作法
スーパーカーに最近ハマってます。
Luckyという歌とwonder wordという歌が最高です。
「……どうすれば良いか分かんないのよ」
両手で顔を押さえてフレデリカは小さく呟いた。
涙を見せないとは気丈だな……。笑うのとは正反対になってしまったが、感情を表に出すことは同時にストレスも発散することになる。
カイトは椅子を反対に回し、フレデリカに背を向けた。
「……お前さ、お母さんや弟のこと嫌いなのか?」
そう聞いてチラっと振り返ると、フレデリカはフルフルと首を横に振った。
「今、俺はお前の方を向いてないから顔をあげても良いぞ」
「……ん」
「まぁ、あれだ……。あまり難しく考えなくても良いと思うぞ。俺なんか家族すらいないけど、こうやって生きてるし」
「……?」
「……誰にも言うなよ」
そう言ってカイトは今までの経緯をフレデリカに話し始めた。背は向けたまま、ジャベリンやハンネルのこと、ギルド審査についても話せる範囲で説明していく。
一通り話終わった後、カイトが振り返るとフレデリカは目を丸くしていた。
「……信じられない」
「……だよな。俺も正直自分の置かれている状況の意味が分からないんだ」
「違うわよ……。ふふっ」
あら? 笑ってる……。
「あはは、アンタ何でそんな状況なのにそこまで楽観的なのよ」
「悪かったな、もともとこんなんだよ俺は」
カイトは不機嫌そうに答える。フレデリカは目尻の涙を手で拭いながら呟いた。
「……私、馬鹿みたいじゃない」
「は……?」
「私がアンタの立場だったら、他人の心配なんてしている暇はないわ。一刻も早く元の世界に帰りたいと思うわよ」
……それを本人に向かって言うか?
誰の為に今ここにいると思ってんだよ。
「……ありがと」
「え?」
「アンタの話を聞いてたらなんかスッキリしたわ」
「いや……」
それは多分、泣いたのと悩みをうち明けたからだろう。……とは、言わない方が良いか。カイトは心の中に留めた。
「私、ちゃんとママとアレクと話すようにするわ」
「アムカルさん達もな」
「分かってるわよ」
「なら、今日はここまでだな。やれやれ、子守りは大変だ」
ピク、とフレデリカの眉が動いた。
それを見てカイトはニコッと笑いかける。その顔を見てフレデリカは、ふっと笑みを浮かべた。
「もう、大丈夫よ。冗談も冗談として聞き流せそうだわ」
「そうか、そりゃ良かった」
「カイト」
「なんだ?」
「私カイトのこと名前で呼ぶから、カイトもフレデリカって呼んで良いわ」
「分かった。じゃあ、右手を出して」
そう言って自分の右手を差し出す。
「……叩くんじゃないわよね?」
「アホ。何でこの流れで叩くんだよ。仲直りの握手だ」
「右手を下げて」
「は?」
「いいから」
不思議に思いながらも右手を下げると、フレデリカが右手をだした。
何がしたいんだコイツは……。
「ひとつ作法を教えておいてあげるわ。握手は身分が上の者から差し出すの」
「……そうなのか」
「まぁ、カイトの場合はこの世界では平民なんだから覚えておいて損はないわ」
「ありがとう。お前良いヤツだな」
カイトも右手を差し出しフレデリカと握手をした。彼女の手は小さく、暖かかった。
「まぁ、すぐにうまくいくコトでもないだろうから、何かあったら相談にはのるぞ」
「……うん」
「よし、じゃあ俺は部屋に戻るからな」
フレデリカの手を離し、ドアに向かう。
「カイト」
「ん?」
「明日……気をつけてね」
「はいよ」
そう言ってフレデリカの部屋を出た。
やれやれだ……。
あー疲れた。ギガントピテクスより、年頃のお嬢様の方が何倍も大変だったりして。
お読みいただきありがとうございました。
これからもよろしくお願いします!




