領主
最近左肩を上げると痛い……
カイトは街の様子をうかがいながら、ベーリング邸を目指して歩いている。ソレント山の麓ということもあるのか、この街は木造建物が多い。ちなみに王都フルミネンセは、石造りの建築が多数造られている。
(貴族かぁ……)
レイナから聞いたことや、キールのこともあって正直会うのが面倒くさい。嫌なヤツなんだろうなぁ……。まぁ、依頼だから割り切るしかないか。
もやもや考えているうちにベーリング邸に到着した。門の前に立つカイト。その遥か先には、木造二階建ての豪邸が構えられていた。……でっけーなー、おい。
門番に声をかけられたので、訪問理由を伝えると中に通された。うわー庭、ひろー。
貴族……イメージ通りの生活をしていらっしゃること。そういえば貴族の人ってどう呼べば良いんだろう。卿とかで良いのかな。
キョロキョロしながら奥に進んでいくと、玄関前で頭を下げている老紳士に声をかけられた。
「ようこそお越し下さいました。カイト・ヤマモト様ですね」
「はい。初めまして」
「私、ベーリング家執事のアムカルと申します。以後、お見知りおきを」
「分かりました。よろしくお願いします」
……執事って職業、本当にあるんだな。
カイトは内心の驚きを見せないよう冷静に話す。
「ギルド依頼の件でご挨拶に参りました。領主様はご在宅でしょうか」
「はい、どうぞお入り下さい」
アムカルに連れられてカイトは中に入る。
玄関と繋がる大きなホールの先に、グースネックの大階段が伸びていた。
「こちらへ」
「はい」
二階の奥にある部屋の前で、アムカルがドアをノックする。
「ヤマモト様がお越しです」
分かりました、と部屋の中から返事がした後アムカルがドアを開け部屋に招き入れられた。
「初めまして。カザン・ベーリングです」
「お会い出来て光栄です。カイト・ヤマモトと申します」
……思ってたより若いな。
カザン・ベーリング卿はパーマがかった金髪の細身な方だった。歳の頃は40前くらいだろうか。
白のスカーフに緑の燕尾服のようなものを着ていて、パンツはベージュだ。いかにもって感じだな。
「この度は依頼を受けていただきありがとうございます。」
「いえいえ、まだ駆け出しですがよろしくお願い致します」
……あれ? ベーリングの対応に、カイトは違和感を感じる。なんか思ってた貴族のイメージと違うぞ。なんというか……物腰の柔らかい方だな。
「カザン様は相手の方の身分を気にされませんので、領民からも慕われております」
カイトの顔を見て悟ったのか、アムカルが唐突に話し始めた。
「今回のギガントピテクスの出現で、ソレント山で林業を生業とする領民が大変困っております。カザン様はそのためにギルドに依頼をされました」
「そうでしたか」
……良い人じゃん。
なんか、拍子抜けだな。
「遠路お疲れでしょう。もうすぐ夕食をご用意いたしますので本日はこの家にお泊まり下さい」
「えっ?よろしいのでしょうか」
「もちろん構いません。アムカル、ヤマモトさんをお部屋に」
「かしこまりました」
「それでは、また夕食で」
「ありがとうございます」
……良い人じゃなかった。
すんごい良い人じゃないか。
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