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エピソード8 封印

Episode8

登場人物

濱平 万里:主人公

祖母:責める人1

山猫:責める人2

鳥越 啓太郎:責める人3


明け方、香澄が借りたマンション。


私はソファーに体育座りして、布団にくるまって震えていた。

何故だか、自分でも良く判らない内に裸足の指を弄っている。


カイトはあれっきり眠ったままだった。


万里:私、悪くないよね

万里:あの男達が襲ってくるのがいけなかったんだ

万里:そもそも、こんな使いをさせた山猫が悪いんだ


万里:私は、何も悪い事してない


万里:キスしたらあんな風に成るなんて、説明してなかったよね


万里:でも、どうしよう…


黒こげの屍骸が脳裏に焼き付いて離れない。


とにかく誰かに判ってもらいたい。 そうしたら少しは楽になれるはず。



祖母に連絡する事にした。 

心配している筈である。 山猫に誘拐されてからだから、もう一週間以上連絡していなかった。 私の携帯は山猫に取り上げられてしまったので、 祖母の方から電話をかけても繋がらなかった筈だ。



試しに「フライングシューズ」のスマホでかけてみたらちゃんと繋がった。


祖母:「はい、…どちら様。」

万里:「おばあちゃん、わたし…。」

祖母:「万里ちゃんなの? あんた今何処にいてんの? 今迄何してたん? ほんまこの子は人に心配ばっかりさせて、大丈夫なんか?」


延々と質問が続きそう…


万里:「おばあちゃん、取りあえず…私大丈夫だから…。」

祖母:「悪い連中と関わってんのとちゃうやろね?」

万里:「…そんな事ないって。」


嘘をついた。

だって、これ以上心配させたくない。


祖母:「なんで今迄連絡せえへんかったん? 何かでけへん理由あるんとちゃうか?」

万里:「そんなんじゃないって…。」


嘘をついた。


祖母:「あんた、毎日電話するう約束やったやろ、おばあちゃんどんだけ心配してた思てんの。」

万里:「…ゴメン。 …ちょっと、携帯壊れてて…。」


嘘をついた。


祖母:「ええから、一回帰ってきい、このままやったらおばあちゃんお母さんに顔向けでけへんわ。 アンタの事任せとき言うて預かったんやで…」

万里:「おばあちゃんは悪くない…、とにかく私平気だから…。 後でまたかけ直す…。」


多分…


祖母:「ちょっとアンタ、学校から電話かかってたんよ、」

万里:「学校?」


祖母:「後、警察からも、なんや事件に巻き込まれたかも知れん言われて、おばあちゃんもう、心臓止まるかと思たわ…、ほんまにアンタ大丈夫なんか?」


万里:「大丈夫…、」

祖母:「後、寺西言う人からも電話有ったで、」


万里:「寺西…、ああ、友達…。」


万里:「判った、今から、学校に連絡してみる。 …それから、又かけるから。」

祖母:「今日は絶対帰ってくるんやで、ええか?」

万里:「判った…、とにかくまた電話するから…。」



電話を切って、…大きな溜息をついた。

祖母の声を聞いて、ちょっと気分が落ち着いた。 …とにかく、私の帰れる場所が一つは残されているのだ。



でも、学校と警察って何なのよ? 祖母が捜索願を出した訳でもないみたいだし…なんで? まさか昨日の事が国際問題になってるなんて事はあり得ない。 カイトが何人もの人を殺してしまった事は、まだ誰も知らない筈…



山猫:「全く、とんでもない事をしてくれましたね。」


テーブルの上に巨大カメムシが現れていた。


万里:「あ、」


山猫:「カイト君の活動記録を見ました。 貴方、勝手にカイト君のエマージェンシーモードを発動したでしょう。」


そう言えば平位サンが、エインヘリャルの行動は全て監視されてるって言ってたっけ。



山猫:「幸い、今回は私以外この事に気付いた者が居なかったから良かった様なモノの、もしこれが他の誰かに知られていたら、これ迄私達が苦労して準備して来た事が全て水の泡になったかも知れないのですよ。」


万里:「そんな事言われたって…。」

山猫:「一体これ迄に何人の尊い人間が犠牲になったと思っているのです。」


炭になった何人もの人間の姿が脳裏に蘇る。 


山猫:「あれほど危険だから口付けするなと念を押したはず…」


私、発作的にカメムシを掴み上げて、床に叩き付けていた!



万里:「だって、アンタがいけないんでしょう。 全部! アンタが悪いんじゃない!」


何度も!!


万里:「大体、あれは一体何なのよ。 なんでカイトにあんなモノが付いているのよ!」


山猫:「貴方にそんな事を知る必要はない。」


何度も!!!


万里:「あるわ! あれは、カイトの腕の中に埋め込まれているのよ!」


叩き付けた!




