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感触

原因不明の咳が止まりません。

薬も効かないしなんなんだコレ。



ベーリング卿の邸宅へ帰路につく。

スカイウォークトンクは今回のお礼だからお代はいらないと言って聞かないノウゴロドさんを何とか宥め、2つ購入した。


雨が傘を容赦なく打ち続ける。

隣を歩くフレデリカが口を開いた。


「……ねぇ」

「ん?」

「カイトは明日……帰っちゃうのよね?」

「……ああ。依頼は達成したからな、ギルドへの報告もあるし」

「そう……」


ギルドへの報告は遅れてはならない。

それに、キールのところにも行かないといけないな。


「また……ソレントに来ることはあるの?」

「そうだな。依頼があれば来ることになるだろう」

「依頼がなかったら……?」

「そりゃプライベートで来るかも知れないけど、今はまだ分からないな」

「……」


フレデリカは黙り、そのまま歩いていく。

気がつけば街中央の広場まで来ていた。

広場の中心にあるアーチ型の石門の下で、彼女は歩を止めて傘をカードに戻す。

それに合わせて俺も傘をしまう。

自然と雨を遮る石門の下でお互い向き合う形になった。


「カイト」

「ん?」

「まだちゃんとお礼を言ってなかったわね。ギガントピテクスを退治してくれてありがとう」


そう言って姿勢を正したフレデリカは頭を下げた。


「……」

「……なによ。私がお礼を言ったらおかしいの?」

「いや……」


唐突なお礼の言葉とその所作に思わず見とれてしまった。

さすがは貴族だな。綺麗な振る舞いだった。


「握手しましょう」


そう言ってフレデリカが右手を差し出す。


「……何で?」

「別に良いでしょ、イヤなの?」

「……」


意図が良くわからないまま右手を差し出すと、フレデリカは右手を下げ左手で俺の手を握った。


「おっ……」

「どうせ明日居なくなるんでしょ。ほら、行くわよ」


俺の手を握ったまま歩き始めるフレデリカ。

それに引っ張られる形で石門の下から出る。


「おい、傘……」

「良いの。このまま帰るわよ」


何か……こっ恥ずかしいな……。

そう思いながら前を歩くフレデリカを見ると小刻みに震えているのが分かった。


……傘を差さないのはその為か。

最初はいろいろあったが、別れを惜しんで貰えるくらいにはなったんだろう。


フレデリカの手はとても暖かかった。

その感触が無くならないよう、二人は雨に打たれながらベーリング卿の屋敷に戻って行った。


お読みいただきありがとうございました。

今月は何回更新出来るか分かりませんけど頑張ります!


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