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エピソード11 思考

Episode11

登場人物

濱平 万里:主人公


見えない、聞こえない、

掌に触れる感触だけが、これが現実であることを告げていた


世界を取り戻そうと指先を伸ばす

その指先が何かに触れたとたん、わずかに残されていた触感さえも失われてしまう


一気に世界は消えうせた


自分の位置がわからない

自分が息をしているのかすら判らない

自分が存在しているのかすらわからない


全ての感覚を取り上げられてしまった瞬間に、これまでの世界は自分にとって意味をなさないものになる


生きていようが、死んでいようが、わからない


押しつぶされるような静寂、完全無欠な暗黒、私は虚無の中に居た




それでも、世界は相変わらず存在し続けているはずだった


そして理解する


世界とは自分と自分以外の境界、世界とは自分自身

思考する自分の外側にあるもの、そして思考そのものが世界と化す


今この瞬間、誰かが私の心臓を一突きしたら、誰も気づかないうちに世界は終焉するのだろう


私の思考は私の外側にある脅威を探ろうと研ぎ澄まされていく




そして思考が飛び込んでくる


それは閃きの様に、空想のように、私の思考に着想する

次々に、あふれ出す


そうだよ、そうだよ、そうだよ


それはまるで音楽のように躍動感のある輝き

光の音が私の心を揺り動かす


そうだよ、そうだよ、そうだよ


気づく、判る、理解する


そしてそれは更に私の心を動かす

輝きはますます激しくなり、今や私は眩いばかりの思考の輝きの中に居た




そして思考が飛び込んでくる


私はあふれ続ける着想で満たされていく


そうだよ、そうだよ、そうだよ


これは全ては自分が思いついていることなの? 自分の空想なの?


そうだよ、そうだよ、そうだよ


それとも世界が私に語りかけているの?


そうだよ、そうだよ、そうだよ


それは等価、どちらも同じこと

自分の思いつくことが自分自身であり、世界そのものなのだ













不意に気付く


そうだこれはカイトの心だ


私はカイトという男の子を知っている、


カイトは、友達を探していた


少年はいなくなった友達を探していた


大切な友達

約束を交わした友達だった


やがて少年は、一つの答えにたどり着く



山猫


その声の主はそう言っていた


度会海斗君だね

君が探している友達に会わせてあげよう



気がつくと病院のベッドの上だった


他にも数人の男の子たちがベッドに横たわっていた

既に目覚めて座っているものもいた


ここはどこ?


誰かがそう言っていた


みんなの額には銀のプレートがはめ込まれていた


何人かが部屋から連れ出された



少年は自分が誰だったのか思い出せないでいた

そっと部屋を抜け出してみた


先ほど連れて行かれた別の男の子が何かを注射されていた

気持ちよさそうに揺れている


男の子の頭は器具に固定されて、頭蓋骨を開かれている

気持ちよさそうに揺れている


沢山の器具がむき出しになった脳みそに差し込まれていく

白目を剥いて、気持ちよさそうに揺れている

よだれをたらしている


誰かが背中をたたく


駄目だよ、勝手に抜け出しちゃ

さあ、君の番だ、おいで



気がつくと病院のベッドの上だった


身体が重い

何故だか頭がぼおっとしている


遠くの方で声がする

声の言うとおりに勝手に身体が動く


少年はただ頭の隅にいて、それを見ていた


誰かが身体を動かしている


自分は頭の中の操縦席にいて、誰かが操縦するのを見ていた



やがて、体育館に来た

知らない場所だった


誰かが自分を呼吸させている


目に映るものを覗くと、少年の前にも誰かが立っていた


女の子だった

裸だった


見ると自分も裸だった



殺せ


声が言った


誰かが足を動かしている


頭の中にいる自分はすごく揺れている


少年は女の子を殴っていた

女の子は少年を蹴っていた

少年は床に転がった


立て、殺せ


声が言った


誰かが身体を立ち上がらせている

誰かが身体を走らせている


頭の中にいる自分はすごく揺れている


少年は女の子に掴みかかると床に押し倒した

誰かが女の子の首を絞めながら目玉を殴りつけていた


十回くらい殴り続けたら、女の子の目玉がつぶれてこぼれだした


少年の手の骨はいつの間にか折れていた


頭の中の自分が自分のこぶしを確かめて見るとなんともなっていなかった



女の子は顔を半分潰されながらも立ち向かってきた

少年の胸に爪をつきたて、皮膚をはがした

少年の胸に指を突き入れて、肋骨を折った


頭の中の自分が自分の胸を確かめるとなんともなっていなかった



ナイフを使え


声が言った


ナイフが転がってきた


誰かがナイフを拾わせた

誰かがナイフを女の子の鼻に付き立てた


女の子はナイフを少年のわき腹に付き立てた


女の子が泣いているのを見た



頭の中の自分は自分の目からその女の子を覗いた


自分は、この女の子を知っていた


誰かが 女の子の鼻の奥、脳みそまでナイフをねじりこんでいった


自分はこの女の子を捜しに来たのだった


誰かがナイフを引き抜いた

誰かが女の子の胸にナイフを付き立てた


女の子はすでに動いていなかった


誰かが女の子の腹を切り開いた


自分はこの女の子と約束していたのだった


剥き出しになった女の子の心臓が鼓動を続けていた

誰かが女の子の心臓を切り取った


女の子は既に動いていなかった


もういい、よくやった、戻れ


声が言った


誰かが身体を立たせた


誰かが自分を呼吸させていた


修理が必要だな


声が言った



気がつくと病院のベッドの上だった


そうだ、自分は誰かを探しに来たのだ

誰を探しに来たのだろう


横を見ると、誰かが揺れていた


頭を固定されて、脳みそがむき出しになっている

脳みそに器具を差し込まれながら、誰かは気持ちよさそうに揺れている



この子は回復が早い

セーフリームニルとの相性が良いようだ


声が言った


時間がない、この子を使うのだ


別の声が言った


この子が我々の最後の希望になる


別の声が言った



誰かを探さなきゃ

伝えなければならない事があったはずなのだ


大丈夫だよ、僕が守ってあげるから


そう、伝えなきゃ













可視光が、私の真っ新な 眼球に飛び込んで来る


私は酷い眩暈に襲われて、仰向けに転がったまま…自分が息をしているのを感じていた。


いつの間にか、私は泣いていた。



今までのことが全て悪い夢だったかのように、私は元通りだった。 


私の鼓膜を震わせる白色雑音

私の舌にしょっぱい涙

私の肌に食い込む自分の重さ



私は、…この世界に戻って来た。


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