山猫:「まあ、…良いだろう。 すぐにあれを使う時が来る。 濱平さんには知っておいてもらった方が良いかも知れないな。」


このカメムシ…意外と頑丈だ。 何度叩き付けても壊れないらしい。



山猫:「アレは、我々が「トルコ石のヘビ」と呼んでいる、もう一つの聖獣を倒せる武器だ。 第二の封印が解かれたと同時に解放された。」


万里:「第二の封印?」

山猫:「アステカの封印だ。」


万里:「そんなモノがどうしてカイトの腕の中に有るのよ。」

山猫:「それこそ、君が知る必要のない事だ。」


山猫:「君たちがモタモタしているうちに、既に第三の封印迄もが解かれた。 第四の封印が解かれるのももはや時間の問題だ。」


万里:「封印封印って、封印が解かれたらどうなるって言うのよ!」

山猫:「7つ有る封印が全て解かれたら、知らせの角笛が鳴って、いよいよ「神の戦争」が始まるのだ。」


山猫:「既に北米ではシステム異常による核兵器の誤爆が発生、システムにハッキングした仮想敵国との戦争が勃発している。 アフリカ大陸では新種の細菌によるパンデミックが発生、複数の食料が感染源と推定されて突然の大飢饉に見舞われている。 どちらも未だ情報統制されていて公にはされていない。」


万里:「何よ、それ…何が関係あるって言うのよ。」


山猫:「これらは、神話に預言された通りに実行されている「神の粛清」なのだよ。」


万里:「神様が、そんな酷い事する訳ないじゃない。」

山猫:「するさ。 これは「禊」なのだ。 神は自分を信仰するものを選り分けているのだよ。」


…羽の部分に落書きする。 「山猫、バカ、」



万里:「悪いけど、言ってる意味判んない。 そんな事より私、学校に行かなきゃ…。」


山猫:「駄目だ。 そんな事にかかわり合っている余裕はない。 濱平さんはカイト君と一緒に、「聖なる槍」を持って今直ぐに私の所に来るのだ。 」



その時、玄関のベルが鳴った。


万里:誰?


男:「濱平さん、開けなさい。 ここにおる事は判ってるんや。」


気がつくと、巨大カメムシの姿が消えている。


万里:管理人? 勧誘? セキュリティはどうしたの??



男は呼び鈴を鳴らし続け、ドアをたたき続けている。

私、恐る恐るインターフォンのカメラをチェックする…


万里:警察!?





カイトと二人、警察署に任意同行?させられて…奥の会議室に通される。

さっきから私服の刑事がTVスクリーンに付いた機械を操作していた。


やがて、スクリーンに1人の男が映し出される。 キチンと整えた白髪と鋭い目の小柄な男である。


万里:まるでやり口が山猫とそっくり



男:「私の姿、見えるかな? 声聞こえてる?」

カイト:「凄いな、 これ、TV電話みたいやな。」


幸い? カイトは…元のカイトに戻っている様だった。



男:「初めまして濱平万里サン、それとカイト君だったかな。 私は鳥越啓太郎と言います。」



鳥越の話は大筋で次の様な内容だった。


先日の駅前での事件のことで捜査している。 幸い死人は出なかったが数人が怪我をした。 犯人は2人組の男女、額に銀の板を付けている。 その時に誘拐されたはずの私と、顔面を串刺しにされたはずの男の子が複数名に目撃されていた。



鳥越:「詳しい事情を話してくれないと、貴方達は今回の傷害事件の被害者ではなく、容疑者として取り扱われる事になります。」


鳥越:「それだけではない。 ここ数ヶ月に亘って発生している一連のカルト集団によるテロ事件との関連を疑わざるを得ない。 当然、貴方の家族や、友人も同様にテロリストの容疑者として取り調べを受ける事になる。」


万里:「そんな、私達テロなんかじゃありません。」


鳥越:「我々はテロに対してどんな見逃しも許されない。 判るでしょう。 多くの人の安全を守る為には、時には慎重すぎる捜査も必要になる。」


鳥越:「その為に貴方の身内の人達が社会的に過剰な制裁を受ける様な事になるのは、我々の本意ではないのだが。」



私は、…警察に責められる様な事をやっていたのか? 散々危険な目に有って、嫌な思いをして、なのに誰も良くやったと褒めてくれない 。 自分は苦労するばかりで馬鹿みたいだ。


全て警察に打ち明けて、後は警察に守ってもらおう…。




同席していた刑事が、突然床に倒れた。

TVが消えて、鳥越が映らなくなる。


万里:「えっ?」


倒れた刑事に駆け寄り、揺すってみるが…意識不明。


万里:「何なの? なに?」

カイト:「ねえちゃん! なんかおる!」


何かが、床を這い回っている。 …黒い紐、ヘビ?



そして、巨大カメムシが万里の鞄から現れる。


万里:「貴方がやったの? これ…まさか、殺したんじゃないでしょうね。」


山猫:「イチイチこういう輩に付き合っている時間は無いんです。 今すぐ、ここから出ましょう。」


万里:「ちょっと、大変なことになるじゃない。 そんなことしたら…もうまともな生活を送れなくなっちゃう。 本当に指名手配されちゃうじゃない。 学校にも行けなくなる…、」


山猫:「嫌なのですか?」


背中が痛くなる…


万里:「ちゃんと言うこと聞いたじゃない、箒も取って来たじゃない!」

万里:「お願い…もう、酷い事…しないで。」



私、床に崩れ落ちる。

カイト、私の肩を抱いてくれる。


カイト:「お前だれや! ねえちゃんに酷い事したら、俺が承知せえへんで。」


山猫:「私は濱平さんを守る為にそうすべきだと言っているのです。」



山猫:「濱平さんの精神感応を手がかりに一匹の聖獣が日本に向かっています。 貴方達は直ぐに逃げなければならない。 警察なんかではとても歯が立たない相手なのです。 今すぐに聖なる槍を持ってフライングシューズで私のところに来るのです。」

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