申請書
今年はあまり寒くないので楽ですね。
インフルさんには気をつけましょう。
だいぶ陽が傾いてきたな……。カイトはスカイウォークでハンネルの診療所を目指す。雨粒が入らないよう目を細めながら、さっきまでの会話を思い出していた。
キールの自宅は、ハンネルの診療所からかなり離れたところにあった。カイトの話す内容に彼女は耳を傾け、話し終わると彼女は一言こう言った。
「……そのおかげで、カイトに会えた」
そりゃそうだ。いや、そうなのか?
ただ、キールがカイトの話を信じてくれたことは間違いない。第三者から見てもやっぱり、カイトは他の世界から来たと考える方が自然なんだろうな。それほどカイトの知識と経験はこの世界では異質らしい。
まぁ、いずれ分かる時もくるさ。
……そう思ってないとやってられないし。
キールは安静にした方が良さそうなので、とりあえずあとで食料を届けることを約束して一旦別れた。スカイウォークを使えばそんなに時間かからない。
そういえば、とカイトは思い返す。キールはとっくに痛みが起こっていてもおかしくないのに、そんな素振りさえ彼女は見せなかった。もしかしたら痛みをずっと耐えて話を聞いてくれていたんだろうか。……逆に気を遣わせてしまった。
「敵わないな……」
カイトは自然と笑っていた。
やっぱりすごい人だ。
やがて診療所が眼下に見えてきた。
カイトは傘をカードに戻し中に入る。
「む……、もう戻ったのか」
「戻ったよ。てかハンネルさん何で申請書さっき渡したのさ」
おかげで申請書はずぶ濡れだ。
「なんじゃい。さっきの姉ちゃんのところで書けるように渡してやったのに」
「……はぁ?」
「鈍いやつじゃの」
「……もう良いよ。新しいの頂戴」
「む、ちょっと待っとれ」
そう言ってハンネルは奥の部屋へと消えていった。なんか疲れてきた……。暫くすると新たな申請書を手にしてハンネルが戻ってくる。
「ほれ、ここにサインと住所を書くんじゃ」
「分かった」
カイトは申請書に必要事項を書き込む。サインと住所の他に、年齢や職業などを書くところもあった。
「む、これで全部じゃな。あとはあの論文を添付して申請すれば大丈夫じゃろ」
「結果はいつ分かるんだ?」
「そうじゃのう。早ければ一週間くらいかの」
「……遅かったら?」
「一ヶ月くらいかかるかもしれん」
長いな……。まぁ、何にせよあとは待つだけだな。
そろそろ、キールに食料を届けに行かなければいけない。
「ありがとう、また分かったら教えて」
「うむ。そうじゃ、カイト」
「ん?」
「さっきのアイシングじゃが、あれも論文にするからもっと詳しく教えてくれ」
「……今日は悪いけどカンベンしてくれ」
「む……仕方がないのう」
「また来るよ」
ハンネルには悪いが、アイシングについてはもっとしっかり分かっていないといけない気がした。脈や瞳孔みたいに分かりやすいことじゃないからな……。楽天家のカイトも流石に慎重になる。
診療所をでて、ジャベリンに向かう。もう少しで暗くなってしまうな。あまり遅くにキールのところに行くわけにもいかないし、ちょっと急ぐか。カイトは歩くスピードを上げた。
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