エピソード1 巨大カメムシ
濱平万里シリーズ第ニ弾
妖精のカケラの続編です。
Episode1
登場人物
濱平 万里:主人公
カイト:食い気オンリの美少年
山猫:カルトの中間管理職
早朝5時、大阪梅田のマンスリーマンション。
結局一睡も出来ないまま朝を迎えた…そういう私はちょっと面倒くさがり屋でちょっと中二病が完治していない所は有るが、後はいたって普通でまじめな19歳女子大生。 名前は濱平万里。
ツインベッドの隣には無駄に可愛い14歳の男の子が眠っている。
どことなく赤ちゃんぽい雰囲気で母性本能誘因フェロモンをプンプンさせているのだが、食い気一本やりでしかも本人曰く18歳未満以外お断りだから、私は恋愛対象ではないらしい。 名前はカイト。 そしてこの少年は改造人間である。
寝不足でナチュラルハイな私の目の前にはもう一つの知的活動体。 姿形はカメムシそっくりだが大きさはカブトムシ程もある…つまりグロテスク。 正体はラジコンで動くロボットで、問題はそれを動かしている人物。 自称?人類滅亡を企む妖怪変化から人類を救うカルト集団の中間管理職。 名前は山猫。 カイトを改造したのはこの男である。
巨大カメムシが喋りだす。
山猫:「ちょっと二人にお使いをお願いしたいのです。」
万里:「だから、嫌よ。」
山猫:「濱平さん、…もう忘れたのですか? 私の友達になって私に協力してくれるって約束したじゃないですか。 」
私から血の気が引いて行く。
身体が震え、お腹がしくしく痛みだす。
そうだ、私はこの男に「嫌」と言ってはいけないのだった。
山猫:「場所はイタリア。 フィレンツェで仲間と合流して、あるモノを回収し、それを日本に持ち帰って来てもらいたいのです。 簡単でしょう?」
万里:「イタリア? 無理よ、カイトが飛行機に乗れる訳ないじゃない。 私だってパスポート持ってないし。 …大体なんで私達が?」
山猫:「まともに動けるエインヘリャルの中ではカイト君が最強だからです。 しかしカイト君は私の言う事を聞かない。 でも濱平さんは私の言う事に嫌とは言わない。 そうだよね?」
身体に覚え込まされた恐怖が正常な思考を拒絶する。
絶対服従…
万里:「でも。どうやって行けって言うのよ…。」
山猫:「心配ありません。 乗物はこちらで用意しました。」
山猫:「後、この件はくれぐれも口外無用でお願いしますよ。」
口外無用…つまり誰にも言うなと言う事。
私達はほんの数時間前、窮地から救い出されたばかりだった。 私は山猫によって大阪湾に浮かぶクルーザーの中に監禁されていた。 カイトは組み立て途中のプラモデルみたいにバラバラの状態で南港倉庫に放置されていた。 そして私達を救い出してくれたのは加地伊織とおかしな仲間達…通称五行聖獣軍団。
山猫と五行聖獣軍団は少なからず因縁が有るらしく、その連中にはこのイタリア行きの事を伝えるな…と言っている訳だ。
万里:「何時行くの。」
山猫:「今から。」
このカメムシってば本当に人の都合を考えない。
昨日は深夜に戻って来たので風呂に入っていない。 多分三日くらいはまともなシャンプーしていない気がする。 とにかく一度風呂に入りたいのだ。
万里:「身支度する時間ぐらいくれたって良いでしょう。」
山猫:「何も用意するものなんて要りませんよ。 とにかくあの化け物達が起きだす前にこの場を離れるのです。」
万里:「お風呂に入りたいの…。」
こんなカメムシ相手に赤面している自分が悔しい。
山猫:「風呂に入らなくたって死にませんよ。」
万里:「アンタの所為であちこち痒いのよ。」
山猫:「…具体的に何処が?」
万里:「そんな事聞いてどうするのよ。 とにかく風呂に入らせてよ!」
カイト:「ねえちゃん、どないしたん?」
私の怒鳴り声でカイトが目を覚ました。
万里:「そうよ、コイツだって体中ベトベトが着いたまんまなんだから。 こんなんじゃ任務に支障を来すわよ。」
カイト:「おぉっ! 何やこれ。 もしかして巨大カメムシ?」
カイト、あっという間にカメムシを捕獲する
カイト:「ほんまにおったんや! すげえ〜 でっけえ〜 かっけええ〜。」
カイトの手の中でカメムシが喋りだす。
山猫:「判りました、具体的に何処が痒いか言ったら30分あげましょう。」
当然、私の口は への字にひん曲がっている。 口の中ではすり切れんばかりに歯ぎしり、目は三白眼、耳は真っ赤…。
万里:「…お尻の穴よ、これで気が済んだでしょ。」
カイト、顔がひくつく。
カイト:「ねえちゃん、…もしかして、ギョウ虫?」
私、これ以上無いくらいに赤面。
万里:「ば、馬鹿言ってんじゃないわよ! あんたも一緒に入るわよ。 時間ないんだから!」
やけっぱちでカイトの目の前なのにパジャマを脱いでパンツ一丁になる。
カイト:「いやや、ねえちゃんにちんこ見られる〜。」
万里:「男がちんこ見られるくらいでぎゃーぎゃー騒ぐな!」
嫌がるカイトの引っ捕まえて、無理矢理はぎ取る。
カイト:「キャー、タシケテクレー。」
強引に、ウスバカゲロウの幼虫の様に、獲物を風呂場に引きずり込む。
腹いせの八つ当たりでカイトの身体を隅々迄洗ってやった…。
朝五時半のマンション前駐車場
カイトは未だ泣き崩れていた…。
カイト:「ねえちゃんに、犯されてもおた…」
万里:「人聞きの悪い! 私だっておっぱい見せてやっただろ。」
カイト:「言う程立派ではなかった…」
私、カイトを蹴る、蹴る、もう一回蹴る!
そんな二人の掛け合いは一切スルーして、カメムシが喋りだす。
山猫:「それでは説明しよう…これが君たちのトランスポーターマシン。「フライングシューズ」だ。」
私とカイトの目の前にはいつの間にか、カラフルに彩られたスポーツタイプの50ccスクーターが停められていた。




