周りの視線
やー、花粉症が辛いです。
皆さんも気をつけて。
審査当日の朝、外はもちろん雨が降っている。
玄関から出たカイトは、トンクを使わず傘本来の機能を使って会場まで移動する。
(受けるヤツはどのくらいいるんだろう……)
ピリッとした緊張感が己に張り付いているのを意識しながら、歩みを進めていく。
(まぁ、今考えても仕方ないか)
審査会場の場所は、カイトの住まいから徒歩で30分程度の広場である。会場入口には、“第386回ガンナーギルド審査”と大きく描かれた看板が掲げられていた。何ヵ所も受付を用意しているらしく、広場の至るところに行列が出来ている。カイトはその中の1つに並んだ。
「氏名、住所、年齢を記入してください」
「よろしくお願いします」
受付で登録を済ます。記入した年齢は適当だ。ある日、いつものようにジャベリンで飲んでいると客の話題にカイトの年齢について考えようと上がったことがある。なんせ手がかりが何もないのでけんけんがくがく激論の末、パイクより一回りは下だろうという誰かしらの一言が結論となった。
そうしたわけで、カイトは初対面の人には19歳と名乗ることにしている。生まれた場所はジャベリンだ。
(あれ。ジャベリン生まれってことにすると、まだ0歳ってことになるのか)
なんて、緊張感のないことを考えているカイトに後ろから声がかかった。
「ちょっと」
「……はい?」
「貴方もまさか受けるの?」
「そりゃ、受けるからここに居るんだけど」
声をかけたきた女は、そっかぁ、倍率が上がるなーなんて悔しがっているみたいだが、おい、お前は誰だ。
「貴方には医学の道が合ってると思うけどなぁ」
女は勝手に決めつけてくる。
カイトはその女を不振そうに見つめているが、当の本人は一向に気にかけていないようだ。
「誰だお前は?」
「お前?あたしに言ったの?」
(しまった。心の声がそのまま……まぁ、仕方ない)
「ああ、そうだ」
「あー、そっかー。はじめてだよね話するのは」
そう言ってあはははと笑う。
……関わらない方が良いタイプかな。
と、カイトは思い直し立ち去ろうと……出来なかった。
「カイトくん」
カイトは驚いて女を見つめる。何でだ?名前まで知られているとは……。困惑するカイトに向かって女はにかっと笑いかける。よろしくね、そう言い残し駆けていった。
……。
……よし、一回忘れよう。
審査に集中しないといけないからな。カイトは気を持ち直す。
無理やりにでも頭を審査に切り替えなければならなかった。
会場には少なく見積もってもざっと1000人はいるようだ。この5%、いや3%で計算して審査を通るのは30人くらいだろうか。
「あれ、なんで……?」
「は?」
「いや、何でもないです」
(なんだ?)
カイトは頬を撫でる。何か顔についているのか確認をするものの、それらしき感触もない。
声を発した男は首を傾げながら遠ざかっていく。
「あ、ホントだ。いた」
「ん?」
「あ、いやいやすみません。何でもないんで」
「……」
どうやら気のせいじゃないらしい。
周りから尋常じゃないくらいの視線を感じる。
(……俺何かしたか?)
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