町に着いた──と思っているのか?
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「おっ、やっと見えてきた」
フィアナの決心イベントを終えて歩き続けること数時間。俺達が登りきった小高い丘の先に、ようやく町が姿を現した。
森の近くに佇んだファンタジーならよくありそうな光景。
遠目でよく見えないが、街並みは中世ヨーロッパを連想させる。近年のアニメだと「ご○うさ」辺りのそれに酷似している。余談だがあのアニメ、あれは良いものだ。
町の周りには広大な、恐らく麦畑が広がり、その回りはモンスター対策の為か不規則に並んだ壁が幾つも連なっている。ああすることでモンスターは隙間を縫って通らねばならず、結果的に町の人々が逃げる為の時間稼ぎになるのだろう。
やはり人間、生きるために知恵を搾っているらしい。
「ふむ、なかなかに良さそうな町だな。着いたら早速宿を探すぞ」
「ああ。でもその前に──」
ぐるるるるるるる。
「──腹減ったから晩飯食おうぜ?」
思えば今日はほとんど何も食べていない。食べたと言えば、ヴァルシュエルに呼び出される寸前に朝食で食べた永○園のお茶漬けとシュガートースト1枚のみ。
たったこれだけのエネルギー供給でよくここまで歩いてこれたとつくづく思う。多分今日だけで10kmは歩いたぞ?
正直、ほんっっっっっっっっっっっっっとに疲れた。
んで、腹減った。
「ソウマ、だらしない腹の音を出すな。はしたな」
きゅるるるるるるるるるる。
「フィアナ、だらしない腹の音を出すな」
「────────────っっ!!」
揚げ足を取られて恥ずかしいのか、フィアナの顔が真っ赤に染まる。終いには両手で顔を覆い隠してその辺を転がり始めた。
ああ、本当に可愛いです魔王様。何故貴方はそれほどまでに美しいのですか。
しかしそんな夢のような光景もすぐに終わりを告げ、起き上がったフィアナは、むっ、と頬を膨らませてこちらを睨む。
なのでこちらは「付き人の分際で揚げ足とってすいませんでした」の意を込め、軽く一礼して謝罪する。
「では行くぞ! 我も腹が減った!」
そう言うとフィアナは一人ずかずかと歩き始める。見る限りご立腹の様子だ。
「お、おい待てよフィアナ!」
「ふん! 我と共に歩みたければ、我に追い付いてみろ!」
そう返すとフィアナは小走りでどんどん先に行ってしまう。本当にご立腹のご様子で。
しかし追わないわけにもいかない。フィアナの姿が見えなくなる前に、俺も駆け出した。
100m13秒53の速力、舐めないでもらおうか。
──10分後。
「「ぜぇ…………ぜぇ…………ぜぇ…………」」
俺とフィアナは町の入り口寸前でぶっ倒れていた。
それもそのはず。フィアナとの追い掛けっこは、俺が追い付けばフィアナがスピードを上げて引き離し、それでも追い付けばさらにスピードを──のイタチごっこ。
結果的に両者スタミナ切れ寸前となったわけだ。
「フィアナ…………つまらない意地……張るのは…………やめようぜ?」
「ゆ……譲れぬ物は……こちらにもある……!」
お前はどこのイノ○イドだ。
「じゃあ、どうやったら……意地張るの止めてくれる?」
「……『今晩は我の言うことを全て聞く』……で、どうだ?」
「ごめんなさい、その字面だといろんな事が想像できて色々危険なんですが……」
「ならば、晩飯のついでにデートはどうだ? それならまだいいだろう?」
「よろしくお願いします」
フィアナがその条件を提示した瞬間、俺はスタイリッシュ土下座を鮮やかに決めていた。
だってデートだよ? 女の子と一緒に遊ぶんだよ? 全ての男の夢ですよ?
やっぱり、リア充っていいよね! 最高ですよ!
──全国の非リア充の方々すいません。どこぞのおじさんにしまわれてきます。
「よし、ならばこの件は不問に帰す。早速露店街に行くぞ」
「露店街? お祭りの時とか闇市みたいに露店が並んでるのか?」
個人的にはそういうのは大好きだ。闇市は時代が時代だけに行ったことはないが、お祭りみたいに露店が出ていると某偉人紹介漫画で見た。しかしながら法律とかを無視して販売している物が大半なので行く気は失せる。
しかしお祭りと言えばかき氷にたこ焼き。この2つは美味すぎる。露店街にあるなら是非とも食べてみたい。
「闇市は知らんが、まぁそんな所だな。かのB級グルメも集まっていると聞くぞ」
よし、これはたこ焼きとかき氷が食えるフラグktkr。
待っていろたこ焼き! そしてかき氷! お前らまとめて胃袋に放り込むっ!!
「あ、その前に両替商を探さないと」
「どんどん話が逸れるなおい」