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所持金想定額がとんでもないことになりました。


「仕方あるまい。我の手持ちは小銭しか無い上、金はこれを売って得ようと思っていたからな」

 そう言ってフィアナが財布から取り出した物を眼にして、俺は絶句した。

 フィアナの手に広げられた物。それは──


 ──手の平サイズの金の延べ棒。


 その数──11本もある。

「ちょっと待て。パンデモニウムでは財布に金の延べ棒入ってるのが一般常識なのか?」

「そんなわけ無いだろう。これは今回の旅にあたって宝物庫から少し持ってきた物だ」

 声のトーンを落として問い質してみたが、案の定突っ込み返された。いつの日かこのやり取りがお約束になる時が来るのだろうか。個人的には来てほしくない。なんかすぐに飽きられそうだし。

 しかしこんな延べ棒をひょいと持ってこれるとなると、宝物庫の先入観と相まって中は豪華絢爛な財宝が山のようにあるのだろう。もし元の世界に変えることになったら少しくらい分けて欲しいです。

「で、その延べ棒全部で大体幾らになるんだ?」

「専門家じゃあるまいし、そんな事を言われても我には正確な値は分からん。まぁ、仮に一本500gとすると、11本で5445000エルくらいが妥当だろう」

 ということは一本495000エル、1g990エルくらいか。どうやら金の価値は日本準拠らしい。

 しかしそんなことより驚愕すべきは、フィアナの手の平に現在500万エル強の大金が握られていること。500万あったら2000円のガ○プラ2500個買えるじゃん。毎日1個作っても6年くらい作り続けられますよ。

 しかし、金はその力の代償として、巨額を持っていると金銭感覚を奪う呪いを持っている。

 多くの金を持っていると、人は金を使わずには要られなくなるのが大半。後先考えずにしっちゃかめっちゃかに使い、一時は快楽を得られる。しかしそのあとは一文無しになるし借金はするわ破産するわ、ろくな事がない。

 その点においては金塊や金の延べ棒は優秀だと俺は思う。少し切り崩して使おうと思ったら物理的に切り崩して貨幣に変えなければいけない。実に面倒だが、それがかえって好都合。面倒な事を避けて金を使わなくなるので、結果的に金が手元から離れるスピードを遅くできる。

 以上の事は俺の持論なので悪しからず。

「では、早速町に入って両替商を探すぞ。早く金を作って飯を食べたいからな」

「それと、俺とのデート──だろ?」

「そ、そうだな。お前との初デートだな。分かっているぞ、うん」

 超キョドってた。

 その頬を朱に染めた顔が堪らなく愛しいのは何故でしょうか? やっぱり魔王様の威厳? それとも妖絶さ? それともおっぱ──ゲフンゲフン。欲望が出すぎました。

「そ、そんなことより早く行くぞ! 早くしないと餓死する!」

「そんな簡単には死なないだろ。悪魔は知らんが人間何も食わないで一週間は生きられんだから」

「ソウマは我に死ぬほど辛い苦しみを味わい続けろというのか!」

「いや、そこまで言ってないだろ」

「よし決めた! 今夜ソウマの精力絞り尽くして同じくらいの苦しみを味わわせてやる!」

「どうしてそうなるんだよ!?」

 いかん、こいつ俺の貞操を狙ってやがる。よく考えればこいつは女悪魔、恐らくサキュバス系。その手の悪魔は基本人間との性交を前提として行動している。

 つまりフィアナは俺と合体(暗喩)したい訳で。

 いや、俺だってそうなって欲しいとは思ってるよ? だって女の子とベッドの中でキャッキャウフフするのは男の夢であり希望だし! 童貞だって卒業しないとと思ってるし! ベッドの上で誘惑しているフィアナにル○ンダイブして抱き締めてあげたいし! それに──いや、これ以上は怒られるから止めよう。

 でも、そんな気持ちを思っていても、謎の自制心が邪魔をする。

 よくわからないが、その気持ちの内の1つは「緊張」というのが辛うじてわかる。が、それまでだ。

 フィアナから攻められれば勢いでヤってしまうかもしれないが、この謎の気持ちが有る限り、俺からフィアナを襲うなんて事は無いだろう。

 ──つくづく情けない男だ。

 そんな風に心の中で自分の小ささを嘆いた時だった。


「おやおや、お二方。こんな時間にどうされたかな?」


 不意に、背後から声を掛けられた。

 振り向くとそこには、ローブを纏った一人の老人が立っていた。年は60代後半から70代前半だろうか。しかしそんな風貌でありながら、至って健康そうに見える。腰も俺らと負けず劣らずに真っ直ぐだ。

「あ……いえ、俺達さっきこの町に着いたんですけど、ちょっと両替商を探そうと思って……」

「ほぅ、旅のお方か。なら着いてきなさい、案内しよう」

「よ、よろしいのですか?」

「構わんよぉ。丁度わしの家が両替商の近くでの、散歩から帰るついでじゃ。なに、困った時はお互い様と言うじゃろ? 気にせんで着いてきなさい」

 そう告げると老人はすたすたと町に入っていく。折角なのでお言葉に甘えることにして、俺はフィアナの手を引いて老人に付いていった。


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