高さ制限
花粉がだいぶおさまってきました。
このまま花粉消えろー。
程無くしてやって来た医者に左腕の傷を治療してもらい、夕食までの時間を部屋で過ごす。
……傷を縫うのは物凄く痛かった。
正直アイシングをお願いしようかと、カイトは一瞬考えた程だがやめておいた。なんせ氷は高いみたいだし、医者も急にそんなこと言われても困っただろうし。
包帯で吊った左腕を眺めていると、ドアがノックされた。
「はい」
カイトが返事をするとドアが開き、フレデリカが部屋に入って来た。無言でこちらをじっと見つめている。
「どうした?」
「……その腕大丈夫なの?」
「ん?ああ、心配いらない。大丈夫だ」
吊った左腕を上下させて見せる。
「バカなことしないでよ、もう」
フレデリカはそう言ってカイトを睨み付けてきた。……心配してくれてるんだな。やっぱ根は良いヤツじゃん。
「そうだ、お前スカイウォークトンクが売っている店を知らないか?」
「……知ってるけど、何で?」
「いや、ギガントピテクスを仕留める途中で壊れちゃってさ。だから新しいヤツが欲しいんだ」
「普通のやつで良いの?」
「ん……?ああ、普通に使えれば良いぞ」
普通じゃないスカイウォークトンクがあるのか?
「良いわ、夕食までまだちょっと時間があるし行きましょう」
「お、今日は優しいじゃん」
「うるさいわね、場所教えてあげないわよ」
プリプリしながら部屋から出ていくフレデリカを、カイトは慌てて追いかけた。
ホールにいたアムカルにスカイウォークトンクを買いに出ることを伝え、二人でソレントの街に繰り出す。
「……スカイウォークトンクもギガントピテクスに壊されたの?」
傘を差して並んで歩いていると、フレデリカが聞いてきた。
「いや、使おうと思ったら動かなくなったんだよ。山頂までは動いてたのにな、あれは流石に焦った」
「ちゃんと手入れしてたの?スカイウォークトンクが壊れるなんて滅多にないわよ」
「うーん、手入れは正直してなかったな」
「……呆れた」
はぁ、と溜め息をつかれる。
いや、そこまで呆れなくても……。
「それにしてもこの街は本当にキレイな街だな。スカイウォークでソレント山の高さまで飛び上がった時に上空から見たけど、赤屋根と白壁の統一された並びには思わず息を呑んだよ」
「……」
「ん?どうした?」
フレデリカが口を開けたままカイトを見つめている。数秒後、その視線は憐れみの色に変わっていた。
「……あんた、バカじゃないの?」
「は?何だよ、いきなり」
「よく死ななかったわね」
「……どういうことだ?」
信じられない、といった表情のフレデリカが説明を始める。
「スカイウォークトンクには高さ制限があるの。制限を越えたらいつ壊れてもおかしくない、これ……子どもでも知ってる常識だけど?」
予想だにしなかったフレデリカの言葉に、カイトは思わず固まる。
「……マジで?」
「ほんと、よく死ななかったものね」
「……」
パーイク!聞いてねーぞ!
あの時、下手したらあの高さから落ちていたのか……。
思わず凍った背筋を伸ばしながら、フレデリカと並んでカイトは歩いていった。
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