事を終えた朝
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「ん…………あ?」
眼を覚ますと、窓から射し込む光が顔を照らしていた。
窓の外からは何故かラジオ体操第一の音楽。昔聴いたあの声ではなく、最近のやつ。あれ好きだったんだけどな……。
しかしこの音楽が流れてるって事は、今は早朝。もちろん、これが元の世界と同じ時間帯に放送かなんかがされていればの話だ。
「──いつの間にか寝ちゃったみたいだな……」
──そう、昨日の夜。俺はフィアナと一線を越えてしまった。
本心では拒否っていたのかも知れないけど、気づいたら俺はフィアナを弄んでいた。指を、舌を、あらゆる部位を使って。
自分でも、童貞だったのが嘘に思えるくらい凄かった……。しばらくは黒歴史として封印しておこう。
──てか、やっぱりフィアナも花も恥じらう乙女だということを再認識できた。
怒られるんで限りなくアウトに近いセーフな台詞とかを一部抜粋すると、
『ソ、ソウマ……だいっ…………すきぃ……!!』
とか、
『ま、まって……そこは…………らめぇぇぇぇぇぇぇっ!!』
とか、
『わたし……もう離れたくない…………』
とか、
「ソウマの…………で、お腹いっぱい……」
とか────ん?
ちょっと待て。今の台詞、覚えてる限りじゃ昨日の夜に聴いてないぞ? しかもなんかやたらはっきり聴こえたような……。
──まさか。
そう感じた俺は、直ぐ様隣に眼をやった。
「んん……むにゃ…………」
そこには、やすらかな寝顔で寝息を立てるフィアナが。どうやらさっきのはこいつの寝言らしい。まったく、ビックリさせやがって。
「ん…………あれ……起きたのか……ソウマ?」
あ、お目覚め1秒で魔王様モードになりましたね。
「ああ、お前が起きる少し前からな」
「そうか……。それにしても、昨日は中々上手だったぞ?」
「お目覚め1分足らずで変態発言すんな」
こいつ、気を抜けばいつ危険な事を言い出すか分からないから安心できん。限りなくアウトに近いアウトな台詞を放たせはせんぞ。
「実際そうだったのだから仕方ないだろう? 仮にもデビリーシャンの頂点に立つ私を、何度も絶ty」
「はいストップそれ以上言うと怒られて俺らの存在抹消されちゃうかもしれないからその辺で止めようねー」
「……別にいいではないか、別に」
「俺には全然よくないの!! てか、早く服着ろ! 俺も着るから!」
「まったく、これだから童貞卒業直後は──あ、あれ?」
俺の台詞に色々言い掛けた直後、身体を半分起こした所でフィアナの動きが止まった。何やら顔が少し青冷め、冷や汗が流れ出ている。
何が始まるんです!?
「ど、どしたフィアナ?」
「マ、マズい……。昨日ヤったせいか……腰に力が入らん……。腰が抜けたみたいだ……」
「なんだ、そんだけか。ほら、肩貸してやるから」
「うぅ、すまない……」
俺が腕を差し出すと、フィアナはゆっくりと体重を預けてくる。その瞬間よろめきかかったが、何とか床に付けている左足で踏ん張って持ち直す。
それにしても、二人の男女が素っ裸で突っ立っているこの状況は色々ヤバい気が……。頼むから爺さん来るなよ?
「ソウマ、ちょっといいか?」
「ん、何だ?」
「────風呂、入らないか?」
「…………ワンモア」
「だから、風呂に入らないかと言ってるんだが……」
──よし、ちょっと心の中で叫ばせてくれ。
お風呂イベントktkrーーーーーーっ!!
フィアナのその言葉が聞き間違いではないのを認識した瞬間、俺の心の中のファンファーレが鳴り響いた。
ま、まさか……こうも早く恋愛ゲームやその手のエロゲーなんかである一緒にお風呂イベントを体感出来るというのかっ!? もし本当なら神様、俺はあんたを一生掛けて崇めてもいいっ!! もちろん出来る限りでだがっ!!
嗚呼、こんなに嬉しい事はない……!
「…………何を号泣している。さっさと入るぞ。早いとここのイカ臭さをどうにかしないとな……」
「あ、あー。なんかすまない……」
「気にするな。我がお前を求めてやった事だ。非は我にある」
「それはそうだけどさ……」
確かに襲ってきたのはフィアナの方だ。性欲に蝕まれた、半ば獣のように。
だが、襲われた後にフィアナを弄んだのは、紛れもなく自分だ。それこそ、立場を逆転して獣のように。
そうなったのは俺の理性が脆いからだ。仮にフィアナが子供を孕んだ時には、俺はその罪も含め全力で彼女をサポートしてやる。
最早、覚悟は出来ていた。
「そう気を落とすな。侘びに風呂場でもシていいぞ」
「絶対やんねぇからな」
次回は──お待ちかね(?)、お風呂シーンです!
8/19
後半を大幅改稿しました。