられない。一流レストランの、と言ったのはその為だ。

 値段はそれなりに標準的で、一部羅列すると──



 モーニングセット・・・・・860エル


 モーニングブレッド・・・・470エル


 ランチセット・・・・・・・940エル


 炒飯&餃子セット・・・・・620エル


 野菜炒め・・・・・・・・・420エル


 ──といった感じ。

 勿論他にも色々あるが、全部羅列するのはめんどいから却下。

 で、俺達がお望みのカレーは800エル。福神漬けを10エルプラスで付けてもらえるらしい。てか、ファンタジー世界なのに福神漬けとか炒飯とか餃子とかあってよろしい物なのか? 

「フィアナ、カレーの他に何か食うか?」

「え……っと、ちょっと待ってて! 今選ぶから……」

「そんな急がなくてもいいぞ。時間はあるんだから」

「そ、そうだよね! え、えっと…………あ、じゃあこの野菜炒め!」

 フィアナが指差したのは、先程羅列した野菜炒め。カレーでは摂取不足になる野菜類を補う事が出来るので、悪くない組み合わせだ。

 取り合えず俺はカレーとモーニングブレッドに決めた。やっぱ朝カレーに合うのはパンだね、うん。出来ればチーズも欲しいところ。

 と、俺はメニュー一覧の最後の方に「ドリンクバー」の文字を見つけた。

「あ、せっかくだからドリンクバーも付けるか」

「え…………どりんくばあ?」

 あ、こいつドリンクバーを知らないパターンだ。ファンタジー作品には必要不可欠(かもしれない)知識に斑があるキャラ。城暮らしのフィアナだったから、レストランとかにしかないドリンクバーは初めてなのだろう。

 そんなフィアナ、修正(教育)してやる。

「フィアナ。ドリンクバーっていうのは、いろんな飲み物を御代わり自由です、っていうサービスだ」

「え、じゃあリンゴジュースもオレンジジュースも飲み放題!?」

「まぁ、少しばかり金もかかるけどな」

「じゃあお願い! 絶対にお願いっ!!」

 眼をシイタケみたいに輝かせ、まるで子供のように懇願するフィアナ。そんなに未知の物を試してみたいのか。

 それといつの間にか上下関係が逆転しているような気が……。この状態のフィアナは俺にデレデレだから、それ故なのか?

 すると、丁度いいタイミングでウェイトレスがお冷やをもってやって来た。

「ご注文はカレーですか?」

「いや、なんでお客に対しての開口一番がそれなんだよ」

 ウェイトレスの教育がなってないんじゃないかこの店。

 まぁ、実際注文したいのはそれだから別にいいが。

「いえ、この店にご来店されるお客様は、大概カレーがお目当てなので」

「まぁ店の前であんなにカレーの匂い発してればそうなるわな」

 なんというフィッシング商法。元の世界でも画期的過ぎるぞこれ。店側が意図せずにダクトから漏れる匂いで釣られることはあるかも知れないが、店側がわざとらしくやってるのは初めてじゃなかろうか。

 それなりに宣伝してるんだから、カレーも美味いんだろうな?

「では、ご注文を伺います」

「えっと、じゃあカレー2つと野菜炒め、モーニングブレッドを」

「あとドリンクバーも!!」

「かしこまりました。では、暫しお待ちを……」

 メモに注文を書き込むと、ウェイトレスは一礼して厨房の方へと消えていった。


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